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「保育園に預けてかわいそう」と言われた時代 女性弁護士が願う“支え合い”【テレビ寺子屋】 

子供を保育園に預けたら「かわいそう」と言われた時代を生きてきた、弁護士の住田裕子さん。忙しすぎて育児は丸投げとなり、娘は母の日に祖母の絵を描くほどでしたが、「支え合い」に救われました。

テレビ静岡で放送されたテレビ寺子屋

7月2日にテレビ静岡で放送されたテレビ寺子屋では、弁護士の住田裕子さんが自身のキャリアと子育ての経験から気付いた、日本の保育園の優れた点や、人が見守り合う世の中の大切さについて語りました。

娘は母の日に祖母の絵を描いた

弁護士・住田裕子さん:
私は検事同士で結婚し、子供を保育園に預けました。2、3年で目まぐるしく転勤になり、法務省で国会待機といういつ帰れるか分からない仕事になり、ついにギブアップ。夫の母、おばあちゃんにお願いして母代わりになってもらいました。

そんな生活を送っていたので、娘は母の日に、お母さんの絵を描かずにおばあちゃんの絵を描きました。

高校生くらいになり批判的になったとき、「私は専業主婦になって子供の面倒を見るわ」と言うかと思ったらこう言いました。「今までお母さんのやり方はひどいと思っていた」と。

おばあちゃんに丸投げしていましたからね。「でも今はお母さんのことを尊敬する」と、そんなことを言われたので、私はこの言葉を忘れずにあちこちで言いまくっています。

さらに「私もずっと仕事を続ける。孫の面倒はお母さんちゃんと見てね」と言われ、「よし分かった」という気持ちで約束を守り、今3人の孫の面倒を見ています。

日本の保育園は世界一

私が若い頃は男女雇用機会均等法もなく、バリバリと仕事をしないといけない時代でした。特に女性は早く辞めなさいというプレッシャーが強かったので、残業をいとわずに仕事をするというのが当たり前の仕事のやり方でした。

「保育園に預けてかわいそう」という言葉が時々聞かれた時代です。でも今は、子供が安心して「集団保育」を受けられる日本の保育園は世界一だと思っています。

少子化対策として保育園の無償化は良いことですが、もっともっと大切なのは「みんなで子育てをする意識」です。親だけでも困るし、身内が対応できる場合はそれもいいですが、できれば介護保険が地域ぐるみで対応しているように、保育も地域ぐるみでできる方向に行ってほしいと思っています。

「集団保育」は何が良いかと言うと、次の大切なテーマに関係があります。「人はひとりでは生きていけない」ということです。

人は支え合っています。人間は根源的に集団帰属本能を持っていて、家族と一緒にいたらほっとできる。仲間と一緒にいると楽しくなる。満足感を覚える。「どんな居場所を持てるか」ということが人間にとってとても大切です。

対面で人と接していますか?

お互いに思いやる気持ちという意味での「共感性」が大事で、これは同情心とは違います。さらに「対人関係能力」も大切です。「コミュニケーション能力」とも言います。

コミュニケーションでは発信力ももちろん大事ですが、もっと大事なのは人の話を「聞く力」です。聞いた上でそれに返すというキャッチボールができることが、対人関係能力につながります。

「共感性」・「対人関係能力」を持つには、対面で人と交わることが大切です。「痛いよ」と言ったら「大丈夫?」と手を差し伸べますよね。「痛いの痛いの飛んでけ!」と小さい子に言いますよね。それなんです。

肌で触れ合う対面の中で、言葉、しぐさ、目と目で向き合っていろんな交流をするところから「共感性」は培われ、養われていきます。

子供だけでなく若者だけでなく、高齢者もみんなでいろいろな人を見守って、新しい時代を作っていくためにお手伝いしていただけたらと思います。

住田裕子:兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、検事に。1988年、女性初の法務大臣秘書官となる。1996年、弁護士に転身。テレビ番組などでも活躍。NPO法人長寿安心会の代表も務める。

※この記事は7月2日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。

フジテレビ系列で放送中の番組。「子育てってなんだろう」。その答えは1つではありません。テレビ寺子屋では子育てや家庭のあり方について様々なテーマを元に毎回第一線で活躍する講師を招いてお話を聞きます。