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【富士・さや】おむすびを“ドライブスルー”で 美シンプルな握りたてのごちそう

シンプルながら、こだわりが詰まったおむすび、おかず、みそ汁を。静岡・富士市に3月オープンした「おむすび さや」は、握りたてのおむすびをドライブスルーで買うことができる店です。

ドライブスルーで受け取り

ドライブスルーのおむすび店はどんな仕組みなのか、実際に体験してみました。

まずは、インスタグラムかLINEから注文します。予約時間になったら店の前の駐車場へ。

ビルの入口にある緑のおむすび看板が目印

店主の佐藤清可(さやか)さんが、予約時間に合わせてトレーに載せて商品を持ってきてくれます。支払いは現金で。

店主の佐藤さんが店舗前で商品を渡します

大通りから入って1階部分を抜け、裏側の道に抜けることができるビルの構造になっているため、お客さんの回転をよくしようとドライブスルーを思いついたそうです。

店内で飲食を希望する場合は、事前に相談すれば可能です。

ビルのオーナーからもらった“課題”

食で人をサポートしたいと考えていた佐藤さんが、おむすび店をやりたいと考えていたビルオーナーと出会ったのは2022年10月。

「シンプルでカッコよく体にいいもので、おむすびを作ってほしい。あとは楽しんでやりたいようにやってみてください」と“課題”をもらいました。

既に家事育児の代行業や、ラジオのパーソナリティーなど様々な仕事をしていた佐藤さん。

店名やメニューを決めたり、食材選びをしたり、とにかく決めることが多くて大変な日々がはじまりました。

中でも、特に難しかったのがどんな「おむすび」を作るかです。

シンプルが難しい 塩むすびが完成するまで

包装紙で優しく包みます

現在、さやで扱っているのは「塩むすび」のみです。

富士市で生産されている、やまたか農場の「こしひかり」と、川口農産の「にじのきらめき」の2種類のおむすびを作っています。

どちらも前日に精米し、作り立ての状態で手渡せるようにと、可能なかぎり予約時間の直前に握るようにしています。

佐藤清可さん:
一番おいしいと思ったから最初は「塩むすび」と決めたのですが、いざ向き合ってみると、とても難しいと感じました。納得できる塩むすびがなかなかできず、オープンを延期したくらいです

難航したのは「塩」

さやで使用している塩と砂糖

主役であるコメの味を引き立てる塩を決めるまでが特に大変でした。おむすびの専門書を読み、他店に基本を学び工夫を重ねていきます。

コメに塩味を加える方法も悩みました。どこから食べても均一な塩加減にするために、塩水で炊いたり、塩をコメに混ぜ込んたりしてはみましたが、目指す塩むすびとは違いました。

最後は飲食店で働く友人からのヒントが決め手となりました。

2種類の塩をブレンドして水分をとばし、すりつぶして粒子を細かくしたものを、握ったおむすびにまんべんなく振りかけるようにしています。

塩加減はセットのみそ汁やおかずと一緒に食べたときに、ちょうどいいあんばいとなるように調整しています。

佐藤清可さん:
「これをやりたい、ここに困っている」と声に出して周りに言っていれば、誰かしらがヒントをくれます。ご縁のありがたさをいつも感じています

ついに完成した塩むすびは、シンプルですが昔を感じさせてくれる、味わい深い自信作になりました。

コメのおいしさを楽しむ

パクッとかぶりつくと、まず表面の塩を舌に感じ、かむたびにコメの優しい甘みがじわじわと口の中に広がっていく感覚。

しっかりと立った粒を壊さないように、優しく握っているから口の中でほろほろとほどけていきます。

2品種のコメを食べ比べできるのが、また面白いところ。しっかりかんで、違いを味わってみてください。

佐藤清可さん:
不自然なものを入れていないからコメそのものの“におい”がする、コメの甘さがわかると言ってもらえるのが嬉しいです

材料はシンプル おかずとみそ汁

おむすびだけでなく、みそ汁やおかずにも思いが込められています。

普段料理をしない人にも季節を感じてもらえるようにと、みそ汁やおかずには、できるだけ旬の野菜を取り入れています。

佐藤さんの家の畑で採れた野菜を使うこともあります。

彩(さい・900円)※容器からお皿に移して撮影

だしは混合削りぶし(厚削りのカツオ・サバ・イワシ)でとり、富士市にある老舗「神戸醤油店」のみそを使っています。

旬の力が宿る野菜からもだしが出るよう、しっかり煮込んだみそ汁。

野菜嫌いな子供が食べてくれたという声も多く、お母さんが鍋を持ってきて、子供のためにみそ汁を大量に買っていったこともあるそうです。

「粋(650円)」や、「はじまり(800円)」に付くのは、めざしと卵焼きの串です。

こんがりと焼いただけのめざしは、塩味と程よい苦みのバランスがご飯にあいます。柔らかく、頭からがぶりと食べられます。

卵焼きの材料は卵と砂糖のみで、丁寧にこしてから焼くのがポイント。くすんだ黄色は、ミネラル豊富なサトウキビから作った古式原糖を使っているからです。

開発中の新商品は磯の香り

佐藤さんは、食を見直すきっかけになればと、8月から生産者や取引業者とともに、食の楽しさを伝える講座を開いています。

親子おむすび&お茶を楽しむ会イベント

また、新商品も開発中です。浜名湖産の青のりを使った「青板のり(いちまる商店)」は香りが強く、これをおむすびに使ってみようと試行錯誤を繰り返しています。

完成に近づいているという新作を、一足先にいただきました。

磯の香りと緑の鮮やかさ、ごはんに混ぜ込まれた“おかかしょうゆ”のうま味が、コメを引き立ててくれているように感じます。

日常を変えるきっかけに

簡単なおむすびやみそ汁も、見直せばごちそうになるという感覚。

さやで食べたものをきっかけに、日常が少しでも変化してくれたら嬉しいと佐藤さんは話します。

さやのおむすびと一緒に、そんな気づきも持ち帰ってみませんか。

■店名 おむすび さや
■住所  静岡県富士市中央町1丁目10-9 
Zappaビル1F ドライブスルーで営業
■電話番号  0544-26-8965
■予約  インスタグラムか公式LINEより
■営業時間  11:30~13:00
■営業日  インスタグラムのカレンダー参照

【もっと詳しくみる】おむすび さやのインスタグラム

文/山口真未 撮影/福島未里

静岡・富士市に移住してきた人と、もともと住んでいた人がつながり、助け合いながら仕事をシェアして働く同志の集まりです。
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