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春から夏にかけて旬を迎えるアサリ。
静岡県西部にある浜名湖も有数の産地として知られているものの、ここ数年は不漁に悩まされている。
どうすればアサリが増えるのか。
漁師だけでなく、地元の企業も再生に向けた取り組みに乗り出している。
◆苦境続く浜名湖のアサリ漁 漁獲量は激減
浜名湖の特産アサリ。2009年の漁獲量は約6000トン。
潮干狩りは浜名湖観光の目玉で、1980年代には5月から8月にかけて毎年 約30万人が訪れた。
しかし、漁獲量は減少傾向が続いていて、2021年は12年前の1/60、わずか100トンにまで落ち込んだ。
漁師:
もう10年くらい前から減少傾向にある。
漁師ができることは一応やっているんですけど、それ以上に自然の影響や環境の変化というのもかなりあるものですから。
深刻なアサリの減少により、大勢の観光客でにぎわってきた潮干狩りは5年連続で中止となり、周辺のホテルなどの観光業にも影響を与えている。
◆不漁の原因は食害 そして…
不漁の原因のひとつとして挙げられるのが、浜名湖に生息するクロダイなどによる食害だ。ここ数年、被害はさらに深刻になっている。
こうしたアサリの不漁で、生活にも大きな影響を受けているのが漁師だ。
浜名漁業協同組合では禁漁期間を設けているほか、こうした食害対策については、県の委託事業として漁師自身も取り組んでいる。
ただ、不漁の原因は食害だけではないと考えられている。
浜名漁業協同組合・渥美敏 組合長:
全国的にですね、かなり水がきれいになりまして。浜名湖も例外でなく、やはりかつてに比べると相当きれいになったのはいいんですが、アサリのエサとなるプランクトンが繁殖するには少し足りないという栄養状態になりましたね
◆漁獲量の回復へ光学機器メーカーが一役
プランクトンを使ってアサリを回復させようと取り組んでいるのが、地元の光学機器メーカー「浜松ホトニクス」。一見、アサリとの関係が見えにくい企業だが、どんなことをしているのか。
浜名漁協の建物で浜松ホトニクスの松永茂さんが取り組んでいるのは、プランクトンの中でも特にアサリが好む「パブロバ」の培養だ。
赤・青・黄、3色の光を適切な比率で当てることで、よりよい光合成を促し「パブロバ」の生産の効率性を高められるという。
浜松ホトニクス・松永茂さん
失敗もありましたが、徐々にプランクトンの生産が安定してきて、これからさらに大規模化を目指しているところであります
光技術を生かし培養した「パブロバ」を使ってアサリを生産・育成しているほか海で養殖するための試験も始め、松永さんもアサリの再生に向けて手応えを感じている。
浜松ホトニクス・松永茂さん
実証試験段階ですけれども明らかにアサリの種苗の成長が良いということを日々実感しております。
皆さまの思いとしてアサリの復活を目指していきたいと、弊社はその一翼を担わせていただければこんなにうれしいことはないと思っております。
深刻な浜名湖のアサリの不漁。
漁師の踏ん張りはもちろん、行政や地元の企業のバックアップで再生への光が見えてくることが期待されている。