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静岡市葵区に本格的な江戸前のすしが味わえる店があります。大将の匠の技が目の前で見られるので、普段カウンターのすし店に行き慣れていない人にこそ体験してほしい店です。優しい大将なので、初めてでも安心ですよ。
1978年創業 本物守る大将
葵区西草深町、浅間神社の鳥居から歩いてすぐの場所にある鮨富久(すし とみきゅう)。
大将の白鳥正己さんは中学2年生の頃、テレビドラマで見たすし職人に憧れ、高校卒業後に上京。東京と静岡で修行を積みました。鮨富久をオープンしたのは昭和53年です。
江戸前ずしは、ただネタを乗せて握るだけに在らず。隠し包丁を入れたり、酢でしめたり、おいしく食べられるようにひと手間加えた繊細な仕事が光ります。
お恥ずかしながら、カウンターのすし店に行く機会があまりない筆者。目の前で行われる大将の丁寧な仕事ぶりは、見ているだけでも新鮮でほれぼれします。
おまかせで出てきた「甲イカの握り」は、表面に鹿の子模様に切り込みが入っているので、食感がおもしろくて食べやすい。
ゆずの皮があしらってあるので、口の中いっぱいに爽やかな香りが広がります。
こんな具合でシンプルな素材を、よりおいしくする工夫にあふれているのが富久です。
大将のもうひとつの顔
清水みなと寄席での一幕。トリを飾るのは、カウンターに立つ姿とはまた違った雰囲気の大将です。
実は大将はもう一つ、落語家「夢家道楽(ゆめやどうらく)」としての顔を持っており、その腕はプロ並み! 毎年寄席を開催したり、地域の公民館などでお話を披露したりしています。
以前は店の2階で富久寄席と銘打って、寄席を開いていました。そんなこともあり、お客さんの中には落語好きの方も結構いらっしゃるそう。かくいう筆者も大将の落語を聞き、噺の中に出てきたすしが食べたくて店を訪ねた次第で。
すしを握る間も、冗談を交え笑わせてくれる大将。すし職人と落語家の二刀流で、楽しい時間を演出してくれるエンターテイナーです。
大将におまかせ!本格江戸前にぎり
富久のおまかせ江戸前にぎりは、予算に応じて握ってくれますが、基本の価格は3000円(※2024.2.5修正)。想像よりもお手頃で驚きじゃないですか?
価格がわかって安心したところで、江戸前の基本を一通りいただきます。
この日の一品目はマグロの漬けから。舌にからみつくねっとり食感がたまらない。
「味が付いているので、このままで」とか、「少ししょうゆをつけて」といった感じで、大将が一声かけてくれるので、迷いなく楽しめて感謝。
目を引いたのは、よく熟れた柿をワサビじょうゆで和えた一品。柿をこんな風に食べるのは初めてですが、柿の甘さとワサビのツンとした辛味が意外と合います。
普段はなかなか口にしない乙な味わいですが、中学生の息子も気に入って進んで食べていました。
お次はサーモンに千枚漬けを巻いた握り。
千枚漬けの甘酸っぱさが、脂の乗ったサーモンとベストマッチ。千枚漬けの歯ごたえも心地よくて、ついうなってしまいました。
そして見事な手さばきで、あっという間に完成するのり巻き。見ているだけでおもしろいのですから、本当にすごいと思います。
かんぴょう巻きは三等分、たくあんは六等分で。大将いわく、かんぴょう巻きは三等分にするか四等分にするかで味に微妙な差が出るそうです。おもしろいですね。
玉子にもひと手間あり。中に自家製おぼろが仕込まれていて、黄色とピンクが鮮やかで映えます。
「もうこういう仕事をする人がいなくなっちゃったね」と少し寂しそうに語る大将。当時の人々が実際に食べていた江戸前ずしに出会える貴重な機会でした。
最後にもう一品!
マグロの漬けに始まり、最後の玉子まで全11品。一通り出た後ですが、少しお腹に余裕があったので、富久自慢のいなりずしを追加しました。
「3つ食べても飽きない味付けじゃなきゃいけねぇよ」。修行時代に師匠からそう教わったいなりずし。
シャリ3つ分くらいはありそうで、ボリューム満点。お揚げは大将こだわりの逸品を使っており、中にはレンコンが入っているのでサクサクした食感も楽しめます。
浅間神社のお祭りの際には、このいなりが入った助六ずしを販売しており、毎年人気なんだとか。物知りの大将に、助六ずしの名前の由来も教えてもらいました。気になる方は、ぜひお店で大将に聞いてみてくださいね!
■店名 鮨富久
■住所 静岡市葵区西草深町23-4
■電話 054-246-4210
■営業時間 17:00〜22:00
■定休 水
※お電話でご予約の上、お出かけください。
取材/よれちゃん
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