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【浜名湖】急減危機「アマモ」採取のため潜ってみた! 育てて湖に戻す試みが始動

“海のゆりかご”と呼ばれる海草「アマモ」が減り、浜名湖の生態系が危機に迫っています。アマモを増やし、もとの生態系を復活させるため、アマモの苗を採取するプロジェクトに密着しました。苗から種を採取し、より強い苗を育て湖に戻すのがねらいです。

「アマモ」とは?

アマモは比較的浅い場所の水底から生えており、他の水中生物にとって隠れ家となったり栄養分となったりする、とても重要な海草です。

アマモなどの水中植物が、畑のようにたくさん生えている場所を「藻場(もば)」といい、生態系を維持するために非常に大切な場所です。

しかし、全国的に藻場の減少が深刻化しており、昔は当たり前にいたはずの生き物が見られなくなったり、漁獲量が大幅に減ったり、大きな影響が出始めています。

「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」とは?

浜名湖の生態系に異常事態が起きていることを目の当たりにした浜名湖の漁師・徳増隆二さんは、2018年からアマモの減少について、ひとり調査を始めました。

そこから、多くの仲間や協賛者が集まり、浜名湖にアマモの藻場を取り戻す活動が本格化。

2023年、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐため「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」が立ち上がりました。

アマモの種まきを子供に教える徳増隆二さん

何年、何十年かかると思われる一大プロジェクトであり、浜名湖のアマモの定点調査や、小学校と連携した「アマモの再生教室」など、藻場を増やす活動だけでなく浜名湖の生態系の実態を広めるため、数々のワークショップも行っています。

【公式サイト】「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」はこちら

実際に潜って「アマモ」のサンプルを採取してみた

今回はアマモのサンプル採取に同行し、実際に浜名湖へ潜って湖の中の様子を観察しました。

湖西市にある新居漁港からボートに乗って約15分後、第1のポイントに到着。

小型漁船で採取ポイントへ

空気が入ったタンクを背負って湖へ。

水中は、藻やプランクトンなどでやや緑色でしたが、水底は比較的きれいでした。水深は約5mと浅めで、ところどころにアマモが生えていました。

一つ目のポイント アマモが点在していました

一つ目のポイントではアマモがやや少なく、何となくもの寂しさを感じました。「イトアオサ」というオゴノリに似た藻がたくさん生えており、これらが生えているとアマモの成長を阻害するため、育ちにくいのだそうです。

一方で二つ目のポイントではアマモがたくさん生えており、浜名湖全域においてアマモが減少しているわけではないことが分かりました。

四つ目のポイントもアマモが茂っていた

このポイントのアマモは背丈が高く、まるで林の中を潜っているようです。

浜名湖に住む生き物も観察できました。ナメクジに似た「ウミフクロウ」や貝の仲間たちがゆったりと動いています。

浜名湖に住む「ウミフクロウ」

そして湖底に沈んでいる岩の表面には、まれに「ホウキムシ」というタンポポの綿毛のような、白く美しい生き物が観察できました。

綿毛のように見えるのは「せん毛」で、水中にいるプランクトンをとって食べます。

岩の表面にくっついて生きている「ホウキムシ」

今回の調査では浜名湖の4カ所のポイントを潜り、アマモが生えていたら1カ所につき20本ずつ採取して、サンプルとして持ち帰ります。

サンプルを採取するメンバーの笹浪知宏教授

持ち帰ったサンプルは、アマモを増やすための研究にも使います。研究を率いる静岡大学農学部の笹浪知宏教授に聞きました。

静岡大学・笹浪知宏 教授:
採取したアマモのサンプルは研究所に持ち帰ります。アマモを細かくすりつぶして試験管に入れ、DNAを抽出します。割り出したDNAは、浜名湖で繁殖してくれる強いアマモの苗を作るための手がかりになるのです

四つ目のポイント 岸に沿って生えるアマモの草原

浜名湖は、急にアマモが生え始めたポイントもあります。

四つ目に確認したポイントは、これまでの3つのポイントとは比べ物にならないほど大量のアマモが生えており、まるで“アマモの草原”でした。

ボートから降りて水中を確認しようと試みても、アマモが生い茂っているためアマモ以外の景色や状態が分かりません。これほどまでに生えていたならば、生き物たちも隠れやすく暮らしやすいでしょう。

採取したアマモ

ボートを出してくれた浜名漁協 SDGsアマモ再生事業部の山田祐己さんは、遊漁船やえびすき漁も行っています。アマモの減少が、浜名湖の漁に及ぼす影響を日々感じていました。

浜名漁協 SDGsアマモ再生事業部・山田祐己 副会長
浜名湖にはいろいろな種類の漁がありますが、中でも際立って影響を受けたのは、浜名湖の漁師の土台ともなっていた「アサリ漁」です。8年程前から漁獲量が減少していったのと同時に、アマモの量も減少していたことに気づきました。今ではアサリ漁全盛期と比較すると、1人分の水揚げは5分の1以下、中にはここ数年アサリ漁に出ていない漁師もいる程です

浜名漁協SDGsアマモ再生事業部・副会長の山田祐己さん

浜名湖は、海水と淡水が入り混じった汽水湖です。そのため各ポイントでは独特な生態系が構築されており、生息している生き物の種類も大変豊富。また漁で採れる水産資源も豊かで、浜名湖で養殖されたカキはブランド化しており、通常のカキよりもミネラルが豊富かつ身が大きいため、とても人気が高いのです。

浜名湖に設置されているカキとワカメの養殖用いけす

水槽で強化アマモを育成

採取したアマモの一部は、後日、浜松市西区にある浜名湖体験学習施設ウォットの水槽に植え付けました。1年かけて種を採取し、その種から育てた苗を浜名湖に戻す計画です。

水槽には浜名湖の水を引き込み、小魚など水中生物も入れます。

異なるポイントで採取したアマモを同じ水槽の中で育てることで、交配し、より強いアマモにすることが狙いです。

水槽の中にアマモを移植(浜名湖体験学習施設ウォット)

今回の調査に同行し、浜名湖の生態系や水産資源を守るため、多くの人が膨大な年月をかけて研究や調査を重ね、努力してきたことを実感しました。

いつか浜名湖に昔と同じようなアマモ場を復活させられるよう、私たちもまずは「アマモ」に興味を持ち、知ることからはじめてはいかがでしょうか。

アマモの採取に向かう舟 左)筆者

アマモの採取は、浜名湖で近年問題となっているアマモの減少を食い止めるために、周辺で暮らす人たちが力を合わせてできることに挑戦しようと立ち上がった「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」の一環です。次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる日本財団「海と日本プロジェクト」の支援で行われました。

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