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静岡・御前崎市に、トムとジェリーのように“ねこ”と“ねずみ”が登場する伝説があります。悪役として登場するねずみと、英雄となったねこ。「ねずみ塚」「猫塚」として伝説が継承されていました。
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今回は、御前崎市で語り継がれる「トムとジェリー」のような伝説を調査。ねことねずみが登場するという伝説は、一体どのようなストーリーなのでしょうか。
まずは灯台周辺で情報を集めます。
県外からの観光客:
御前崎は岬なので、陸の方から攻められたら最後は袋のねずみになるな

座布団一枚、と言いたいくらい上手ですが、伝説は知らないそうです。
ただ、御前埼灯台のすぐ近くにある旅館「岬の宿 八潮」に、看板ねこがいるとの情報を観光客からゲットしました。
旅館なら何か知っているかもしれません。

地元ではよく知られた伝説の内容
行ってみるとさっそく、窓際でくつろいでいる看板ねこちゃんを発見。
八潮の女将・松林千鳥さんに話を聞いてみました。

トムとジェリーのような伝説を知りませんか?
岬の宿 八潮・松林千鳥さん:
「猫塚」と「ねずみ塚」ですね
即答でした!
ねことねずみが登場するトムとジェリーのような伝説は、地元ではよく知られた物語とのこと。

江戸時代後期の人気作家、為永春水による「猫の忠義」という短編小説が原型になっています。
岬の宿 八潮・松林千鳥さん:
昔、あるお坊さんが海で溺れているねこを助けたんですね

松林さんによると、御前崎に残るトムとジェリーのような物語はこうです。
住職が溺れたねこを助ける

昔、ある寺のお坊さんが、海でおぼれて流木につかまり流されているねこを助けました。
お寺の住職は助けた三毛ねこをかわいがっていました。
化けねずみから寺を守るねこ
それから十年ぐらいたつと、旅の僧侶に化けたねずみが、お坊さんとお寺を襲いに来ました。
そのとき、ねこは恩返しとして近所のねこと協力して戦いました。

お坊さんは寝ていたので「なにか屋根裏が騒がしい」と思いましたが、気づきません。
朝起きると天井から血が滴っていました。天井裏に登って様子を見ると、ねこもねずみも死んでしまっていました。
ねこはお坊さんを助けた英雄として、猫塚が作られました。
ねずみも改心して守り神に

ねずみは悪者でしたが村人の夢枕に立ち、これからは漁業の安全を守りますと伝えたそうです。
こうしてねずみも海の守り神になり、ねずみ塚ができました。
改心して守り神となった化けねずみ
主役の「猫塚」より、なぜか立派だという「ねずみ塚」のある場所に行ってみます。

御前埼灯台から徒歩3分ほど、眺めの良い遊歩道の途中に「ねずみ塚」はありました。
ねずみ塚と彫られた石柱の上には、石でできたネズミの置物があります。

管理をしている御前崎市役所へ連絡すると、地元の歴史に詳しい齋藤正敏さんが説明に来てくれました。
御前埼灯台を守る会・齋藤正敏 会長:
御前崎は漁師のまちですから、化けねずみは改心して漁業の守り神になりました。ここに来て棒を立てて倒れた方向に船を進めたら、大漁にありつけたという話があります

かつての化けねずみも、今では立派な海の守り神。
漁師がねずみ塚までお参りに来る伝統は、最近でも続いています。
御前崎が全国有数の漁業の街となった裏には、ねずみ塚のご利益があったのかもしれません。

すっかり漁業の守り神として定着したねずみ塚。よく見るとねずみの置物と石柱で石の種類が違います。
というのも、1972年に御前崎市が作った当初は石柱だけでした。

観光地として殺風景だったこともあり、2008年に還暦を迎えたねずみ年生まれの齋藤さんが同級生と協力して、御前崎市にねずみのモニュメントを寄贈したんだとか。

一方で、本来はもっと敬われてもいいはずの猫塚がちょっと残念な状況だったんです。
■スポット名 ねずみ塚
■住所 静岡県御前崎市御前崎44-77
主役なのに目立たない猫塚
齋藤さんの案内で、お坊さんを守った主役の「猫塚」も見に行くことにしました。

歩いていると、猫塚は突然現れました。猫塚があるのは、伝説の舞台となったお寺「遍照院」の跡地。
にむらあつとリポーター:
ちょっと地味というか…

ねこの耳も風化して取れてしまっています。住職を守るため化けねずみと戦ったねこのはずですが、ねずみより影が薄いようです。
1932年につくられたモニュメントなので、無理もありません。
齋藤さん、ぜひ猫塚も盛り上げてください!
御前崎では有名な、ねことねずみが登場するトムとジェリーのような伝説。2匹はけんかをしたものの、今では仲良く御前崎の人々を守っていました。
■スポット名 猫塚
■住所 静岡県御前崎市御前崎21-17
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