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【中区・みほとけのキセキⅡ】360度仏像の背中まで見える企画展 仏像マニアが教える“推し仏像”

普段は寺に安置されている遠州・三河地方の仏像を間近で見られる企画展が、浜松市中区の浜松市美術館で開催中です。企画展のオフィシャルサポーターで“仏像マニア”の久保沙里菜さんに楽しみ方を教えてもらいました。

好評だった「みほとけ展」の続編

大日如来坐像 所蔵:林慶寺

2021年に開催された「みほとけのキセキ-遠州・三河の寺宝展-」はコロナ禍でありながら、地方単独の仏像だけを集めた特別展では異例の、28日間で2万3000人が来場しました。

企画した浜松市美術館の学芸員・島口直弥さんのもとには、訪れた人から2回目も実施してほしいとの声が多く寄せられたそうです。

第2弾となる「みほとけのキセキⅡ-遠州・三河のしられざる祈り-」も、前回同様、浜名湖を中心とした遠州・三河地方の寺や神社に残る、平安・鎌倉・南北朝時代の仏像・神像を一堂に展示しています。

浜松市美術館 学芸員・島口直弥さん:
前回紹介できなかった地域、時代の仏像も取り上げています。寺外初公開20体をはじめ、通常非公開の仏像や近年の調査で価値が見出された仏像を紹介しています

展示を企画した浜松市美術館 学芸員・島口直弥さん

“仏像マニア”久保さんに聞く見どころ

「みほとけのキセキⅡ」のオフィシャルサポーター・久保沙里菜さんに、会場を案内してもらいました。

久保さんは富士市出身のフリーアナウンサーで、仏像の魅力を発信するためにアナウンサーになった筋金入りの仏像マニアです。

7歳の頃に訪れた京都で仏像に目覚めて以来、国内の寺はもちろん、仏像を見るために海外の美術館へも足を運びました。SNSで日々、仏像の魅力を発信しています。

オフィシャルサポーター 久保沙里菜さん  美術館2階に久保さんのパネルが置かれています

久保沙里菜さん:
もしかすると二度と見られないかもしれない仏像があります。展示の仕方も工夫してあるので初めての方でも、もともと仏像好きの方でも楽しんでいただけると思います 

推し仏像・初級 360度撮影できる千手観音

千手観音立像(平安時代)  所蔵:定光寺

久保さんが初心者に勧める“推し仏像”は、磐田市にある定光寺の「千手観音立像」です。

久保沙里菜さん:
360度どこからでも見られるように展示してあります。普段は仏像の裏側を見ることはなかなかできません

千手観音立像は部屋の中央に1体だけで展示してあり、後ろまでぐるっと回り込んで鑑賞できます。

久保沙里菜さん:
ぜひ仏像の背中まで見てほしいです。後ろから見るたたずまいがすてきで、優美な印象を受けます。たくさんの手に持ってる持物にも注目してみてください

千手観音立像の背中

また展示の多くは写真撮影ができます。 好きな角度を見つけて“推しの仏像”と一緒に映える写真を撮ってほしいということでした。

もう一つ、初心者へのおすすめは音声ガイドです。新感覚音声ガイド「みほとけのハナシ」は、まるで仏像自身がしゃべっているかのような自己紹介型音声ガイドを聞くことができます。

仏像の声はテレビ静岡のアナウンサーが総出演で担当しています。会場入口で600円でヘッドホンを借り、音声ガイドを聞きながら会場を回れば、より楽しむことができるでしょう。

推し仏像・上級 女神坐像の“木の節”

久保さんが仏像好きにすすめる“推し仏像”は、磐田市にある府八幡宮の女神坐像(にょしんざぞう)です。

所蔵:府八幡宮
手のあたりに注目 女神坐像 所蔵:府八幡宮

久保沙里菜さん:
府八幡宮に伝わる平安時代の神像群7体の1つで、初公開です。とても優しそうで穏やかな表情に癒される神像です。注目してほしいのは体の正面にある「大きな節」です

久保さんによると、通常は正面に節が来てしまうような材を神像に使いません。それでもこの木材を使ったということは、「神木」など由緒ある材で神像がつくられていることを示しているそうです。

推し仏像・上級 見逃し厳禁の“背刳り”

もうひとつ上級者に久保さんがおすすめしたい仏像が2階にあります。袋井市・西楽寺の「月光菩薩」と、浜松市・東林寺の「天王立像」です。

天王立像(平安時代)の背刳り 所蔵:東林寺 

この2体は背刳り(せぐり)の内部を見ることができます。背刳りとは、背面から仏像の内部を彫って空洞にし、別の背板でふさぐ技法です。

久保沙里菜さん:
背板が失われて通常見られない仏像の内部が見えます。これは本当に貴重な機会で、正面と内部のギャップが大きく、荒々しい彫り跡が確認できます。2体あるので平安時代の職人さんがどんなふうに彫っているのか、見比べてみてください

天王立像の正面

イチ推しのフォトスポット 大日如来と不動明王

さらに久保さんのイチ推しのフォトスポットを教えてもらいました。

大日如来が3体と、不動明王が一緒に展示してあるスペースです。

久保沙里菜さん:
大日如来坐像2体の間に大日如来の仏頭があって、見比べることができます。そして、その前に不動明王立像がある構図が仏像好きにはたまらない。不動明王は大日如来の化身と言われています。大日如来が不動明王としてこちらにやって来たような配置です 

(奥左)大日如来坐像 所蔵:岩水寺・(奥中央)大日如来仏頭 所蔵:岩室観音堂
(奥右)大日如来坐像 所蔵:林慶寺 (手前)不動明王立像 所蔵:熊野神社

子供が楽しめるコーナーも

子供も楽しめるお絵描きコーナーや、中学生以下限定で参加できるクイズもあります。

お絵かきに挑戦した久保さんいわく「絵を描いてみると仏像の細かい特徴まで再確認することができた」とのこと。久保さんの仏像の絵も貼ってあるので、ぜひ会場で探してみてください。

また、11月23日には子供向けのワークショップや久保さんが出演するギャラリートークイベントも予定されています。

久保沙里菜さん:
仏像はナマモノのように日によって見え方が変わってきます。ぜひ会期中も何度も足を運んで“その日の表情”を写真におさめてほしいと思います。また、仏像はお寺に戻られると拝む対象となります。 美術館で対面した後、本来仏像がいらっしゃるお寺にお参りするとまた感動することと思います

 大日如来仏頭 所蔵:岩室観音堂

「みほとけのキセキⅡ」は12月3日まで開催しています。近くにある「どうする家康浜松大河ドラマ館」の半券提示すると入館料が2割引きです(前売券、団体は対象外)。

仏像の魅力を知ることができるとても貴重なこの機会に、足を運んでみてはいかがででしょうか。

■イベント名 特別展「みほとけのキセキⅡ-遠州・三河のしられざる祈り-」
■会場 浜松市美術館
■期間 12月3日(日)まで
■時間 9:30~17:00(最終入館16:30)
■休館 月
■観覧料 大人1400円、大学生・専門学校生・高校生1000円、70歳以上700円、中学生以下無料 
     ※詳細は浜松市美術館のHP参照

【もっと詳しくみる】浜松市美術館のホームページ

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