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12月12日に開かれた静岡県議会でリニア中央新幹線をめぐる問題の解決策は「部分開業」との見解を述べた川勝平太 知事。なぜ一度は“引っ込めた”案を再び持ち出したのか?13日の定例会見では記者から質問が相次いだ。
再び部分開業論…JRはすでに否定
「現行ルートを前提にした上で、できるところから、つまり開通できる状況になった部分から開通させることが営業実績となり、解決策となると考えています」
川勝知事は12月12日の県議会 本会議で、リニア中央新幹線について“部分開業”こそ解決策であるとの見解を示した。
たしかに、川勝知事はかつて山梨・神奈川間の“部分開業”案を持論として唱えていたことがある。
しかし、2022年11月にリニアの実験線に試乗した後の取材では、列車に電力を供給する変電所ができていないため部分開業は「困難である」との見方を示し、以後この持論を封印。
それに、仮に部分開業が実現したとしても静岡工区にはまったく関係のない話だ。
それゆえになぜ突然、再びこの案を持ち出したのか?誰しもが疑問に思うところだった。
この点について、川勝知事は13日の定例会見で「(JR東海の)社長が代わりました。試乗後にやり取りしたのは会長(当時の社長)だけです。しかし、変電所が1つできれば動かせるということは、みんなご存じなわけです。それをやるか、やらないかは会社の意思ではないでしょうか。社長が代わりましたので、(JR東海の意思が)変わる可能性があると思っています」と述べた。
一方で、2023年4月に就任したJR東海・丹羽俊介 社長はテレビ静岡のインタビューに対して「部分開業は現実的ではないと考えている」と答えている。
え?静岡工区の話ではない…?
そもそも、なぜ冒頭の答弁に至ったかと言えば、10月10日の定例会見で川勝知事が「もし私が、これ大きなビッグイフですけど、JRの意思決定者であれば現在の川勝と膝を突き合わせて話し、その場で解決策を出せる自信はある」と豪語したことを受け、議員から解決策を“具体的”に示すよう追及されたからだ。
この川勝知事の発言を見れば、着工がいまだ見通せていない静岡工区を念頭に置いていることは疑いようがないし、事実、記者も静岡工区をめぐる問題がこう着していることを念頭に質問している。
ところが、川勝知事は驚くことに「みなさん静岡にだけ関心があるからかもしれません。私は東京から大阪までのリニア中央新幹線全体に関心がありますから」と、リニア“全体”に関わる課題解決の方法だと主張。
さらに「静岡工区の解決策については、いま有識者会議、JR東海、県、やっている。それが解決策。それはみんな当然のこと。それ以外の方法がありますか?」と怒気をはらんだ口調で言ってのけた。
建設見直し発言の真意問われるも…
また、12日の本会議では「現在はコロナ、エネルギー・資材の高騰、1.5兆円の増資、財投(財政投融資)、これら2011年に国交省がJR東海に認可した時の事情とは大きく異なっている。従って『いったん留まって改めて考え直す必要がある』ということはぜひ丹羽社長とも膝を交えて話すことが出来れば」と、リニア建設を見直すべきとの認識も示した川勝知事。
13日はその真意も問われたが、「『急がば回れ』という言葉がありますから、ですから大きな予測不可能なことに面する前に、生態系に関わるこれ(有識者会議の報告書)はすべての期成同盟会のメンバーも存じられていると拝察するが、全員に読んでもらい、どういう風に対処したらいいかを是非ご意見いただきたい」と質問に正面から答えなかった。
この日の川勝知事は質問に対して関係のない持論を述べる場面がいつも以上に目立ち、記者から「質問と答えがかみ合っていない」と何度も指摘された。
“リニア大推進論者”を自称する川勝知事だが、発言内容や対応からはその姿勢が一向に見えてこないのは気のせいだろうか。
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