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「ワンワン」や「ザーザー」など様子を音で表現するオノマトペ。オノマトペを研究する藤野良孝さんは、子育てに活用できる場面が多いと言います。どのように使えば子供の成長につなげることができるのでしょうか。

テレビ静岡で2月23日に放送されたテレビ寺子屋では、オノマトペ研究者の藤野良孝さんが、子供のやる気を引き出すオノマトペについて教えてくれました。
たくさんの情報を伝えるオノマトペ
オノマトペ研究者・藤野良孝さん:
オノマトペはフランス語で「擬音語」と「擬態語」を総称した言葉です。

擬音語は人や動物の声や自然の音を模写して表したもので「ワンワン」など、擬態語は物事の状態や心情の様子を音に例えて表したもので「ドキドキ」などです。
「大粒の雨が激しい音を立てて強く降っている」と言われたら、頭の中で雨の強さ、量、恐怖心、避難が必要かなどを考え、処理する時間がかかります。では、「雨がザーザー降っている」だったらどうでしょうか。「ザーザー」という言葉を聞いたら、その言葉の中に雨の強さ、勢いや恐怖心が入っています。

オノマトペはたった一語で十のことを言い表すことができる、意味の含有率が高い言葉なのです。
これを子育てで使うことによって、以心伝心、情報伝達がしやすくなります。そこで、子育てにおススメのオノマトペの活用方法をお話しします。
赤ちゃんにオノマトペ
まずは、「子供の言語獲得を早めたい」というとき、オノマトペはとても有効です。
赤ちゃんが言葉を獲得するまでに「ああ」「うう」と喃語(なんご)を発して声帯や口蓋の使い方を学び、発声の仕方を身につけていきます。

オノマトペは極めて喃語に近く、声帯が発達していなくても発話しやすいため、「ブーブー」と言うと、赤ちゃんも「ブーブー」と言ってくれます。
「ああうう」以外の言葉をどんどん発声することによって、言語のバリエーションが増えていき、結果として言語を早期獲得できるわけです。
“しつけ”にオノマトペ
そして、「しつけ」にもぜひ活用してください。
「我が子が言うことを聞いてくれない」と、怒りの感情から強く言ってしまい、自己嫌悪に陥る。そんなときはオノマトペを使ってみてください。

例えば、「姿勢が悪い。姿勢を良くしなさい」と言うと、子供は「姿勢が悪い」という言葉に反応する。
否定されていると感じ、行動するためのエネルギーを奪われます。ですから、オノマトペに置き換えてほしいのです。「背筋ピンとして!」こう言われると嫌な気持ちにはならず、ちゃんと行動を変えることができます。
さらに、子供の「習慣化」にも活用できます。「歯磨きをしない」、「遊んだおもちゃを片付けない」などと悩むことも多いと思います。

子供に行動を促し習慣化させる時に大事なのは、最初のアプローチです。最初が「面白くない、嫌い、楽しくない」だと子供はやりません。そういったときにオノマトペがとっても効きます。
「歯磨きは細かく優しく磨いてね」では面白くない。「シュッシュッシュッ、コチョコチョコチョしようね」と教えてほしいのです。

オノマトペでポジティブな子育てを
脳神経外科医も、「オノマトペは『好き』『面白い』を生み出しやすく、子供の気持ちにスイッチを入れる」と言っています。すると子供は、「もっと理解したい」「やってみたい」という気持ちになります。

オノマトペは子供の脳に入る言葉、やる気のスイッチを入れる言葉なのです。
日々の子育てでオノマトペを上手に使えば、子供はぐんぐん成長してくれると思います。ぜひ活用してみてください。

藤野良孝:1977年東京都生まれ。朝日大学保健医療学部教授。オノマトペの実態とその効能について多角的に研究。日々の暮らしの中でオノマトペを役立ててほしいと書籍や講演などを通じて利用法の普及につとめる。
※この記事は2月23日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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