目次
静岡・御前崎市に「小さな魚のプロフェッショナル」と呼ばれる水産会社があります。小さな魚とは、真っ白で美しいシラス。それだけではなく、最近は小さいながらも大きな価値を生む「メダカ」の飼育にも成功しているそうです。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ遠州発祥のシラスの漢字を使うこだわり店

御前崎市で「小さな魚のプロフェッショナル」を探して訪れたのは「御前崎海鮮なぶら市場」です。
市場には新鮮な海の幸からお土産品までショッピングができるお店が並びます。
そんな広い市場の一角で見つけたのが、「ヤマサン藤田水産」の販売コーナーです。

「飛び魚干物(350円)」など、珍しい商品が並びます。
探しているのは“小さな魚”のプロフェッショナル。小さな魚は取り扱っていないか尋ねてみました。
ヤマサン藤田水産・藤田貴史 代表:
本業がシラスの加工なので、そのことだと思います

右)ヤマサン藤田水産・藤田貴史 代表
ショーケースに並ぶシラスのラベルには、見慣れない文字がありました。
漢字一文字、魚へんに氷と書いて、シラスと読ませます。

藤田水産・藤田さん:
遠州発祥のシラスの文字なんですよ。昭和40年頃までシラスを扱っている漁師や加工業者の間でよく使われていたんですが、このまま使わないともう多分消えていく文字だと思うんです。ラベルにしてみようと思って使ってみました
さすがプロフェッショナル。藤田水産のシラスへのこだわりを感じます。

この漢字は、御前崎しらす仲買人組合の印鑑にも使用されています。
真っ白で美しい釜揚げシラス
そんな藤田水産の「自家製 釜あげしらす(100g 500円)」を試食です。
にむらリポーター:
ふっくら! おいしいですね
自家製のシラスは、塩味の中でも甘塩と呼ばれる塩加減です。

藤田さんによると、シラスには5つの評価項目があるそう。鮮度、大きさ、色目、粒ぞろい、そして混ざりものの有無です。
藤田水産・藤田さん:
うちは選別器が製造ラインにあり、異物をとることができるんです
なるほど藤田水産のシラスを見ると、驚くほど真っ白で美しい。
次は店自慢の「自家製 生しらす 冷凍(100g 450円)」も試食。梅酢で食べるのが御前崎流です!

藤田水産・藤田さん:
秋からのシラスは、身がしっかりしていて生シラスに向いています
にむらリポーター:
ぷちぷちで梅酢との相性は抜群です

実はこの日、漁がお休みで提供されたのは冷凍のシラスだったのですが、冷凍とは思えない新鮮さでした。藤田水産は凍結する技術にもこだわっているそうです。
藤田水産・藤田さん:
日本全国のシラス店でも数軒しかない凍結庫を使用しているんです
美しいシラスの秘密は加工場に
百聞は一見にしかずということで、加工場へ案内してもらいました。

まず目に入るのが、特殊な凍結庫です。黒い装置が冷凍スペースの左右に設置されており、これが普通の凍結庫とは違います。
藤田水産・藤田さん:
凍らせる時に細胞の中の水の分子を振動させる装置なんです。100%ではないですけど、細胞壁を壊すことなく凍らせることができるので、解凍した時にドリップが出にくくなり、鮮度を維持できます

CAS(セルアライブシステム)は振動で水分子を整列させ均質状態で一気に凍結します。
これにより、冷凍の生シラスでも鮮度を維持できます。この凍結庫は、県内どころか日本全国のシラス店の中でも数軒しか導入していない特別なものだといいます。

次に案内されたのは、釜あげシラスの選別機です。
真っ白なシラスの秘密は、煮る製造ラインに導入した選別機にありました。シラス以外の異物を取ることができる機械です。
藤田水産・藤田さん:
選別機のコンベアからまた別のコンベアーにシラスを飛ばすんです。下と上にカメラとかセンサーが付いているんですけど、シラス以外の異物を感知して空気(エアガン)を当てて下に落とすんです

この機械も日本で数社しかシラスの加工ラインに組み込んでいないという珍しいもの。
機械選別の後は、人の目で最終チェックして仕上げています。

徹底した品質管理が、あの真っ白で美しいシラスを生み出していました。藤田水産が「小さな魚のプロフェッショナル」と呼ばれる理由です。
小さな魚に大きな夢 メダカの養殖
もう一つ、藤田水産が「小さな魚のプロフェッショナル」と呼ばれる理由が別にあります。
藤田水産・藤田さん:
実は、扱っている小さな魚はシラスだけじゃないんですよ
もう一つの小さな魚を見に案内されたのは、なんとハウスの中です。

そこには、無数の水槽が並んでいます。中をのぞくと、色とりどりの「メダカ」が泳いでいました。
藤田水産・藤田さん:
2年前(2023年)からメダカの養殖をやっています。黒潮の大蛇行が始まってからシラスの水揚げがすごく落ちてしまい、新しい商売を始めないとまずいと思いました。たまたま従業員にメダカに詳しい者がいたので、やってみようかということになりました

現在約50種類、5万匹を養殖しているそうです。中でも珍しい品種を見せてもらいました。
オリジナル品種の「金粉」です。金色にキラキラと輝いていました。

藤田水産 メダカ養殖担当・細田晃樹さん:
金色でフレーミングラメ(うろこの縁が光る特徴)を持ったメダカをイメージして作った品種です
にむらリポーター:
久しぶりにメダカ見ましたけど、ちょっとハマりそう

小さくてかわらしく、見ているだけで癒されます。
一番高級なメダカも聞いてみました。「天界」という種類のメダカは、かつて数十万円したそうです。

藤田水産 メダカ養殖担当・細田さん:
出だしのメダカはやっぱり高くて、何十万円もするのが相場です。一番高い時だともう何百万円というメダカまでありますね
まさに小さな魚に大きな夢がつまっていますね。
シラスへのこだわりから始まり、新たな挑戦としてメダカの養殖へ。小さな魚に情熱を注ぎ続ける藤田水産の取り組みは、伝統の継承と未来への挑戦が見事に融合していました。
■店名 ヤマサン藤田水産 御前崎海鮮なぶら市場店
■住所 静岡県御前崎市港6099-7(御前崎海鮮なぶら市場 海遊館)
■営業時間 9:00~17:00 ※土日祝は8:30~
■定休 火 ※祝日は営業
■問合せ 0548-63-6661
【もっと見る! 御前崎の記事】
