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社員食堂に“アマモ”? 車載バッテリーメーカーが「海のゆりかご」の危機に立ち上がる【浜名湖】

静岡・湖西市に本社がある車載バッテリーメーカー「トヨタバッテリー」の社員食堂には、「アマモの水槽」があります。バッテリーとは関係がない、海草のアマモです。1日約1000人が利用する食堂にアマモ水槽を置いたのは、アマモの減少が深刻な浜名湖のほとりで操業する企業として、地域と共にこの危機に向き合おうという新たな挑戦でした。

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敷地に希少生物が暮らす バッテリーメーカー

トヨタバッテリー本社・大森工場(画像提供:トヨタバッテリー)
トヨタバッテリー本社・大森工場(画像提供:トヨタバッテリー)

トヨタバッテリーは1996年に創業して以来、累計約3000万台分の車載用バッテリーを生産し販売してきました。電気自動車やハイブリッド車の需要が高まる中、順調に拡大を続けている企業です。

そんなトヨタバッテリーが掲げるSDGs宣言は「ブルブルしよう」。

「全社一丸でサステナブル、そうすればなんだってポッシブル。」

2つのブルでブルブル! 楽しくSDGsに取り組んでいる雰囲気が伝わってきませんか。

敷地内にあるビオトープ(画像提供:トヨタバッテリー)
本社・大森工場の敷地にあるビオトープ
(画像提供:トヨタバッテリー)

環境にやさしい製品の開発や、サステナブルな職場づくりだけでなく、周辺環境にも目を向けていて、本社・大森工場にはビオトープや林があります。

ビオトープでは池の中で暮らす「ホトケドジョウ」や、東海地方の固有植物「イワタカンアオイ」などの希少生物が見られるそうです。

約1000人が集まる社員食堂にアマモ水槽

本社・大森工場の社員食堂に2月、「アマモ」の水槽が設置されました。

約1000人が行き交う場所にあるので、準備の段階からすでに多くの社員が興味津々だったそうです。

社員食堂のアマモ水槽
社員食堂の最も目立つところにあるアマモ水槽

アマモ水槽とは、どんなものなのでしょうか。

アマモは浅い海に生える海草の一種で、トヨタバッテリーがある湖西市に面した浜名湖にもアマモが生えています。

アマモは、ほかの水中生物にとって隠れ家となったり栄養分となったりする、非常に重要な海草です。

水槽の中にいるさまざまな生物
緑の細長い海草がアマモ
中央)タカノハダイ 右)アミメハギ

浜名湖の環境を再現したこの水槽には、アマモだけではなく、実際に浜名湖に住むアミメハギ・タカノハダイが気持ちよさそうに泳ぎ、ヤドカリが砂の上を歩いていました。

水槽のとなりには、アマモの生態について説明するパネルが設置されています。そこにはこう記されていました。

「大森/新居工場は処理排水を浜名湖に流しています。少なからず浜名湖に影響を与える企業の責任として浜名湖保全に取り組む必要があります」

アマモの生態について、SDGs関連の活動への取り組みについて記載されたパネル

浜名湖のアマモがいま危機に

アマモなどの水中植物が、畑のようにたくさん生えている場所を「藻場(もば)」といいます。

生態系を維持するために欠かせない重要な場所なので、「海のゆりかご」とも呼ばれます。

海のゆりかご「アマモ」

しかし今では浜名湖をはじめ、全国的にアマモの藻場が減少しています。アマモをすみかにしていた生き物たちが姿を消し、漁業にも影響が発生しています。

大切なアマモをなんとかしなければと、浜名湖の漁師や有識者をはじめ多くの仲間が集い、2023年に「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」が立ち上がりました。

浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト「浜名湖アマモ探検隊」

トヨタバッテリーもその一員として、アマモの育成や啓発活動に取り組んでいます。

2024年12月には「浜名湖アマモを育てる大実験」の看板設置に協賛。浜名湖体験学習施設ウォットにある大型水槽でアマモを増やし、浜名湖へ植え戻す一大プロジェクトです。

大型水槽の看板お披露目
ウォットで行われたアマモ実験水槽看板の除幕式
(画像提供:トヨタバッテリー)

看板にはアマモが減った原因や大実験の目的などが分かりやすく記載されており、看板の木枠は廃材を再利用して造られました。

また子供から大人まで、アマモや浜名湖の環境について知ってもらうため、2024年9月にトヨタバッテリーと浜名湖ワンダーレイク・プロジェクトで「浜名湖アマモ探検隊」を共催しました。

お披露目された看板
大型水槽のそばにある看板

社員食堂のアマモ水槽も、浜名湖ワンダーレイク・プロジェクトの活動の一環です。

車載バッテリーメーカーがなぜアマモ?

トヨタバッテリーで浜名湖の保全活動を担当しているのは、経営戦略室 SDGs企画推進グループの鮫島直斗さんと、管理部渉外グループの足立明論さんです。

アマモ水槽に関わる2人の社員
左)管理部渉外グループ 足立明論さん
右)経営戦略室 SDGs企画推進グループ 鮫島直斗さん

トヨタバッテリー SDGs企画推進グループ・鮫島直斗さん:
ネイチャーポジティブ(自然再興)に向けて、何かできることはないか模索していたところ、インターネットで浜名湖ワンダーレイク・プロジェクトの存在を知りました。問い合わせると有識者会議に誘われ、そこでアマモが減少していることや、アサリの漁獲量が減少していることを知り、取り組むきっかけになりました

アマモ実験水槽 看板除幕式
(画像提供:トヨタバッテリー)

SDGsを行っているように見せかける“SDGsウォッシュ”という言葉があります。鮫島さんと足立さんは決してそのような状態にしないためにも、まずはアマモの存在を社員に周知し、企業全体で問題を共有しようと考えました。

管理部渉外グループ・足立明論さん:
社員に活動に参加してもらうのが一番ですが限界があります。そこでほとんどの社員が毎日のように集まる社員食堂に、アマモの水槽を設置して実際に見てもらえばいいのではと考えたのです。アマモが育つと、こんなにきれいで頼もしくなるんだと知ってもらいたいです。あとは、美しいアマモに癒されてほしいとも思います

アマモ水槽の設置・管理は浜名湖体験学習施設ウォットの職員が

実際に足を止めて水槽をじっと見たり、看板を真剣に読んだりする社員の姿を見かけ、足立さんは「かなり狙い通りの結果になった」とうれしそうに語ってくれました。

足立さんお手製の解説カードも好評で、生き物に楽しく興味を持ってもらうための工夫を凝らしています。

足立さんお手製の解説カード

アマモ水槽を見た社員:
アマモの存在は知らなかったのですが、水槽で初めて名前を知りました。工場の排水が浜名湖の水に影響を与えているかもしれないので、環境保全についてできることがないか常に考えていきたいです

製品を製造するには、大量の水が必要です。トヨタバッテリーは水という貴重な資源を使わせてもらっている責任から、企業として浜名湖の保全活動に携わり、かつての生態系を取りもどそうとしています。

アマモ再生を技術・物資面でも支援へ

さらに2025年度は、バッテリーメーカーだからこそできる支援も考えています。

トヨタバッテリー・ 鮫島 直斗さん:
浜名湖ワンダーレイクプロジェクトでは、アマモの育成状況を水中ドローンなどで調査する手法が検討されています。そうした調査に我々のバッテリーを提供して、貢献できればと考えています

他にもアマモの大型水槽にバッテリー駆動の水流装置を設置し、生育を促進する計画もあります。

トヨタバッテリー(旧プライムアースEVエナジー)で浜名湖の海浜清掃
(画像提供:トヨタバッテリー)

環境の保全活動は、活動団体および一つの企業だけではできることに限界があります。鮫島さんはトヨタバッテリーの活動がきっかけで、参加企業が増えたらうれしいと語ってくれました。

社員食堂というみんなの目に触れる場所にアマモ水槽を設置することで、環境問題が「遠い話」から「自分たちの問題」へと変わります。浜名湖の未来を守る取り組みが、さらに多くの企業や市民を巻き込む大きな波となることを願っています。

アマモに隠れる小さな魚

【公式サイト】「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」はこちら

「アマモ水槽」は、浜名湖で近年問題となっているアマモの減少を食い止めるために、周辺で暮らす人たちが力を合わせてできることに挑戦しようと立ち上がった「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」の一環です。次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる日本財団「海と日本プロジェクト」の支援で行われました。

sponsored by 一般社団法人 静岡UP

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