目次
温暖化によって氷河湖の決壊という深刻な危機に直面するヒマラヤの村々。決壊による洪水で2度にわたって流された村もあります。登山家の野口健さんは、ヒマラヤの気候変動が決して遠い話ではないことを訴えています。

テレビ静岡で5月3日に放送されたテレビ寺子屋では、登山家の野口健さんが、ヒマラヤの氷河湖決壊による被害の実態と、温暖化が引き起こす危機について語りました。
東京ドーム32個分に膨らんだ氷河湖の脅威
登山家・野口健さん:
ヒマラヤは今、温暖化によって氷河湖の決壊の脅威に直面しています。氷河湖とは、氷河の浸食作用や融解水によって作られた天然のダムのようなもので、ここから流れる川に沿って人々は村を作り、生活しています。

例えば、エベレストの麓にイムジャ湖という巨大な氷河湖があります。50~60年前は小さな池でしたが、今は東京ドーム32個分の大きさになっており、もしこれが決壊したら、エベレスト街道沿いに住むシェルパ族の村の大半が流されてしまうと言われています。
復活した村が2度も流された
2015年にネパールで地震があった時、僕はエベレストの入り口にいました。エベレスト街道にあるターメ村の被害が特に大きく、残った家はほぼないくらい破壊されていました。

「もう終わりだ」と言う村人を励まし、日本から通いながら村を一から立て直す手伝いをしました。それから10年近くが経ち、見事に復活したと思って喜んでいた2024年、村人から映像が届きました。そこに映っていたのは、復活したターメ村が、氷河湖の決壊による洪水で全部流されてしまった光景でした。
復興の手伝いを続け、村人の気持ちがちょっとだけ前向きになったその翌年、またひとつ小さな氷河湖が決壊して、村が部分的に流されてしまいました。地震に続き、2年連続で氷河湖の決壊による被害が出たことで、「もう村自体を引っ越すしかない」という話が出ました。

でも、大きな村ごと移住できる場所はそうそうあるものではありません。ターメ村の人たちは他の村に分散して生活することになるでしょう。そうすると、彼らは自分たちの故郷を失うことになるのです。
エベレストは地球の「頭」異変はやがて日本にも
知り合いのシェルパ族の男性がこんな話をしてくれました。
「ヒマラヤの氷河が溶けていて、僕らの村が流されるかもしれないと日本人に話しても、あまり反応がなかった。日本人はエベレストの氷河が溶けていくことを遠くの出来事だと思っているみたいだけれど、それは違う」と。
どう違うのかを僕が尋ねると、「エベレストは地球上で一番高いところ、つまり人間で言うと頭だ。頭に熱が出ると体全体がだるくなるだろ。エベレストで起きていることは、時間とともに地球全体にも広がる。だからいずれ日本にも来る」と彼は答えました。

近年、日本では毎年大きな豪雨災害が起きるようになりました。シェルパ族の彼が言っていたことが、いま日本でも本当に起きていると実感しています。
ヒマラヤで起きていることは決して遠くの話ではなく、いずれ日本でも起きるかもしれないことを胸に留めながら、これからもヒマラヤへの支援と、地震や水害対策に関する活動を続けていきたいと思います。

野口健:1973年アメリカ生まれ。1999年エベレスト登頂に成功し、7大陸最高峰世界最年少登頂記録を25歳で樹立。近年はヒマラヤや富士山の清掃活動に加え、被災地支援などの社会貢献活動を行っている。
※この記事は5月3日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
【もっと見る! テレビ寺子屋】
