ニュース

「泣きそうになる」台風被災の復旧に22億円 タヌキだらけの駅はローカル鉄道の危機を救うのか 静岡

大井川鉄道の被災現場とタヌキの置物

SLや「きかんしゃトーマス」号が人気の静岡県の大井川鉄道は、2022年の台風で土砂が線路を覆い今も一部の区間が不通となっている。被災現場の見学ツアーで、参加者は「泣きそうになった」と惨状に驚いた。復旧費用は22億円とも言われるが、大井川鉄道は名物車掌が残してくれたタヌキにすがっている。

台風被災の爪跡に「泣きそう」

大井川鉄道の人気者トーマス

静岡県中部の島田市と川根本町を結ぶローカル線・大井川鉄道。

「きかんしゃトーマス」号やSLなどの観光列車、それに湖の上の無人駅もあり、地元の人だけでなく家族連れや鉄道ファンからも愛されている。

台風で土砂が線路の流出(2022年9月)

しかし、2022年の台風による土砂崩れで線路が埋まり、2024年5月時点でも一部区間が不通のままとなっている。大井川鉄道によると復旧にかかる費用は22億円だ。

大井川鉄道は全線開通に向けて県や国などに支援を求めるとともに、様々な企画による集客やクラウドファンディングの検討など自助努力も続けている。

被災現場の見学ツアー(2024年5月)

2024年5月には全線開通に向けた課題を知ってもらおうと、被災現場の見学ツアーが開かれた。参加費用は1人2万8000円。県内外から約40人が参加し、職員の案内で不通区間の一部 約3.6kmを歩いた。

被災現場の見学ツアー(2024年5月)

参加した人たちは「土砂が崩れ落ちて固まっているのをみてショックでした。何カ所もあり大量で、簡単なことではないなと思って泣きそうになりました」「本当にびっくり。こんなに素晴らしい鉄道が自然の力の恐ろしさであんな姿になっちゃうのかと思って」などと話し、厳しい現実を目の当たりにして全線開通へ向け後押しができればと感じている様子だった。

名物車掌が残したタヌキを活用

大井川鉄道・神尾駅

そんな大井川鉄道が苦境の打開のために取り組んでいる工夫のひとつが、無人駅のタヌキ駅化計画だ。

金色のベースに赤い文字でかかれた看板が目立つ「神尾駅」。

神尾駅周辺のタヌキの置物

この駅に降りるとたくさんのタヌキの置物が出迎えてくれる。

神尾駅には元々タヌキの置物が置かれていたが、大井川鉄道では2024年1月からタヌキの置物を増やす「タヌキ駅化計画」に取り組んでいる。

名物車掌の石原さん(1981年)

計画の発端は45年ほど前にさかのぼる。きかっけをつくったのはSL列車の初代専務車掌を務めた石原〆造(しめぞう)さんだ。

石原さんは乗客への案内が好評で、チップをもらうことも多かったそうだ。チップを多くの人を楽しませるために使おうと考え、神尾駅に信楽焼のタヌキの置物を置いたという。

神尾駅周辺のタヌキの置物

トーマスやSLのほかにも観光資源が欲しい大井川鉄道は、その名物車掌のレガシーに着目した。

大井川鉄道広報室の山本豊福 次長は「大井川鉄道はこれまでSLがウリで停車しない駅への関心は低かったが、SLが止まらない駅でも見せ方によっては観光客を呼ぶ材料になるのではと考えた」と、タヌキの置物に注目した理由を話す。

シンボルは金色タヌキ 開運切符も

ゴールデンタヌキ

いまでは70体はあるというタヌキの置物だが、中には金色の大きなタヌキもいる。通称「ゴールデンタヌキ」だ。

神尾駅のたくさんのタヌキの像の目玉となるよう、お腹と笠の部分を金色に塗って良い縁起を招くタヌキを作った。

開運切符も販売

2024年1月にタヌキ駅化計画を打ち出してから、徐々に観光スポットになりつつある。

また、大井川鉄道ではこのタヌキ駅化計画に合わせ、ほかにも縁起がいい駅として有名な「合格駅」や「門出駅」も周遊できる「開運たぬきっぷ」を販売している。

大井川鉄道のSLとタヌキの置物

大井川鉄道広報室・山本豊福 次長:
タヌキは“他を抜く”という意味もあるそうで、ぜひ運も力もつけてよい縁起も持って帰っていただきたい

被災現場の見学ツアーや無人駅のタヌキ駅化計画。

自然の猛威に翻弄されながらも、懸命に生き残り策を探るローカル鉄道にエールを贈りたい。

静岡のニュースを発信!静岡で何が起きているのか。これからどうなるのか?丁寧に詳しくお伝えします
  • BLOG
  • Instagram
  • LINE
  • YouTube