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静岡県の大井川に面した島田市には洪水から守るため街の人たちが手作りした石垣がある。日本と同じように台風や地震が多い台湾の学生が、防災をテーマにした交流で静岡県を訪れた。住民の防災意識から防災食の味まで、情報交換は互いの刺激になったようだ。
地震と台風が多い共通点
台湾は日本と同じように地震が多く、たびたび台風などの水害にも見舞われている。
1999年9月にはマグニチュード7.6の大地震が襲い2400人以上が命を落とした。
台湾の学生たちは静岡県の防災の取り組みに関心を持ち学ぶためやってきた。2024年1月、静岡県島田市を訪れたのは高校生や大学生など35人だ。
台湾の高校生は「災害時の情報伝達の方法や政府の対応など、災害から守るための知識や日本の文化を学びたい」「日本の学生が防災についてどんなことを考えているか、災害に時にどう対応するか知りたい」など訪日の目的を話す。
防災をきかっけに若い世代が交流
交流のきっかけは県立島田商業高校など県内3校の高校生が2023年8月に台湾で行った防災学習だ。
静岡県から参加した高校生は台湾の人たちの防災意識の高さを実感したという。
台湾では小学校で災害についての講座が開かれていて、地域の人も多く来ていたそうだ。
参加した高校生は「日本で開かれても来る人は少ないと思う」と、防災意識の高さを実感した理由を話す。
自治体同士の交流だけでなく、こうした若い世代の交流が台湾政府に評価され、学生たちの来日が実現した。
静岡県地域外交課・牧田千江美さん:
きっかけは防災ですが、若い世代に台湾と日本との交流の懸け橋になってくれるような、お互いの事をより知ってもらって、今後の未来につながっていくような交流になっていけばいいなと思います
街を自分たちの手で守った歴史
この日、まず訪れたのは1000年以上の歴史があるとされる大井神社だ。大井川の洪水によって神社の場所がたびたび移されてきた。
講師として招かれた静岡大学の山本隆太 教授は、島田市は洪水が多く、これまでに何度も被害を受けて街の形が変わってきたことを紹介した。
そして、洪水に悩まされる中、島田の人たちは住宅や田畑を守るために、仕事を終えたあとに大井川の石を運び石垣を作ったことを説明した。
静岡大学・山本隆太 教授:
江戸時代にこの町に住む大井川の川越稼業の人たちが毎日の仕事をした後、帰る際に川の石をちょっとずつ持って帰ってきて、ここに積んで、この土手(堤)の石垣を築きました。島田の人たちは、こうして自分たちの町を自分たちの手で土手を作って守ってきたという歴史があります
山本教授の説明の後、静岡県の高校生たちも台湾の高校生の質問に答えながら、「この石垣は昔の水害から守るために作られた」「川の石をここに積み重ねて洪水を防いだ」「街を守っている石」など石垣が運ばれた目的や経緯を伝えていた。
台湾の学生たちは市内をめぐり、大井川の洪水とともに街を発展させてきた島田市の歴史を学んだ。
防災食にも文化の違いが…
このあと、台湾の学生たちは避難所に指定されている島田商業高校を訪れた。
静岡県の高校生が「避難所に指定されているにも関わらず、初めて来た人がわかりづらい凹凸があり、避難の時は焦っているのでころんでしまう可能性がある」など、避難所として適切か自分たちで点検して気づいたことを紹介した。
そして、台湾と日本の防災食を食べ比べ、文化の違いを実感した。
静岡県の高校生は台湾の防災食について「食べられるかなと思うけど、好んで食べるのは難しいかもしれない」と話し、一方、台湾の高校生は日本の防災食について「種類が多い。台湾より品物が多くて、違う目的で違う食べ物の種類を用意している」と感想を述べた。
エネルギー補給に重点を置く文化と食べやすさや種類の多さにも配慮する文化の違いだろうか。
最後に、日本の高校生が発案した災害を表すカードを使いジェスチャーなどで災害時に取るべき行動を伝える防災ゲームを楽しんだ。
台湾の高校生は「すごくよかった、台湾でもやってみたい。台湾ではもっと簡単なゲームで防災意識を向上させるものがあるが、日本の方がいいと思う」と日本のゲームが参考になったようだ。
交流を終えた静岡県の高校生は「台湾は台風が多く、自然災害でかなり防災の知識を深めていると聞いた。僕らも台風、津波、地震などに常に備えて、防災知識を活かせるような学生や社会人になりたい」「(言葉の)壁があっても防災に取り組む気持ちは一緒だから、国を超えてでも同じ気持ちになれると思った」など刺激を受けたようだ。
台湾の学生と静岡県の高校生との防災を通じた交流は今後も続けられる予定で、学生目線で見えてきたものが一人一人の命を守る行動につながるはずだ。
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