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ネガティブな状態で悩んだり考えたりすることは、必ずしも悪いことではありません。スポーツ心理学者の田中ウルヴェ京さんは、AI時代に注目される人間ならではの能力だと注目します。子供たちの考え悩む力を育むことは、ポジティブな力を伸ばすためにも重要です。

テレビ静岡で2月9日に放送されたテレビ寺子屋では、スポーツ心理学者の田中ウルヴェ京さんが、AI時代を生きる子供の育て方について教えてくれました。
人間ならではのじっくり考える力
スポーツ心理学者・田中ウルヴェ京さん:
「ネガティブ」には、マイナスなイメージがあると思います。でも、実は悩んだり不安になったりとネガティブな状態になることで出てくる「思考の力」が、特にこれからのAIロボット時代に「人間の力としてとても大事」だと注目されているのです。

私たちは、すぐに解決策がわかる問題に対しては悩みもしないし、不安にもなりません。パッと解決する、その力ももちろん大事です。
でも、簡単な解決策がなく、「この要素もあの要素も大事」といった問題を考えることは、まだまだロボットやAIには難しいそうです。

「解決しないで置いておく力」という表現もできます。「少しずつやってみて、失敗しながら工夫しながら進める」などということは、インプットが難しい。それが、この力が私たちに必要とされている理由です。
子供たちにいつかこの力がちゃんとつくように、大人ができることを2つ紹介します。
気持ちの原因を聞いてみる
一つ目は、「すぐに共感しないであげる力」。

例えば、「もう練習に行きたくない」と子供が言った時、「じゃあ、やめなさい」や「もったいない、行きなさい」が即決です。
一方で、「どうしてそう思い始めたのか教えて」とか「もうちょっと深くお話聞いてみたいんだけど」というのが、すぐに共感しない力です。

「いろんなことを知らないと、そもそも共感すらできない」というのが本当のところで、自分にとってもお子さんにとっても実態を把握する力を養うために必要です。
問題解決の主人公は子供
もう一つが「解決しないであげる力」。
こんなことはないでしょうか。「そういう悩みなのね、わかった。ママがやってあげる」なんて、良い意味で思ってしまう。あるいは、「お姉ちゃんもそういう悩みあったよ」「お兄ちゃんもそうだったから大丈夫、こうやって解決すればいいよ」などと、言ってあげたくなるものです。

でも、目の前にいる子はお姉ちゃんでもお兄ちゃんでもない。必要なのは「他の例を当てはめるのも良し悪しがあるな」と考える力です。
すると、お子さんが「ママにいろいろ言ってるうちに、こんな解決策を見つけたよ!」と言ってくれることもあります。自分で解決する能力が出てくるのです。

「人生で急いでいない重要なことってある」という、そこがキーかと思います。ちゃんと迷う。すると、根本的な解決もできるようになる。人には見えないものだからこそ、自分がゆっくり少しずつ培う力だとも言われています。
人生を支えるじっと悩む力
大木をイメージしてください。

私たちから見えるのはたくさんの枝や生い茂った葉っぱ、それはポジティブな能力と言われる「即決できる力」や「分析力」。でも、そのポジティブな力をどんどん伸ばすためには、悩み、迷い、じっと難しい課題に直面できる「考える力」という長い根っこを生やすことが必要なのです。
「悩むことってすごく大切な力なんだな」と思っていただければと思います。

田中ウルヴェ京さん:1967年生まれ。ソウル五輪シンクロ・デュエットで銅メダルを獲得。米国の大学院で心理学を学ぶ。トップアスリートや経営者など、幅広く心理コンサルティングに携わっている。
※この記事は2月9日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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