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蒲焼きが人気のウナギは、大半が漁で採った稚魚のシラスウナギを養殖したものだ。シラスウナギはここ数年は不漁が続いて価格が高騰し、密漁や密売が後を絶たない。このため水産庁は採捕に関する新たなルールを2023年12月から導入した。
ただ、この新ルールにより「ウナギの値段がさらに上がる」と予想する水産加工業者もいる。
ウナギ養殖にシラスウナギは欠かせない
2023年12月4日、天竜川の河口で水中に網を出し入れしている多くの漁師の姿があった。狙っているのはウナギの稚魚「シラスウナギ」だ。
漁師に釣果をたずねると「きょうは3匹です。初日がゼロでした。」と返ってきた。
全国24都府県で行われているシラスウナギ漁。ウナギの完全養殖の実用化は難しく、ウナギの養殖にはシラスウナギが欠かせない。
シラスウナギ漁は例年12月から翌年4月まで行われる。静岡県は全国有数の水揚げ量を誇っているが、2023年漁期(2022年12月から2023年4月）は約696tとなり、2021年漁期以降は3年連続で前年割れと不漁が続いている。
別の漁師にも聞いてみたが「ダメ。いないね。2022年も悪かったけど、2023年はもっと悪いかな。まだわかんないけどね」とやはり不漁だと言う。
県によると不漁の原因については国の調査も行われているものの、はっきりした答えはわからないようだ。
新ルールは「罰則強化」と「取引の自由化」
不漁による供給不足もあり、シラスウナギは1kg当たり250万円と高値で取引されるため密漁が後を絶たないそうだ。（2023年漁期の5月末時点の平均取引価格・水産庁）
そこで水産庁は2023年12月から罰則を強化し、密漁すれば3年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科せられることとなった。
また、漁師と養殖業者との取引も自由化された。これまで静岡県内で採れたシラスウナギは静岡県内の養殖業者にしか販売できなかったが、県外の養殖業者にも販売できるようになった。
これまでは県外の養殖業者に高く密売されるケースがあったそうで、取引を自由化することで密漁を防止することも狙いだという。
シラスウナギを県外で高く売ることも可能となった点を漁師に聞いてみたところ「期待したいですね 少しでも多く獲って来て高く（売れればいい）、今まではひとつのところ（との取引）だったから」と返ってきた。
一方、静岡県内の養殖業者は県内外での仕入れで価格競争を強いられ、養殖に欠かせないシラスウナギを確保できるのかを懸念している。
不漁が続くシラスウナギ。
その取引はいま大きな転換期を迎え、関係者の多くが今後の状況を注視している。
資源を減らさず食文化を守る
シラスウナギをどうすれば増やすことができるのか。漁業者や養鰻業者などからなる連絡会は、2017年からクラウドファンディングで資金を集め、親ウナギを放流する事業を行っているそうだ。
連絡会の会長で、浜松市の水産加工会社「海老仙（えびせん）」の加茂仙一郎 社長は
「親ウナギの放流だけでなく、小学生の体験授業に協力するなどウナギの資源保護について考えてもらう取り組みを進めている。これ以上資源を減らしてはいけない」と話してくれた。
また、今回の制度変更の影響でウナギがまた高くなるおそれがある点を理解してほしいと訴える。
海老仙・加茂仙一郎 社長：
初めてのことなので、そこを理解していただき見守っていただければと思います。本当においしいウナギができていますので、価格帯は高くなってしまうがおいしいウナギを皆さんに食べていただけたらありがたい
ヨーロッパウナギは絶滅危惧種として平成21年（2009年）から貿易取引の制限対象となり、アメリカウナギも二ホンウナギ同様に絶危惧種種のため、シラスウナギの採捕量の減少を輸入で補うことも難しい状況にある。
ウナギを、そして日本の食文化の一つを守るためにも、資源の現状を把握し漁獲対策や生息環境などの改善などを講じていくことが求められている。
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