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JRが一貫して否定する中どうやって?空港新駅構想のこれまで 鈴木康友 知事「交渉していきたい」静岡

空港新駅の行く末は…

川勝平太 前知事を含む静岡県の歴代の知事が設置を要望したものの、JR東海が一貫して整備を否定し、最近では話題に上ることも少なくなった静岡空港に直結した新幹線の“新駅”構想。だが、知事の交代により再び注目を浴びている。

長い歴史を持つ“空港新駅”構想

県議会による陳情(1994年)

2009年に開港した静岡空港(牧之原市)のアクセス向上に向けた新幹線新駅構想の歴史は意外にも古い。

1989年の県議会11月定例会では、斉藤滋与史 知事(当時)が代表質問に答える形で空港につながる新たなアクセスとして「新幹線新駅の建設に向けた基礎調査と検討を実施すること」を明らかにし、1994年には県議会の各会派の代表が二見伸明 運輸相(当時)に新駅設置に関する陳情を行っている。

JRが否定してもあきらめない静岡県

JRの説得に自信をのぞかせた当時の石川知事(2000年)

また、1998年には新駅の設置を推進する期成同盟会が設立されたが、東海道新幹線を運行する当のJR東海はというと、最初から「過密ダイヤの中で新駅設置は困難」と議論を一蹴。

それでも静岡県が諦めることはなく、県が設置した専門家による有識者懇談会が3つの予定地の中から「空港直下の地下駅が最適」との結論を2000年にまとめると、石川嘉延 知事(当時)は「空港が開設されれば新幹線の利用者も増える。JR側は必ず理解するはず」と自信をのぞかせた。

ただ、JR東海は一貫して“新駅”の設置を否定。

このため構想は下火となり、開港を2年後に控えた2007年には、石川知事が静岡空港の利用促進に取り組む協議会の中で「JRにとっても新駅は価値があるという論拠をもった見通しをJR側に提案したい」と、実現に向けた働きかけを再開する意向を示したものの、JRを振り向かせることは出来なかった。

リニア契機に再び注目された新駅構想

リニア中央新幹線の実験線(山梨県)

再び“空港新駅”構想が注目を浴びることになったのは2011年のことだ。

国の審議会がリニア中央新幹線について「南アルプスを通るルートが適当」と答申すると共に、リニア中央新幹線が整備されることで「新駅の設置などの可能性も生じ、東海道新幹線利用者の利便性向上及び東海道新幹線沿線地域の活性化に寄与することが期待される」と記したことから、川勝平太 知事は「リニア新幹線の早期開通に向けて(静岡はルートの)ど真ん中なので我々としては全面的に協力したい」と述べると同時に、静岡空港への新駅設置をJR東海に働きかけていくことに意欲を見せた。

そして、2014年度から6年間、調査費などの名目で計4750万円を予算計上。新駅の建設費を400億円と試算した上で「空港直下に建設可能」と結論付けた。

物議を醸した当時の川勝知事による発言(2016年)

一方で、川勝知事は2016年の県議会9月定例会で「(リニア中央新幹線について)なぜこのようにJR東海側に協力したかというと、それができ上がれば新幹線新駅、すなわち空港駅ができるという見通しを持ったから。目下のところ静岡県に何のメリットもない。リニア新幹線と既存の新幹線との関係にも念頭に置きながら、JR東海が静岡県のために何ができるかということに対して強力に働きかけていきたい」と発言。

JR東海に対する“脅し”とも受け取られかねない県のトップの言動には少なからず批判や疑問視する声もあり、川勝知事は「リニアの水問題を交渉の手段にして新駅を造るつもりではないか?という邪推を払拭するため」との理由から2020年度以降は調査費の計上を見送り、その後、事あるたびに“空港新駅”構想に言及こそしたものの具体的な行動を見せることはなかった。

鈴木知事も歴代知事の思いを“継承”

空港新駅の設置に向けた交渉に意欲を見せた鈴木知事(6月1日)

こうした中、静岡県では川勝知事の辞職に伴い2024年5月に鈴木康友 知事が就任。

6月1日に行われた静岡空港の開港15周年を記念した式典に出席すると「高速移動の駅が(空港の)直下にあると、さらに防災機能の強化・利便性の向上につながるので、今後、リニアの開通と前後してということになると思うが、新駅の設置に向けた交渉をしていきたい」と、歴代知事の“意思”を継承する考えを明らかにした。

静岡空港

だが、静岡空港を挟む既存の新幹線駅(静岡駅と掛川駅)との距離が短く、「高速で都市間を結ぶ東海道新幹線の性能が発揮できなくなる。プラスの効果をもたらすことにはならない」(JR東海・丹羽俊介 社長)と、空港新駅に否定的なJR東海の姿勢が今も変わっていないことは言うまでもない。

そもそも論で言えば、静岡空港は2024年6月現在、1日に約20便しか発着しておらず、2023年度の搭乗者数は51万2811人。1日平均にするとわずか1400人あまりで、まずは空港の“本分”である就航便を増加させ、利用者を増やさないことには、JR東海が “その気になる”日は永遠にやって来ないのではないだろうか。

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