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年を重ねてなお芸術に熱中している高齢者の展示会「超老芸術展」が静岡市駿河区で開かれています。今回はギャラリートークに参加してみましたが、制作者の背景まで深くわかって、より作品が味わい深くなるのでおすすめです。
超老芸術展はグランシップで開催中
超老芸術の初めての大規模な展覧会「超老芸術展 遅咲きのトップランナー大暴走!」が、グランシップで10月3日から開催されています。
【動画】「手動仕掛けの恐竜」や「ダジャレの木彫り」 動画で見る超老芸術
超老芸術家とは、高齢になって創作活動を始めたり、高齢になってもなお情熱的に活動を続ける人たちです。
全国の22組による超老芸術作品が展示されていて、4日は超老芸術の名付け親でアーツカウンシルしずおかの櫛野展正さんによるギャラリートークが開催されました。
誰でも聞けるギャラリートーク
ギャラリートークというのは、会場で作品を見ながら詳しい解説が聞けるサービスです。
参加するには、時間になったら受付周辺に集まるだけ。事前の申し込みは必要なく、誰でも無料です。
アーツカウンシルしずおか・櫛野展正さん:
老いを超えると書いて超老芸術。みなさん専門の教育を受けたわけのではなく、独学で創作しているのが特徴です
時間になると30人ほどが集まり、ギャラリートークがスタート。参加したのは若い学生や、高齢の人たちでした。
会場を進みながら22組の作品、全てに対して櫛野さんが解説をしてくれます。
櫛野さん自身が足を運んで超老芸術家を一人一人を取材してきただけに、展示の説明書きには書いていないおもしろいエピソードも聞けました。所要時間は約50分でした。
中でも特におもしろかった話をご紹介します。
芸術に昇華された“おしり”フェチ
島根県大田市の清水信博さんは女性の後ろ姿を描きます。どの作品も“おしり”が強調されています。
櫛野さん:
いわゆるおしりフェチで、好みのおしりが映るとテレビ画面をデジカメで撮影してドローイングします
櫛野さんが審査員を務める公募展に、清水さんの作品が応募されたのが出会ったきっかけでした。みごと大賞を受賞したということです。
また作品の端に空いたパンチ穴は、作品を出展する時に、清水さんが入居するグループホームの支援者が空けてしまった穴なのだとか。
ずらりと並んだおしりはどれも魅力的で美しく、数も圧巻です。
天使+ドラえもんで聖書を描く
広島県呉市の長恵(ちょう めぐむ)さんの作品に出てくる個性的なキャラクターは、天使とドラえもんから着想を得て生み出されました。
頭に付いているのはタケコプターではなく十字架。「長さんは信仰心のあついクリスチャンなんですけど」と櫛野さん。
聖書の一場面を描いているということで、神聖なものだと思うのですが、使っているのはイチゴやピザの箱なのです。
長さんはもともと障がい者アートのサポートを櫛野さんがしていた時の先輩でしたが、パーキンソン病を発症して退職した後は自らが超老芸術に没頭。「師だった人がいつの間にか取材対象になっていました」ということです。
ぞうきんを描き続ける清掃員
最後にご紹介するのは、今回の展示会で最も広いスペースを使っている超老芸術です。
と言っても1つの作品はスケッチブック1枚程度。その数が膨大なんです。
広島市のガタロさんは、ショッピングセンターでたったひとりの清掃員として長年勤務しています。壁一面に展示されているのはガタロさんが絞ったぞうきんです。日記のように毎日描いています。
櫛野さん:
メディアで取り上げられ、聖人であるかのようにガタロさんに悩みを相談しに来る人もいました。その現実とのギャップに、この作品を描き始めたそうです
たくさんのぞうきんの中に、小鳥の死骸と老人の死に顔の絵が混ざっています。見つけたときにはドキッとさせられるはずです。
ギャラリートークを終え、参加したひとりの女性は「弱者である高齢者はかわいそうだから見に来ているのではありません。すごい作品ばかりで、アートとしての可能性を見せつけられました」と話していました。
次回ギャラリートークは6日
次のギャラリートークは6日の午後2時からです。事前申し込みが必要ですが、最終日の8日には美術評論家などによるトークセッションも行われます。
笑ってしまう作品から、ドキッとさせられる作品まで、高齢化社会に新しく花開いた「超老芸術」に深く触れる機会となることでしょう。
■イベント名 超老芸術展 遅咲きのトップランナー大暴走!
■会場 グランシップ6階 展示ギャラリー
■住所 静岡市駿河区東静岡2丁目3-1
■会期 ~8日(日)
■時間 10:00~17:00(最終日~16:30)
■入場 無料
■ギャラリートーク 6日(金) 14:00~
■関連セミナー 8日(日) 13:30~15:00 ※要申し込み
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