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1977年の放送開始から約半世紀にわたって、子育てや生き方のヒントを届けてきた「テレビ寺子屋」が放送2500回を迎えました。記念すべき特別編の講師は、ノーベル賞の受賞者と五輪のメダリストです。
テレビ静岡で10月4日に放送されたテレビ寺子屋では、京都大学iPS細胞研究所名誉所長・教授の山中伸弥さんとスポーツ心理学者の田中ウルヴェ京さんが、「今」、そして「50年後の未来」について語りました。
失敗こそが次の一歩を“拓く”
山中伸弥 教授:
「心」とは何か、それは医学でもまだ答えの出ていない大きなテーマです。
ただ、市民ランナーとしてマラソンを続けてきた経験から言うと、心と体は切り離せないものだと思います。「35キロの壁」という言葉があるように、どれだけ練習を積んで体を鍛えても、レース当日の心の状態によって結果が変わることを何度も経験しています。

田中ウルヴェ京さん:
私は15歳の時に、水のかき過ぎで両尺骨の疲労骨折を経験しました。怪我という事実は変えられません。
でも、「手を痛めたなら足を鍛える機会だ」と考えたことで、新しい強みが生まれました。心と体は別々に鍛えるものではなくて、つながっているんですね。
山中伸弥 教授:
一見、失敗に見える出来事を生かすかどうかは自分次第です。それを決めるのは「心」だと思います。
後から振り返ると、失敗だと思っていたことが大発見につながることがあります。何十年も研究していて数回あるかどうかですが、その経験があるからこそ、失敗した時も「これはチャンスかもしれない」と思えるようになるんです。
シニア世代が伝えるべきは「心の在り方」
田中ウルヴェ京さん:
シニアの研究者が若い世代に伝えられることは何でしょうか?
山中伸弥 教授:
昔は実験のやり方を教えることが私たちの仕事でした。でも、今は技術の進歩があまりにも速くて、自分が経験したことのない実験もたくさんあります。ですから、技術そのものを教えることは以前ほどできなくなりました。
研究は失敗の連続です。上手くいかないことをどう受け止めるか、逆に順調な時にどう気を引き締めるか、長年研究してきた経験の中で学んだことや「心の在り方」を伝えていくことが私たちの役割になってきていると感じます。
田中ウルヴェ京さん:
スポーツの世界も同じです。技術は時代とともに変わりますが、困難との向き合い方や自分を信じて挑戦し続ける姿勢は変わりません。

山中伸弥 教授:
そうですね。失敗が発見につながることもありますし、順調すぎる時こそ注意が必要なこともあります。
そうした経験から得た知恵を伝えていくことが、今のシニア世代の責任なのではないかと思っています。
【山中伸弥 教授×田中ウルヴェ京さん 対談第1弾を読む】
未来を決めるのは技術ではなく「人間の心」
田中ウルヴェ京さん:
山中先生は「未来」についてどのように考えていらっしゃいますか?
山中伸弥 教授:
研究者として見ると、科学技術は間違いなく進歩しています。
しかし、その一方で人類は同じ失敗を繰り返しています。だから、技術の進歩だけで未来が明るくなるとは言えません。未来を決めるのは人間自身です。
田中ウルヴェ京さん:
スポーツ心理学を学んでいても感じます。技術や能力が高まるほど、それをどう使うかという「心の在り方」が重要になります。感謝や謙虚さが伴わなければ、その力は良い方向に使われません。
山中伸弥 教授:
その通りですね。人間はもっと学ばなければいけません。歴史から学び、過去の失敗を繰り返さないことが大切です。
田中ウルヴェ京さん:
人間の進化とは、心の進化でもあるのかもしれませんね。
山中伸弥 教授:
そうですね。技術だけでなく、人としてどう生きるかがますます問われる時代になるでしょう。
≪講師プロフィール≫
山中伸弥:人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製成功を発表。2012年、50歳でノーベル生理学・医学賞を受賞。
田中ウルヴェ京:1988年、ソウル五輪シンクロ・デュエットで銅メダルを獲得。アメリカの大学で心理学を学び、スポーツ心理学者として活躍。
※この記事は10月4日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
【山中伸弥 教授×田中ウルヴェ京さん 対談第2弾を読む】
