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富士山が世界文化遺産に登録されて10年。国内はもとより世界からも注目され、地元の富士宮市には大勢の観光客が訪れることになった。世界遺産登録は地元ににぎわいをつくり、B級グルメが再び脚光を浴びることになった。一方で“周遊”にはまだ課題があり、富士宮市はあらたな計画に着手している。
◆“世界の”富士山となった2013年
「決定しました、富士山が世界遺産に登録されることが決定しました」
2013年6月22日にカンボジアで開かれたユネスコの世界遺産委員会。富士山は世界文化遺産に登録されることが決定した。
日本全国が喜びに包まれる中、富士山のふもと・富士宮市も記念のセレモニーを開き、まちはお祭りムード一色となった。
◆参拝客が増えた富士山本宮浅間大社
世界遺産のまちとなった富士宮市。市は白糸の滝をはじめ、世界遺産の構成資産について看板の設置や遊歩道の整備などを進めてきた。
また、ホテルの誘致を図るなど宿泊施設を増やし、全国から大勢の観光客が訪れるようになった。
中でも、構成資産の一つでもあり、市の中心部に位置する富士山本宮浅間大社には世界遺産登録をきっかけに大勢の参拝客が押し寄せた。
富士山本宮浅間大社・福井 宏和 権禰宜:
観光バス、観光の方が増えて、月100台程度バスが来ていたのが、多い月には月700台弱になりました
浅間大社によると、登録前は個人客が中心だったが、登録をきっかけにツアー客が急増。さらに、外国人観光客が増えたという。
◆“富士宮やきそば”にも再脚光
そして、世界遺産登録は地元のB級グルメ「富士宮やきそば」にも恩恵をもたらした。
浅間大社から徒歩1分の「お宮横丁」。富士山目当ての観光客によって再び富士宮やきそばが脚光を浴びた。
お宮横丁・佐野 高資 店長:
やきそばのブームは、B1グランプリを取ってから5~6年経って少し落ち着いてきた感じがありました。そこからもう一度 起爆剤になってくれたような気がします。富士山が世界に誇れるものだというので来る人が増えて、そこから外国人のお客さんが増えて、今では世界各国、数えきれないくらいの国から毎日来てもらっています
◆“逆さ富士”のある観光スポット
さらに、こうした世界遺産効果を継続的なものにしたのが、浅間大社の近くにオープンした富士山世界遺産センターだ。
逆さ富士をイメージした独創的なデザインのこの施設。富士山についての情報発信や研究の拠点として2017年12月にオープンした。
風景が壁に投影される富士登山の疑似体験など、観光スポットとしても人気を集めている。
この日も外国人が訪れるなど、国内外を問わず観光客が訪れていた。
富士宮市によると、世界遺産センターオープン後、浅間大社周辺の観光客数は年間190万人を記録し、以前より40万人以上増加。にぎわいと経済効果をもたらした。
◆課題は“限定的”なにぎわい
一方で、課題も指摘されている。
富士宮市 富士山世界遺産課・伊藤 俊幸 課長:
商店街それぞれのお店の事情ですが、店を閉じるという事態もいくつか散見されています
世界遺産効果は周辺の地元の商店街まで波及していない。市は、グルメマップを作成し、案内所に置くなど、周辺の商店街にも観光客に足を運んでもらう取り組みを進めている。
さらに、現在、浅間大社の隣に民間企業と協力し、くつろげるような施設を建設する予定だ。
観光客の流れを商店街に向けたいと計画し、2024年春のオープンを目指している。
富士宮市 富士山世界遺産課・伊藤 俊幸 課長:
この場所にはベーカリーレストランを計画しています。ここでくつろいでいただく、浅間大社にお参りにきた方に、ここで休みをとっていただいて、そのまま商店街をぐるりとまわってもらう。そんな人の流れが生まれたら良いなと思っています
世界文化遺産登録から10年。まちをさらに発展させるために、その効果をまち全体に波及させることが求められている。