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「ワニは子煩悩」赤ちゃん助ける兄弟親戚 生物ハンターが語る“意外な進化”【テレビ寺子屋】

凶暴なワニも実は子煩悩で、赤ちゃんがピンチの時は兄弟親戚も集まって助ける。そんなは虫類や両生類の意外な進化を、生物ハンターとして知られる加藤英明 准教授が教えてくれました。

5月19日にテレビ静岡で放送されたテレビ寺子屋では、静岡大学教育学部の加藤英明 准教授が両生類とは虫類の進化の魅力について語りました。

は虫類・両生類の進化は魅力いっぱい

静岡大学教育学部 准教授・加藤英明さん:
両生類とは虫類は、形も動きも面白く、何より興味深いのが「進化の歴史を垣間見られる」グループだということです。脊椎動物が水中から陸上に上がって生活するまでの歴史がギュッと詰まっているのです。

3億年前からずっと同じ形のものもいれば、進化を遂げて形が変わったものもいます。なぜこういう形になったのか、それを考えるだけでも本当に面白いですよ。魅力いっぱいのは虫類・両生類の進化を見ていきましょう。

意外とワニは子煩悩

【子育ての進化】
「ワニ」は凶暴なイメージがあるかもしれませんが、意外と子煩悩です。親は卵を傍でしっかり守り、ふ化する直前に中で赤ちゃんがピピッと泣くと穴を掘って卵を出し、うまくふ化できない場合、口を器用に使って卵を割ってあげます。

画像提供:PIXTA
画像提供:PIXTA

社会性があり、仲間意識も強く、集団で暮らしています。赤ちゃんが助けを求めた場合は親だけでなく、周辺の兄弟や親戚たちもパッと集まってきて助けます。

「イチゴヤドクガエル」は、体長2cmほどの小さなカエルで、真っ赤な体は「警告色」とも呼ばれ、毒があることを示しています。水中に産卵すると魚たちに食べられてしまうため湿度の高い「落ち葉だまり」の中に隠すように産みます。

画像提供:PIXTA
イチゴヤドクガエル 画像提供:PIXTA

卵の世話をして守るのはオス。ふ化すると、おたまじゃくしが自らお母さんの背中に乗って吸いつき水辺に運んでもらいます。水辺と言ってもかなり高い木の上、着生植物の葉の付け根の水たまりにメスが一匹ずつ運ぶのです。産む卵は少なくて、5個くらい。その少ない卵、そしておたまじゃくしを大事に守って育てていきます。 

まるで忍法 飛んだり水面を走ったり

【逃げ方の進化】
「グリーンバシリスク」は、全長80cmくらいの、広い意味ではイグアナの仲間です。二本足で立ちあがり、なんと1秒間に20歩という回転数で川の上を走って逃げます。

画像提供:PIXTA
グリーンバシリスク 画像提供:PIXTA

ワニや大型の魚から逃げるためには、できるだけ体を水中に沈めたくない、だったら水面を走って渡ろうというように進化したのです。

「トビトカゲ」も面白い逃げ方をします。体長10cmほどで、体に羽のようなひだが付いていますが、これは肋骨を皮膚が覆った皮膜です。普段は皮膜を閉じ、細長い木の枝のような敵に見つかりにくい姿をしていますが、天敵のヘビに見つかり追い詰められたら広げて滑空し、10m以上移動して逃げます。そこで、それを狙う敵も進化していくわけです。

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トビトカゲ 画像提供:PIXTA

ヘビも飛んでしまえば追いつけますよね。「トビヘビ」というヘビがいます。羽のような皮膜はないですが、肋骨をできる限り広げ、平べったい体にして、しかもS字状に体を曲げて空気抵抗を大きくして滑空します。こちらは逃げる獲物を追うための進化。どちらも命をつないでいくために進化したわけです。

進化の歴史を見守る

私たちは両生類、は虫類を色や形だけで判断しがちですが、実は長い歴史があり、その進化を見守っていく必要があります。

私たちの時代で、彼らの歴史を終わらせてしまいたくはないですよね。そのためには、まずはよく知る、そして生き物たちの邪魔をしないことが大切です。

加藤英明:1979年静岡県生まれ。農学博士。世界中のジャングルや砂漠を駆けめぐり生態系を調査。カメやトカゲの保全生態学的研究をしながら、学校や地域社会で環境教育活動を行っている。

【もっと見る! 「テレビ寺子屋」加藤英明さんの回】

フジテレビ系列で放送中の番組。「子育てってなんだろう」。その答えは1つではありません。テレビ寺子屋では子育てや家庭のあり方について様々なテーマを元に毎回第一線で活躍する講師を招いてお話を聞きます。