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山に突如現れた「天空へ続く道」の正体 国道1号線を守る道だった!【駿河区・丸子】

静岡市を走る国道1号線バイパスに、まるで天に向かって延びているかのような、不思議な道があります。急斜面の山肌に沿うように続く道は、その異様な光景から地元でも話題に。一体何のための道なのか、謎に迫りました。

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国道1号線に突如現れた不思議な道

国道1号線の岡部バイパスを、丸子ICを越えて藤枝方面へ向かって走っていると、左手の山の斜面に、まるで天空へと続くかのような不思議な道が現れます。

左手に不思議な道が見える
静岡市駿河区丸子

道を支える柱は相当な高さに見えます。そして、いったいその先に何があるのでしょうか。

とても不思議な道の正体を探るべく、まずは現地で聞き込みを開始しました。

あそこに見えている道が何か知ってますか?

山に走る道を見上げる男性

近くにいた人:
気になりますよね。バンジージャンプですかね?

確かに、見る角度によっては、バンジージャンプの飛び込み台のように見えるかもしれません。新しいレジャー施設ができたのでしょうか。

飛び込み台にも見える道
バンジージャンプの飛び込み台のようにも見えます

また、「新しいバイパスかもしれない」と推測する人もいました。

さまざまな憶測が飛び交うものの、正確な答えを知る人はいません。

いざ「天空へ続く道」を探検!

真相を探るべく道が始まる地点へ、関係者の方々に出会うことができました。

左)静和工業・髙島葵さん 中)国交省 静岡国道事務所・竹島寿枝さん 左)国交省 静岡国道事務所・中野はつ子さん

事業主体である国土交通省 静岡国道事務所の竹島寿枝さんと中野はつ子さん、そして施工会社の静和工業・髙島葵さんです。

静岡国道事務所の竹島さんが、「よろしかったら現場をご案内します」と言ってくれました。

ヘルメットを被る大森アナ

特別に「天空へ続く道」を案内してもらえることに。あの不思議な道に潜入します!

実際に登り始めると、確かにそこは“道路”。しかし、一般の道路のようなアスファルト舗装ではありません。

何の目的で作られた道路なのかは、まだ謎に包まれたままです。

何のための道なのでしょうか

道の全長は約500m、頂上までの高さは70mほどにも及びます。

車が十分に通行できる道幅も確保されていました。

全長500m高さ70m 巨大な建築物です

実際に歩いてみると、なかなかの傾斜を感じます。その勾配は15%(100m進むごとに15m上昇)もあるとのこと。

静和工業・髙島葵さん:
重機やダンプトラックが通るために鉄の板をかけてあって、その重機やダンプトラックが滑らないように滑り止めで砂がついてるんです

路面は鉄の板でできていました。ダンプが通ってもびくともしないこの道は、3年がかりで造られたそうです。

「天空へ続く道」の先にあった防災工事現場

「天空へ続くの道」の頂上に着きました。そこは、山肌がむき出しになっていました。

「天空への道」の頂上

竹島さんによると、この斜面は地震などによって地滑りが発生する可能性を秘めているそうです。

そこで、下を通る国道1号線を利用する人々の安全を守るための防災工事が、現在進められています。

正式名称は「1号丸子地区防災工事」と言うそうです。

地滑り対策工事現場への道が「天空へ続く道」だった

高所にある工事現場まで、ダンプカーなどが資材を運搬できるよう造られた仮設道路が、この「天空へ続く道」だったのです。

環境にやさしい工事現場

さらに工事について詳しく教えてもらうため、関係者以外立ち入り禁止の区域へ特別に案内してもらいました。

工事現場の最上部に移動します。そこは、ほぼ山のてっぺん。

斜面の一部にはコンクリートで既に覆われていますが、まだ山肌がむき出しになっている場所もあります。

現在、一部の工事は既に完了していますが、最終的には斜面全体に地滑りを防ぐ対策が施される予定だということです。

具体的には、山の斜面にコンクリートの枠を格子状に組んで鉄筋で固定し、土砂の崩壊を防ぎます。

この工法は、枠の中を土のままにしているのが特徴です。

左)コンクリート枠施工直後 右)数年後には植物が根を張り緑化が進む

そこに植物が育ち、根が土の表面をしっかりと押さえます。山の景観にも調和した環境に優しい地滑り対策を目指しています。

「天空へ続く道」は環境に優しい道

実はこの道、環境保護のために重要な役割を果たしています。

山に直接造られた道は急勾配のため、パワーショベルやブルドーザーなどの限られた重機しか登ることができません。

この坂はダンプでは登れません

これでは、工事に不可欠なダンプカーが資材を運搬することはできません。

しかし、勾配15%の「天空へ続く道」があれば、ダンプカーもスムーズに上って来られます。

この勾配ならダンプも登ることができる

もしこの勾配の道を山に直接建設しようとすれば、山自体がなくなるほど大量の木々と土砂を取り除く必要が生じ、大規模な環境破壊につながりかねません。

「天空へ続く道」は、山の環境を守りながら効率的に工事を進めるための最善の方法であり、環境と工事の両立を可能にする重要な道だったのです。

環境と工事の両立のための重要な道

夜はピカピカさせちゃう

当初は謎めいた存在だった「天空へ続く道」は、実は私たちの安全を守るための重要な防災工事のための道であり、さらに環境にも配慮した工法で行われていることが明らかになりました。

そしてこの工事現場は、多くの車両が行き交う国道1号線から見えるので、工事関係者がある仕掛けをしました。

それが見られるのは夜。

イルミネーションで「天空へ続く道」が暗闇にピカピカと浮かびあがるのです。

関係者が、夜間に通行する人々の目を楽しませようと、100%ソーラー発電の電飾を飾り付けました。

国道1号線を通るときには、ぜひ運転に注意しながら、この「天空へ続く道」に注目してみてください。そこには、地域の安全と環境への配慮、そして人々の心遣いが込められています。

■工事名称 1号丸子地区防災工事
■場所 静岡市駿河区丸子(国道1号線岡部バイパス沿い)

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