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求刑通り懲役18年の実刑判決 不倫の末の凶行…バラバラ殺人死体遺棄事件 「猛省を促すのが相当」静岡

遺体が遺棄されていた男の自宅(2023年2月)

交際相手の頭をハンマーで殴るなどして殺害した上、遺体を切断して遺棄した罪に問われている男の裁判員裁判で、静岡地裁浜松支部は6月14日、男に対して検察の求刑通り懲役18年の実刑判決を言い渡した。

裁判所はいずれの行為も事実と認定

殺人・死体損壊・死体遺棄の罪で判決を言い渡されたのは沼津市真砂町に住む無職の男(32)だ。

6月14日に開かれた判決公判では、2023年2月、静岡市内の人通りのない山道に駐車した車内で、当時交際していた女性の頭などを鉄製のハンマーで複数回殴った上、首を充電ケーブルで絞めて殺害し、さらに遺体を切断したほか、ゴミ袋に入れて自宅のコンテナボックスや車内に遺棄した行為について、いずれも事実と認定した。

争点となった犯行の“計画性”

被害に遭った女性はいわゆるシングルマザーだった一方、男には妻子がいる不倫関係にあり、これまでの公判で、検察側は男が主張する「別れ話をするため」という目的であれば、鉄製のハンマーを持参する必要も山道に移動する必要もなく不自然な行動と疑問視し、「遅くとも被害女性に会いに向かった時点で殺害することを想定しており、突発的な犯行ではなく一定の計画性がある」とした上で、「犯行に至る経緯について被害女性の言動が無関係ではないが、男の身勝手で曖昧な態度に原因がある。殺人という取り返しのつかない行為がやむを得ないものであったとは認められず強い非難に値する」と主張。

これに対し、弁護側は「追い詰められた末の犯行で、金銭の要求などを我慢してきたが耐えきれず衝動的に殴った」などと一貫して計画性を否定し、被害女性について、最初から男が既婚者であることがわかっていたにも関わらず、不倫関係が男の妻に発覚しても妻に謝罪することなく不誠実な対応で、「それどころか『家族をめちゃくちゃにしてやる。今から会社に行くぞ』など関係を暴露することをほのめかした」と反論している。

犯情考慮するも求刑通りの判決

被害女性はハンマーで20回以上も執拗に殴られ瀕死状態にあったにも関わらず、さらに舌骨が折れるほどの強さで首を絞められて殺害された。

この点について、来司直美 裁判長は「強い殺意をうかがわせる危険なもので、残忍で悪質。被害者は死につながる痛みや苦しみを二度も受けていて、肉体的・精神的苦痛の大きさは計り知れない」と述べ、死体の損壊や遺棄に関しても「理解不能な態様で、死者に対する宗教的感情や畏敬の念を大きく害する残酷で悪質な犯行」と非難。

ただ、「被害者から暴力や暴言を受けたり、『勤務先や妻に電話する』『家に行く』と脅されたり、罰金や手切れ金などと称して数百万円もの金銭を要求されたりしていた事実が認められる」ことから、「被害者による度を超えた金銭要求が犯行の引き金になった側面は否定できず、そのことが殺人等を正当化するものではないことは明らかとはいえ、犯情においてある程度考慮する必要がある」との見解を示した。

一方で、「被告が被害者から追い詰められたとまでは言えない」とした上で、「金を払うつもりもないのに『払う』と嘘をついて呼び出し、(犯行)当日は鉄製ハンマーなどを用意して被害者と合流し犯行に及んでいることからすると、被害者を殺害することをまったく想定していなかったわけではないと考えられる」と指摘。

このため、「計画性があったとまでは言えないが、突発的な犯行であったとも言えず、弁護人が主張する責任非難の大幅な減軽までは認められない」と結論付けた。

そして、男が罪を認めていることや社会的制裁を受けていることなどを考慮しても、「公判に至るまで遺族への謝罪をせず、弁償も提案していないことから、刑務所で罪の重大さを自覚させ、猛省を促すのが相当」と述べ、言い渡されたのは検察の求刑通り懲役18年の実刑判決だ。

裁判長の説諭に男は…

最後に、来司裁判長が「時間は誰にでも平等にあるが過去には戻ることができない。
現実を受け止めて、どう考え、どう行動するか。あなたには再び社会に戻り、家族とともに過ごす未来も残されている。しかし、被害者にはその未来は訪れない。重大な犯罪の一部始終を振り返り、罪の重大さを自覚し、もう一度考えてみて欲しい」と説くと、終始腕を組んで話を聞いていた男は小さくうなずき、静かに法廷を後にした。

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