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おとなしい少年がパズル博士に 子供を変えた先生の「魔法の言葉」【テレビ寺子屋】

子供に自信を持たせるには、どんな声かけをしたらいいでしょうか。あるおとなしい子供は先生の一言で自信を付け、パズル本を出すまでに。さらに教育の専門家にまでなりました。

4月2日に放送されたテレビ寺子屋

テレビ静岡で4月2日に放送したテレビ寺子屋では、思考力を重視した学習塾「花まる学習会」を設立した高濱正伸さんが、自分が小学生の時に自信を持つきっかけとなった、先生の「魔法の言葉」について話しました。

おとなしい少年がパズル博士に

私はいま人前で話す仕事をしていますが、小学校の頃はあまりうまく話せない子供でした。ところが、小3の時に転機が訪れます。クラス担任が素敵な人で、ひと言でいうと「僕たちのことが好きなんだ」と信じさせてくれる先生だったのです。

あるテストで、格子状の図形の中にある長方形の数を求める問題が出されました。思考力を問うパズル問題です。

テストを返却する時、先生は「テストを返すけど、すぐにしまわないでね。パズルの問題を解説するから…。そうだ、この問題ができたのは高濱君だけだったよ」と言ってくれました。

続けて「学年全体でも高濱君だけだったみたい」。そのひと言で私の殻が破れました。「自信」という魔法にかかった瞬間でした。

翌日から私は「パズルは得意だから」と胸を張って言えるようになり、みんなから「博士」と呼ばれました。このエピソードがきっかけで後に私は何十冊もの「パズル本」を出すようになったのです。

逆効果となる言葉は

しかし、言葉によっては別の魔法がかかってしまうこともあります。テストを返す時、「高濱君だけだよ、この問題ができなかったのは…」と言われていたらコンプレックスが一生続いたかもしれません。自信とコンプレックスは表裏一体です。

また、褒めるだけでは逆効果になることもあります。例えば、補助輪なしで自転車に乗れるようになった時、「乗れるようになったね」と、その場でタイミングよく声をかけることが自信につながります。子供の心や成長をよく見ることが大切です。

学校に行けなかった子供との出会い

2年ほど前、かつての教え子から本が届きました。彼は私が「教育の道」に進むきっかけとなった生徒です。私が20代の後半に塾の講師をしていた時、塾長から「学校に行けていない子がいるけど見てもらえる?」と相談がありました。

彼は当時、中学1年生。会うと緊張して怯えた感じでした。彼を見た瞬間、私は「心を癒すことが先だ」と直観しました。

そして勉強を教える前に、とにかく雑談をしました。たまに彼がジョークを言ったりすると大笑いをして応えました。彼の存在を認めて味方であり続けました。

すると心が元気になり、勉強を再開して学校に行けるようになったのです。

高校生になった彼がくれた「魔法」

実はこの話には後日談があります。彼が高校生になった時、また同じ状況になってしまいました。本人曰く「高濱先生じゃないと無理だと思う」ということで、彼の母親から連絡がありました。彼と再会し、同じことを繰り返しました。自分をわかってくれる人がそばにいて、居場所を実感できたことで彼はまた学校に行けるようになりました。

実は私はその当時、進路に迷っていました。彼と再会し、そこで得た自信に背中を押されて「教育の道」に進むことを決心しました。つまり私も彼に「魔法」をかけてもらっていたのです。

自信という「良い魔法」

いまは厳しい時代で自信を失いがちです。子供に自信を授けることができるのは周りの大人です。親にできることは、「安全な基地」として心の拠り所を確保したうえで子どもの背中を押してあげることです。学校や家庭で子供たちに「良い魔法」をかけ続けてあげてください。

高濱正伸:1959年、熊本県生まれ。東京大学・同大学大学院卒業。1993年思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。子供の「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。

※この記事はテレビ静岡で2023年4月2日に放送された「テレビ寺子屋」をもとに作成しています。

フジテレビ系列で放送中の番組。「子育てってなんだろう」。その答えは1つではありません。テレビ寺子屋では子育てや家庭のあり方について様々なテーマを元に毎回第一線で活躍する講師を招いてお話を聞きます。