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静岡市の帆掛山、梶原山にチャレンジしました。どちらも山頂からの眺めは抜群! 帆掛山の山腹には県内で2番目に古いとされる建造物があり、梶原山には源頼朝の側近・梶原景時の伝承が残されています。つまり、一度で三度楽しめるとってもお得なコースなのです。
帆掛山・梶原山ってどんな山?
帆掛山および梶原山は、静岡市の葵区と清水区の境界付近にある低山です。梶原山の標高は279m、梶原山の北側にある帆掛山の標高は304m。
どちらも、以前の低山登山記事で紹介した浜石岳と同じように、気軽に絶景を楽しめる山として知られています。
梶原山から登って帆掛山に行くことも、その反対も、どちらかの山だけを登ることもできます。今回は、帆掛山から梶原山に向けて縦走するルートを選びました。
標高が高い方の帆掛山に一気に登り、少しでも正月太りを解消しようという魂胆です。
●今回の低山登山DATA
登った山:帆掛山、梶原山
標高:帆掛山304m、梶原山279m
タイム:約2時間48分
距離:約3.5km
「仁王の力石」で疲れを解消
静岡市清水区大内にある、霊山寺の参道入り口からスタートします。石段は段差低めで、傾斜もゆるやか。ただ、「三十三曲がり」と呼ばれているだけあって、つづら折りになっています。息が上がらないペースを保ちながら進みます。
10分ほど経ったところで、「仁王の力石」と書かれた看板が目に入りました。看板にはこう書かれています。
「坂を登って疲れたとき この足跡を踏むと不思議に足の疲れが直ったものです。力強い仁王様の足跡というのでこれを踏むと足がじょうぶになるといわれています。」
足元に視線を落とすと、矢印が彫られた石が。矢印が示す先にある、割れたような石の集まりが「力石」なのでしょう。
登山を楽しめるのも丈夫な足があってこそ。伝承にあやかって足を力石に乗せ、「足がこれからもじょうぶでありますように」と祈願しておきました。心なしか足の疲れも軽くなったようです。
県内で2番目の古さ! 霊山寺の仁王門
仁王の力石を後にし参道を進みます。約5分後、霊山寺の仁王門にたどり着きました。
霊山寺は、奈良時代に行基が開山したと伝わる古寺です。本堂に納められている千手観音立像にちなみ「大内の観音さん」の愛称で親しまれています。
仁王門は室町時代の建立で、県内では2番目に古い建築とのこと。1931年に国の重要文化財に指定されています。ちなみに、県内最古の建築は、浜松市浜名区引佐町にある方広寺の七尊菩薩堂だそうです。
本来、仁王門の左右には、口を開けた「阿形(あぎょう)」と、口を閉じた「吽形(うんぎょう)」の仁王様(金剛力士像)が安置されているのですが、現在は修復のためお留守でした。残念。
仁王門をくぐって石段を登ると、木造の本堂がありました。本堂は市の文化財です。
天井には龍と天女が描かれていました。手を合わせて安全を祈願し、頂上を目指します。
富士山、駿河湾、市街地を一望
さすがにちょっと疲れてきましたが、梶原山は帆掛山よりも標高が低いので、帆掛山山頂にたどり着けば上りは終わったも同然。そう自分に言い聞かせて足を前に出します。
途中で、石と枝で日付が表示されていました。低山登山を始めてから、ときおり目にするこの暦、見つけるととてもほっこりしてしまいます。
霊山寺から歩くこと約15分、どうやらこの階段を上りきれば頂上のようです。
着きました! 標高304m。帆掛山の頂上です。
中腹まで雲がかかっていますが、なんとか富士山も見えています。
その昔、山頂には1本の松が立っていたそうです。松は、清水港に入港する漁船の目印になるほど大きく、遠くからは船の帆のように見えたとか。それで帆掛山と呼ばれるようになったそうです。
残念ながらその松はいつしか枯れてしまい、いまは見ることはできません。
けれど現在、山頂は一本松公園として整備され、多くの人たちに愛されています。
ドラマに登場 あの鎌倉武将をしのぶ石碑
続いては、尾根を歩いて梶原山に向かいます。帆掛山~梶原山間は約1km、竹林や果樹園の間を通って20分も歩けば梶原山山頂に到着です。
帆掛山と同じように梶原山の山頂も公園として整備されていて、ベンチ、東屋のほかに小さめの展望台もありました。
こちらも眺望抜群です。葵区、駿河区、清水区の市街地、富士山、三保半島、駿河湾、伊豆半島を一望できます。
静岡市を代表する山、竜爪山もきれいに見えました。
実はこの梶原山、鎌倉時代の武将・梶原景時(かじわらかげとき)とゆかりが深いのをご存じでしょうか。
景時は源頼朝の側近として権勢を振るっていました。しかし、頼朝の死後に失脚してしまいます。鎌倉を追われた景時は京都に向かいますが、現在の静岡市清水区狐ヶ崎あたりで追討の命を受けた武士たちの襲撃を受けます。
この襲撃で多くの家臣を失い、もはや逃げ切れないと悟った景時は、息子の景季(かげすえ)、景高(かげたか)とともに自害します。その場所こそが、ここ梶原山だったとか。梶原山の山頂には「梶原景時終焉之地」と記された石碑が建っています。
ちなみに景時は、2022年に放送されたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の13人の1人。ドラマでは歌舞伎役者の中村獅童さんが演じていました。
歴史に思いを馳せながら、持参したおにぎりをほうばっているうちにちょっと眠くなってきたので、ベンチにごろり。しばらくのんびりしたら体力が回復したので、来た道を戻って下山します。
夜景や花見も 一度で三度以上楽しめる
今回は、山頂からのすばらしい眺望に加えて、古刹・霊山寺と国の重要文化財である仁王門を拝観し、鎌倉時代の武将・梶原景時終焉の地で歴史に触れるという、一度で三度楽しい低山登山となりました。
しかも帆掛山と梶原山は、実は夜景スポットとしても有名なのです。山頂には桜の木が植えられており、春にはお花見も楽しめます。
どちらも山頂のすぐ近くまで車でアクセスでき、駐車場もあり。駐車場には公衆トイレもありと至れり尽くせりです。
冬は部屋でのんびりとぬくぬくしがちですが、晴れた日には帆掛山、梶原山にお出かけしてみてはいかがでしょうか。
体力に自信がない方や、小さなお子さん連れの方は車でアクセスし、山頂からの景色を眺めたり、帆掛山と梶原山をつなぐハイキングコースを歩いたりするだけでも十分に楽しめるはずです!
!CAUTION!
◎各所に案内看板がありますが、道迷いの可能性がまったくないわけではありません。特に分岐では、地図や登山アプリなどでルートを確認するのを忘れないようにしてください。
◎低山とはいえ、山は山です。適切な服装と装備で楽しんでください。
◎時期や天候によってコースの状況が変わっている可能性があります。インターネットなどでできるだけ最新の状況を確認するようにしてください。
◎静岡県全域でクマの目撃情報が相次いでいます。低山でも油断せず、クマ鈴、クマ撃退スプレーを携帯しましょう。
取材/小川結子
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