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子供を抱きしめて「大好き」と伝える。あるフリースクールで実践しているのは「愛している」と伝えてあげることです。教室で走り回っていた子供にも、驚きの変化が起きました。
11月26日にテレビ静岡で放送されたテレビ寺子屋では、思考力を重視する学習塾「花まる学習会」の代表、高濱正伸さんが、愛で包むことで子供に起きた変化について話しました。
小学校低学年にも増える不登校
花まる学習会代表・高濱正伸:
「花まるエレメンタリースクール」というフリースクールを開校してから1年半がたちました。これは、志ある若者たちが「学校を作りたい!」と集まって始めた学校です。彼らは「職員室を最高のものにしたい」、「朝から晩まで、預かった子供たちのことをずっと話し合っている学校にしたい」と言い、その理想を形にするためにまずはフリースクールから始めることになりました。
この「花まるエレメンタリースクール」は不登校児24人でスタートしました。いま、小中学生の不登校は全国で29万人にものぼります。以前は小学校高学年以降に多いと言われていたのが、最近では低学年でも増えているようです。
なかにはADHD(注意欠如・多動症)や自閉症などといった症状名を付けられる子もいます。「この子はADHDです」と言われた瞬間に、親は「それではしょうがないですね」と受け止め、学校では「そういう病名なんですね」と優しいけれども「特別な目」で見られる。でも、社会と折り合っているのだったら問題ではありません。
“30年で一番走り回る子”の変化
スクールは開校から1年半たち、いまでは全員が毎日通っています。これは例がないことだと思います。
何がポイントなのかと言うと、「愛」です。「この人、本当に私のことが好きなんだな」と感じてもらうことが大事です。花まるエレメンタリースクールでは朝も帰りの会も「愛してるよ」で始まります。必ず誰かがそれぞれの児童を気にかけ続けています。
14歳まで待てば、メタ認知ができてすっかり大人になります。一番大切なのは「14歳まで自己肯定感をつぶさないこと」です。
僕の学習塾でいろいろな子を見てきましたが、中でもこの30年で一番走り回る子が、去年の小学1年生にいました。そのA君が珍しくゆっくりと歩いていたので、捕まえて僕の膝に座らせて後ろからギューっと抱きしめました。
A君は「離して」と言いますが、「A君のこと大好きだから絶対離さない」とさらに抱きしめると、A君は「やめて」と言いながら僕に体重を預けてきました。1分くらいそのやり取りをしてパッと放したら、その日は1日中机について過ごせました。これには僕も驚きました。
また翌週捕まえて「大好きだもん」とギュッとしたら、向こうから膝の上に乗ってくるほどでした。すると、また1日机について過ごすことができ、それから丸1年、いま2年生の彼は一度も授業中に教室から出ていません。外に出たくて机をたたいたりしていますが、彼なりにこらえています。
子供を愛で包み込む
愛を信じると、子供はなんとか調整します。人は無条件に愛されたいし、祝福されたい。「このまま、ありのままでいいよ」といつだってみんな言われたいのです。それが失われた時にいろんな症状、不安を出してしまいます。
人間は単純です。何か人に当たるとか嫌なことをしてしまうときは、どこかしら「自分はかわいがってもらっていない」とか、「認められていない」というときではないでしょうか。子供たちもそうなのです。
いまから世界を背負う子供たちを、みんなであふれる愛で包み込んでいけたらいいなと思います。
高濱正伸:1959年熊本県生まれ。東京大学・同大学大学院卒業。1993年思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。子供の「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。
※この記事は11月26日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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