お平パンふたつ
見つけた

【浜名区・三ヶ日製菓】浜松特有 葬式の引き出物「お平パン」 83年続く和菓子店で“誕生の秘密”調査

お葬式の引き出物といえば、一般的にはお茶やタオルが思い浮かびます。でも浜松市には、一風変わった葬式の引き出物「お平パン」があるといいます。人々に受け継がれてきた「お平パン」を調査します。

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街頭で聞いた「ヒラパン」のうわさ

まずは街頭で葬式の引き出物について聞き込みを開始しましたが、人々の答えは、「特に変わったものはない」という声ばかり。

インタビューに答える女性
聞き込みにも「思い当たることはない」

うわさは幻か。

気を取り直して聞き込みを続けていると、ようやく手がかりとなる話を聞くことができました。

地元の人:
(お葬式の引き出物に)楕円形の硬めのパンが入ってくるところもある。何パンだったかは覚えていないけど

インタビューに答える女性
市民に手がかりを聞くにむらリポーター

地元の人:
ヒラパンと言ったね。あれおいしいよね。おやつに食べてもいいくらい

別の人:
ああ、おひらっていうやつ? ちょっと甘みのついた硬いパン

「ヒラパン」「おひら」などのキーワードを聞くことができました。

インタビューに答える母子
浜松市民には当たり前のものだった?

多くの人が「当たり前すぎて最初に思い浮かばなかった」と言うほど、浜松ではなじみ深い存在のようです。

どうやら引き出物の正体は、甘くて硬く平べったい形状で「ひらぱん」や「おひら」と呼ばれるお菓子であることがわかってきました。

図書館で見つけた決定的な情報

さらなる情報を求めて、にむらあつとリポーターが浜松市立中央図書館へ。

にむらリポーターが、「和菓子をつくる」という本に決定的な記述を発見しました。

本を持つにむらリポーター
絶対ウソです

そこには「仏事のオヒラ」という説明文とともに写真が。街の人たちが教えてくれた形と一緒です。

さらに「オヒラパンあるいはカタパンという葬式の引き出物が、第二次世界大戦以前から、浜松市内から磐田市にありました。」と書かれていました。

街の人(右下)が教えてくれた形そっくり
「和菓子をつくる」より

本の中には聞きなれない言葉が載っていました。

オヒラパンの名の通り、これもヒリューズをかたどっています。

本を読み上げるにむらリポーター
“ヒリューズ”って何?



ヒリューズとは何か? 新たな謎が生まれました。

■スポット名 浜松市立中央図書館 
■住所 浜松市中央区松城町214-21
■問合せ 053-456-0234

83年続く和菓子店「三ヶ日製菓」を訪問

三ヶ日製菓外観
三ヶ日製菓(浜松市浜名区三ヶ日町三ヶ日)

このお菓子を販売するお店が浜名湖近くにあるという情報を得て、創業83年の和菓子の老舗「三ヶ日製菓」を訪れました。

実際に見せてもらうと楕円形で平たく、かなり硬い手触り。商品名は「お平パン」ですが、「ヒラパン」「カタパン」「草履パン」と、呼び名はいろいろあるようです。

たくさん並んだお平パン

現在、三ヶ日製菓のお平パンは1枚220円で販売しています。

三ヶ日製菓2代目・伊藤公夫さんに話を聞くと、確かに葬式の引き出物として使われているとのこと。

「お平パン」を見せる三ヶ日製菓 2代目・伊藤公夫さん

三ヶ日製菓 2代目・伊藤公夫さん
(お平パンは)私の生まれる前からありました

パンの生地を伸ばして「抜型」で抜いていくのですが、その抜型の形もレシピも、創業以来変わっていないそうです。

新旧の抜型
パンの生地を抜く「抜型」の形もレシピも創業当時のまま

お平パンの誕生秘話

では、なぜこのお菓子が葬式の引き出物になったのでしょうか。

伊藤さんによると、その理由は昭和の時代にさかのぼります。

伊藤さんから謎のコトバ「ヒリューズ」が!

三ヶ日製菓 2代目・伊藤公夫さん
昭和20年代は、お葬式など冠婚葬祭が賑やかに行われていました。親戚などが集まって、ごちそうを食べていたようです。“ヒリューズ”という油揚げみたいなもの、重いお揚げのようなものが出てきました

ちょっと待ってください、 ヒリューズが出てきました!

先ほどの文献に出ていた謎のコトバ“ヒリューズ”とは、「飛竜頭(ひりゅうず)」のことです。飛竜頭は仏事の宴席で出されていた料理(がんもどき)のことでした。

飛竜頭は「おひら」という食器に盛り付けられていました。

オヒラに盛り付けられた飛竜頭
器「おひら」に盛り付けられた「ヒリューズ」

しかし、時代とともに宴席の時間は短くなり、参加する人も少なくなっていきました。料理を持ち帰る人も増え、傷みやすいという問題も。

三ヶ日製菓 2代目・伊藤公夫さん
冷蔵庫もない時代、「何とかならんもんかな」とウチのオヤジが軽くて日持ちするものとしてお平パンを出したら、結構ヒットしたそうです

お平パンのアップ画像
お平パン(1枚 220円)

(再び)ちょっと待ってください! そもそもお平パンを作ったのは、伊藤公夫さんのお父さんということですか。

三ヶ日製菓 2代目・伊藤公夫さん
自分ではそうだと思ってますけどね

笑顔の2代目・伊藤公夫さん
三ヶ日製菓が「元祖・お平パン」

お平パンの形は、かつて出されていた飛竜頭=がんもどきを模していました。

このお平パン、引き出物としては2枚1組で配られます。

なぜ2枚1組なのかは伊藤さんもよくわからないそうですが、天国に行く為の“草履”になんで2枚1組セットだと言う人もいるそうです。

ご存じの方は教えてください!

受け継がれる遠州の伝統

時代とともに変化する葬儀の形式。

しかし、浜松では「お平パン」という形で、古くからの伝統が今も受け継がれています。

手を振るにむらリポーターと2代目・伊藤公夫さん
味わってみてください!

甘くて硬い一風変わったこのお菓子。浜松を訪れた際は、ぜひ一度味わってみてください。

■店名 三ヶ日製菓
■住所 浜松市浜名区三ヶ日町三ヶ日745
■営業時間 8:30~17:00
■定休 月
■問合せ 053-524-0018

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