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温暖化による海面上昇で、消えてしまうかもしれない国の一つにキリバスがあります。飲み水や漁業・農業などへ、すでに多大な影響が出ていると話すのは、ユニセフアジア親善大使を務めるアグネス・チャンさんです。現状を知り、温暖化を止めることの重要性を訴えました。

テレビ静岡で3月16日に放送されたテレビ寺子屋では、歌手で教育学博士のアグネス・チャンさんが、キリバスで起きている地球温暖化の影響について教えてくれました。
温暖化がもたらすキリバスの悲鳴
歌手・教育学博士・アグネス・チャンさん:
今、温暖化によって海面が上昇しています。一番先に5つの国が沈んでしまうんじゃないかと言われていて、そのひとつにキリバスが入ってるんです。

キリバスは太平洋にある33の島からなる、海に囲まれたとっても美しい国です。ほぼ全部の島がサンゴ礁からできていて細長く面積も小さく、例えば今回私たちが視察に行ったタラワ島は一番狭いところで幅25mです。
島全体でみても一番高いところが海抜3m。あと何十年も経てば沈んでしまうんじゃないかと言われています。

地球温暖化がこのキリバスにとってどういう影響があるか、ちょっとお話ししてみたいと思います。
海水流入で飲み水が不足
まずは「水」です。この島はサンゴ礁でできているため、あまり地下水がありません。

温暖化で気候は変わり、いままでなかった干ばつが起きました。何カ月も雨が降らない。雨が降らないと、地下水の水位が下がる。
そうすると地下水に海の水が侵入してしまい、井戸の水がしょっぱくなって飲めなくなるんです。お金のある人は飲み水を買えばいいんですが、全部輸入で高いんです。お金がない人は買えません。
すみかを変える魚と衰退する漁業

つぎに「漁業」。海域が広い、海が多いというのは財産です。他の国がキリバスの海域に入って漁をするときはお金を払わなければなりません。
ここで捕れる魚を好む国は、その権利を買っていました。でも魚は移住しました、違うところに行っちゃったんですよ。もうこの海域では取れない。日本もドイツもEUも撤退しました。それも結局、温暖化のせいじゃないかと言われています。
援助ありきで見えない未来

そして「農業」の面でいうと、この島ではあまり農作物は作れないんです。なぜかというと島は珊瑚礁でできていて砂ですから、土がないわけなんです。雨も少ない。唯一できるものといえばココナッツとイモ類くらいです。野菜は輸入品なので、やはり高くて島の人たちはあまり食べられません。
では国はどうやってお金集めるのか?
今は海外の援助に頼っているけれど、こんな状況では未来が見えません。

ごみで家を守る貧困層
私は現地の学校に行って、子供たちに何が一番怖いか聞きました。すると「風と水が怖い」と答えました。
高潮が来ると、海辺の家や店は流されてしまいます。お金のあるところだったらコンクリートの堤防を作れますが、彼らはお金がないから国から袋をもらうんです。そこに砂を詰めて、自分の家の前に置いて水を防ぎます。

ただし、その袋も皆もらえるわけじゃありません。そこで、みんなゴミを集めて自分の家の前に積んでおくんです。正直なところ不衛生です、流れ出て海も汚れてしまいます。でも、ほかに方法がないと言うんです。
愛する国を未来に残すために
このような環境で生活していかなければいけないのがキリバスの現状です。
それでもみんな、国を愛していて離れたくないと言います。
「家族が好き。地域が好き。でも国が沈むから、たとえ結婚しても子供を産んじゃいけないかなって思いました。もう未来がないかな…」とある若者は言いました。

島では今、小学校4年生から温暖化について勉強することが義務になりました。キリバスの文化をなくさないように、国をなくさないようにと頑張っているんです。
彼らの国がなくならないために、私たちはより知識を得てこの温暖化を止めなきゃいけないと本当に強く思いました。

アグネス・チャン:香港生まれ。1972年「ひなげしの花」で日本デビュー。上智大学、トロント大学を経て米国スタンフォード大学へ。現在、歌手活動のほか、ユニセフアジア親善大使、日本対がん協会「ほほえみ大使」などとして活躍。
※この記事は3月16日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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