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“夢の超高速鉄道”といわれるリニア中央新幹線だが、静岡県が工事の着手を認めていないため開業時期は見通せていない。こうした中、JR東海の丹羽俊介 社長が就任後初めてテレビ局の単独インタビューに応じた。
生態系の報告書案まとまるも県は猛反発
リニア中央新幹線の工事に伴う大井川の水資源への影響と共に静岡県が懸念しているのが南アルプスに生息する動植物への影響だ。
国交省が設置した有識者会議では水資源への影響に関する報告書が2020年12月にまとまったことから、メンバーを入れ替え2021年6月から南アルプスの生態系への影響に関する議論が全14回にわたって行われた。
県など関係者へのヒアリングを経て、論点を「トンネル掘削に伴う地下水位変化による沢の水生生物等への影響と対策」「トンネル掘削に伴う地下水位変化による高標高部の植生への影響と対策」「地上部分の改変箇所における環境への影響と対策」の3つに絞り、報告書案がほぼまとまった。
報告書案では、JR東海の責任を明文化した上で、更なる調査や検討の実施を促したものの、3つの論点に対してJR東海が示した対策案についてはいずれも「JR東海の進め方は適切であると判断できる」と“お墨付き”を与える文言が並んだ。
最終的な報告書の取りまとめは座長に一任されることとなったが、骨子の大幅な変更はなく細かな表現の修正に留まると見られている。
だが、これに対して静岡県は「対話が進まなかった課題、解決されていないものがあるという認識でいる」と不満を口にし、川勝知事に至っては「有識者会議の議論は尊重するが『それに従う』と一度も言ったことはない」と不穏な発言をしていて、静岡工区の着工はいまだ見通せていない。
JRとしてやるべきことは変わらず
-生態系に関わる報告書案がほぼまとまったことへの受け止めは
JR東海・丹羽俊介 社長:
当社は有識者会議の中で委員の方々から大変多くの有益な助言を得た。この助言を踏まえ今後環境保全のために取り組んでいく内容をまとめたわけだが、大変充実した中身になった。中村座長をはじめとする委員の方々には大変尽力してもらい、改めてお礼を申し上げたい。
今後、この有識者会議の報告書がまとまれば、内容を踏まえて環境保全に関する課題の解決に向け静岡県・静岡市をはじめとする関係者と双方向のコミュニケーションを図りながら当社が行うべき環境保全措置やモニタリングなどに、しっかりと取り組んでいきたい。
-報告書案に示された「JR東海の進め方は適切であると判断できる」という表現への受け止めは
JR東海・丹羽俊介 社長:
大変ありがたいことだと思っている。環境保全に関する有識者会議は14回開催されているが、回数もそうだし、中身についても非常に精緻で内容の濃い検証が行われた。
その中で、「こんな方法だとより効果的なのではないか」「こういうところを調べる必要があるのではないか」という意見や提言をもらい、私どもはそれを踏まえて対策を充実させる、モニタリングなどをより充実した形にしていくというプロセスを踏むことが出来た。そういったことも含めて評価してもらうことが出来たのではないかと思う。
水も生態系も優劣つけることなく大切に
-生態系への対応は水資源への対応より難しいという認識か
JR東海・丹羽俊介 社長:
水資源への対応、生態系への対応、共に簡単なことではないと思っている。これをどのように対策していくのか、どのようなことをやっていくべきなのかという道標となるのが科学的・工学的な検証だと考えている。
有識者会議で専門家が客観的で精緻な詳細にわたる議論をし、しっかりと検証してもらったというのは我々にとってありがたいことであり、心強いこと。
これをしっかり踏まえて、共に難しい課題ではあるが、我々としてやるべきことをしっかり取り組んでいきたい。
-今後、水資源と生態系への課題についてどのように対応していくか
JR東海・丹羽俊介 社長:
基本となるのは地域の方々との双方向のコミュニケーション。これが大事だと思っている。
水資源の問題については有識者会議での科学的・工学的な議論の結果、報告が出されているわけだが、これをしっかり伝えていくことが大事。
また田代ダム案の実現に向けて作業をしているところではあるが、これについても地域の方々と対話をしながら進めてきたつもりだし、繰り返していかなければいけないと考えている。
環境保全についても、14回の有識者会議で報告書案が大筋で了承され座長預かりとなったわけだが、報告書案がまとまれば内容を踏まえて当社が課題解決に向けて取り組んでいく。そのプロセスにおいても静岡県・静岡市などの関係者とコミュニケーションを図りながらということが大事になってくると思う。
いずれにしても様々な課題はあるが、これまでも地道に対策を作り、地域の方々から理解を得るためにコミュニケーションに取り組んできたので、しっかりと継続していきたい。
実は静岡県生まれ…思い入れも深く
-母方の実家がある静岡県で生まれ、静岡での赴任経験もある中で、静岡への思いは
JR東海・丹羽俊介 社長:
静岡県には大変縁があり、私の母が静岡県出身で里帰り出産ということで、静岡県で生まれた。また妻も静岡県出身なので、親戚もたくさん静岡県に住んでいる。
さらに静岡市にある静岡支社に勤務していたこともあるので、静岡に住んでいたこともあり、静岡には馴染みの方がいる。
そういったこともあり個人的にも縁を感じ思い入れも深いわけだが、もちろん静岡県だけではなく東海道新幹線、在来線、リニア中央新幹線も含めて沿線の方々と共に私どもは発展していきたいと思っているし、沿線地域の方々の役に立ちたいと思っている。
社長として、そんな方針でやっていきたいと思っているが、特に静岡県は縁があり、今リニア中央新幹線の工事という大きなテーマで地域の方々といろいろな対話をしているところなので、真摯に向き合いながら様々なことに取り組んでいきたいという気持ちでいる。
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