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浜松市の中心部を流れる馬込川(まごめがわ)の河口付近に、巨大なコンクリートの建造物があります。現在も工事中のようなのですが、何を造っているのか、この謎の工事について調査しました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ命を守る巨大水門

案内してくれたのは、浜松土木事務所の德増智史さんです。この工事は、浜松市民の命を守るための重要な工事だと言います。
浜松土木事務所・德増智史さん:
海岸の17.5㎞の防潮堤のなかで唯一馬込川の防潮堤ができていません。ここに水門を作って、津波対策を進めていきます

浜松市では2014年から津波対策の本格工事が進んでいます。浜名湖から天竜川までの海岸線に17.5kmもの防潮堤が建設されました。
しかし、その防潮堤を分断するように流れているのが馬込川です。

ここに水門を造ることで、津波の被害を大幅に軽減しようという工事です。
その効果は大きく、水門ができることで甚大な被害をもたらす最大級の津波が来ても、宅地への浸水面積を大幅に低減することができます。

水門の強さを生み出す基礎杭
水門の近くにはインフォメーションセンターがあり、予約をすれば見学できます。ここで水門について勉強しましょう!
まずは完成模型で水門のしくみを理解することに。

浜松土木事務所・徳増さん:
津波がくると水門の扉が下がります。水門の高さは6mで、さらにこの水門の上のカーテンウォールというコンクリートの壁が約4.8mです
川の深さが2.8mの場所に、水上からの高さが8mの巨大な壁がそびえ立ち、迫りくる津波を抑えることができます

その水門の強さを生み出している重要な場所が、 VRで見られます。早速体験してみました。
VRで実際には行けない水門の地下を探ってみると、多くの柱が見えました。

この柱は「基礎杭(きそぐい)」です。
水門の地面の下には、長さ30m、直径1m20cmの鉄の杭、200本以上が固い支持層まで打ち込まれています。

この杭があるからこそ、津波に負けない強さが 生まれるんですね。
扉の中はどうなってるの?
地下の仕組みもわかったところで、今回は特別に、工事現場に入らせてもらうことになりました。
水門の1つの扉の重さは約270t、横幅は30mもあります。近づいてみると、その巨大さが実感できます。

水門の中はどうなっているのでしょうか?
今まさに建設中の扉の内部に入らせてもらいました。なんと扉は鉄の塊ではなく、中は空洞になっていました。

気になるのは、 ところどころに空いた穴。水門の強さの秘密はこの穴にありました。
浜松土木事務所・德増さん:
水門が下がったときに扉の中に水が溜まる構造になっています。水が出入りするための穴がいくつも空いています

外から見ても、その穴の様子がよくわかります。
災害時にこの穴から、水が内部に入ることで、津波の大きなパワーに耐え、さらなる重さを生み出すそうです。

自重で閉まる水門の扉
水門の屋上にも上がってみました。屋上は水門の操作室になっていて立派なワイヤーがあります。
1本のワイヤーの直径は5mm、女性の手首と同じくらいの太さがあります。
水門の鉄の扉は緊急時にこのワイヤーを使って降ろされます。

では、誰が水門の扉を下ろすのでしょうか?
德増さんによると、自動で扉が下りるそうです。水門に付いている地震計が震度5強程度を感知すると約3分で水門が閉まる仕組みです。
水門は停電していても動きます。扉自体の重さ、自重で自動で閉まるようになっているそうです。

馬込川水門は現在も工事中です。
水門が完成したら、水門と防潮堤をつなぐ堤防が左右に造られ、分断箇所がなくなります。
全ての工事が終了して完成するのは、防潮堤工事が始まってから13年目の2027年の予定です。
巨大な馬込川水門の内部を探ったことで、確かな強さと注ぎ込まれた技術を知ることができました。
■施設名 馬込川水門
■住所 浜松市中央区中田島町
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