目次
子供の変わった“こだわり”を否定する前に、少し考えてみてください。大量の消しゴムのかすを集める男の子。悩んだ母親は相談しますが、かけられた言葉は「おめでとう」でした。子供が感動できることを見つけられているからです。
4月16日にテレビ静岡で放送されたテレビ寺子屋では、思考力を重視する「花まる学習会」の代表、高濱正伸さんが、“こだわり”のとらえ方について話しました。
シンプルに「感動」を見つけて
花まる学習会代表・高濱正伸さん:
誰もが「こだわり」を持って生きています。いまの世の中は点数や偏差値に縛られてしまいがちですが、自分のこころを見て「自分が感動すること」をしっかり確認したうえでやるべきことを選んで欲しいと思います。
心を見つめることはとてもシンプルです。例えば、「おじいさんが立ち上がるのを手伝ってあげて『ありがとう』の言葉と笑顔に幸せを感じたから介護の仕事を目指したい。そのための進路を選ぶ」という様なことです。
子供の消しかす集めに悩む母に「おめでとう」
ある時、男の子の母親が相談に来ました。とても悩んでいる様子で、3つの缶を持っています。
缶の中には「消しゴムのかす」がびっしり入っていました。その男の子は、消しゴムのかすを集めるのが楽しくて仕方がないのです。
私はその母親に「おめでとうございます」と言いました。男の子が心から好きなことをやれている状態だからです。
ワクワクを大切にして育つことは大事です。それを「汚いから」「ゴミだから」など親の都合や価値観で禁止してしまうと、自分の心を失ったまま人生を歩いていくことにつながります。
やらされる人
人生には4つの「こだわり」の落とし穴があります。
一つ目は「やらされ」。小さい頃から「〇〇しなさい」と言われ続けていると「やらされ感」がしみ込んでしまいます。自分がやりたいことではなく「やらなければならない」からしっかりとやっている人は、ある意味、入試には強いかもしれません。
しかし自分の人生を豊かに生きていくためには「自分で決めること」が大切です。遊び上手な子は、自分の中でルールを決めてゲーム感覚で楽しくすることができます。
比較する人
二つ目は「比較」。常に誰かと比べて自分の足りないことを嘆いてばかりいても進歩はありません。しかし「比較する」という癖やこだわりも人間の本質的なものでなかなか抜けません。
そんな時は、きのうの自分ときょうの自分を比べてみてください。例えば「計算問題を解くスピードが速くなった」自分と競うことで伸びていきます。与えられた環境の中で自分自身を楽しむことが大切です。
人目を気にする人
三つ目は「人目」です。人目を気にしてしまうことは多いと思います。
講演会の質疑応答ではなかなか手が上がりません。みなさん「変なことをいうと笑われるかもしれない…」と自分の殻に閉じこもってしまいます。自分の心を見つめて勇気を持って行動してください。
コンプレックスがある人
最後に、「コンプレックス」。自分に自信が持てないと「自己評価の低さ」というこだわりから抜け出せなくなってしまいます。これは悪い魔法のようなもので、一度かかるとなかなか解けません。
それと反対の良い魔法が「自信」です。自分や周りの人たちに「自信の魔法」をかけましょう。成功体験のエピソードを見逃さないことが自信につながります。
日記をつけて正しく見る力を養う
実際にうまくいかないことや不安になることもあると思います。そんなとき、私は日記を大事にしています。自分の心を見つめながら日記をつけると弱い自分、嫉妬深い自分、いやらしい自分が見えてきます。
それを客観的にとらえることで「自分らしさ」を出せるようになります。自分を、そして社会を「正しく見る力」を培って困難をしなやかに乗り越えていってください。
高濱正伸:1959年熊本県生まれ。東京大学・同大学大学院卒業。1993年思考力などを重視した「花まる学習会」を設立。その後本格的な学習方法を伝授する「スクールFC」を設立。子供の「生き抜く力」を育てることを重視した教育が好評。
※この記事は4月16日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。