目次
静岡・焼津市のソウルフードと聞くと、黒はんぺんやなまり節を思い浮かべるかもしれません。しかし、「みそまん」という隠れたソウルフードがあるのです。地元で愛され続ける港町の味をリサーチしました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへまずは焼津駅前で聞き込み調査
テレビ静岡・室伏真璃アナウンサーが向かったのはJR焼津駅。

JR焼津駅前で足湯を楽しんでいた地元の人に話を聞いてみました。
すると「『みそまん』はあっちこっちで売ってる」という答えが返ってきました。
「みそまん」は、地元の人にとっては当たり前のソウルフードのようです。

売っているお店の情報も教えてもらったので、行ってみることにしました。
大正時代から続く港町のおやつ
焼津市栄町にある「和菓子工房 吉野」を訪ねました。
焼津駅南口から駅前通りをまっすぐ、徒歩3分ほどの場所にあります。

吉野は茶席用の上生菓子が評判のお店です。
「茶席上生菓子(各・300円)」は、見た目も華やかで食べるのがもったいない美しさです。

そんな上品なお菓子に並んで、店頭で見つけたのが「みそまん」。ずらりと並んでいました。
吉野の三代目・山川仁志さんが、みそまんの歴史について教えてくれました。

和菓子工房 吉野 三代目・山川仁志さん:
みそまんじゅうは、港で働く人たちのおやつとして、大正時代ぐらいから糖分や塩分の補給で発達したみたいです
漁や港で働く人々のエネルギー源として生まれたみそまん。まさに焼津のソウルフードと呼ぶにふさわしい歴史がありました。

現在は、焼津市内にある約20軒の店でみそまんを製造しています。
かつては30軒ほどあったそうですが、今でも多くのお店が“みそまん”を守り続けています。
吉野・山川仁志さん:
実は「焼津みそまん学会」という会があって、私が会長を務めています。月末に「味噌まんじゅう」の詰め合わせを販売していて、1箱で7軒分のみそまんが入っています

毎月30日に、学会加盟店でみそまんの詰め合わせを予約販売しているそうです。
1箱で7軒分の大きさも形も違うみそまんじゅうを食べ比べできるという、うれしい詰め合わせです。

2025年度後期の朝ドラで話題となっている焼津ゆかりの小泉八雲がパッケージに使用されています。
焼津を盛り上げようと、地元の菓子店が一丸となって活動しているそうです。
定義がないからこその多様性
焼津で愛されている「みそまん」には、どんな定義があるのでしょうか。

吉野・山川仁志さん:
正式な定義は全くないんです。強いて言えば、焼津のお菓子屋さんが作っていて、一生懸命焼津を盛り上げているというのが定義かもしれません
定義がないからこそ、各店が独自の個性を発揮できるのが、焼津のみそまんの魅力でもあります。
焼津みそまん学会加盟店のみそまんを食べ比べ
色・形・食材は各店のオリジナル。焼津みそまん学会に加盟している近くのお店で、みそまんの食べ比べをしてみることにしました。
カツオだしのうま味 吉野「鰹だし味噌まんじゅう」
まずは吉野のみそまんを食べてみました。「鰹だし味噌まんじゅう(130円)」です。

テレビ静岡・室伏アナ:
まず、あんこの香りと甘みがふわっと広がります。皮が思っていた以上に塩気があって、あんこと合わせると甘じょっぱい感じになります
皮に塩味があるのが、焼津のみそまん特徴。さらに皮にうま味も感じます。
吉野 三代目・山川仁志さん:
うちはカツオのだしを使っています。カツオのだしはみそ汁でも分かるように、みそと相性がいいんです

この塩味のある皮が、あんこの甘みを引き立てています。
自家製のこしあんは北海道十勝産のあずきを使用。吉野では生のあずきを一晩水につけてから長時間煮ています。それから皮を取り除いて、砂糖と一緒に練って仕上げてます
あんこと皮のバランスが絶妙で、引き立て合っていました。

■店名 和菓子工房 吉野
■住所 静岡県焼津市栄町4-1-3
■営業時間 9:30~17:00
■定休 不定休
■問合せ 054-628-3926
船の形をイメージ 角屋「味噌まんじゅう」
次に神武通り商店街に店を構える「御菓子司 角屋(かどや)」に足を運びました。

看板商品は、港町焼津の銘菓「鰹サブレ(1枚・140円)」です。
カツオの形をしたサブレは、見た目もキュートで、パッケージもオシャレです。

そんな角屋のみそまんは、吉野のものとは全然違って、まず見た目が特徴的です。
角屋の「味噌まんじゅう(140円)」は、丸ではなく、細長い形をしています。

角屋 5代目・松村剛志さん:
細長いのは船の形をイメージしています。焼津らしさを出すために荒祭りのように仕上げています。味は、漁師さんが好むように少し濃いめに作っています
表面がゴツゴツとしているのは、焼津の荒々しさを表現していました。
テレビ静岡・室伏真璃アナウンサー:
あんこおいしい。生地がもっちもちですね

角屋・松村剛志さん:
ゆべしに近い感じに仕上げています。ふっくらというより、しっとりするような形がうちの特徴です
味も濃いめでしっかりしていてボリュームもあるため、満足度の高いみそまんでした。
■店名 御菓子司 角屋
■住所 静岡県焼津市本町5-7-8
■営業時間 10:00~18:30
■定休 水
■問合せ 054-628-3870
30年熟成みそを使用 ヤマカワ「みそまんじゅう」
続いては、昭和通り商店街にある「和洋菓子 ヤマカワ」。
味のあるレトロな看板が目印です。

店の一番人気は、ふわふわ食感がクセになる「どら焼き(240円)」です。
ふわふわの生地に、あんこがぎっしり詰まっています。

ちょうどみそまんを蒸しているタイミングだったので、特別に厨房を見せてもらいました。
蒸籠から湯気が立ち上り、ツヤツヤしたみそまんが並んでいます。

「みそまんじゅう(各130円)」は、ケシの実がついてる“こしあん”と、ついていない“粒あん”の2種類ありあます。
和洋菓子 ヤマカワ 四代目・山川剛広さん:
ケシの実がついてるのがこしあん、ついていないのが粒あんです。焼津では粒あんは珍しいと思うんですが、粒あんも欲しいというお客さんがいたので作ることにしました
今まで訪れた2軒はどちらもこしあんでしたが、ヤマカワでは粒あんも用意されていました。

さらに使用しているみそにも、こだわっています。
ヤマカワ・山川剛広さん:
地元の下村こうじ屋さんの30年熟成させたみそを使用して、とても風味が強いんです
一般のお客さんは手に入れることができない、幻の30年熟成みそを使用しているそうです。

蒸したてのみそまんは熱々、まずはこしあんから食べてみます。
テレビ静岡・室伏真璃アナウンサー:
できたてなので、あんこがとろとろで、生地はフワッフワです。みその香りが立っていて、ほんのり甘じょっぱく、みそのまろやかさを感じます

続いて粒あんも食べてみます。粒あんも絶品です。
ヤマカワ・山川剛広さん:
あずきを食べている感覚で、こしあんより少しパンチがあると思います

こしあんと粒あん、どちらもそれぞれの良さがありました。
■店名 和洋菓子 ヤマカワ
■住所 静岡県焼津市本町3-9-28
■営業時間 9:30~18:00
■定休 水
■問合せ 054-629-3933
各店の個性が光る焼津のみそまん
定義がないからこそ、各店の個性が光る焼津のみそまん。
カツオだしを効かせた皮とあんこのハーモニー、船の形を模した力強い味わい、30年熟成みそを使った香り高い逸品など、同じ“みそまん”でも店ごとに全く異なる形や味わいを楽しむことができます。

食べ比べをしながら、お気に入りのみそまんを見つけるのも楽しみ方の一つかもしれません。港町で働く人々を支えてきたソウルフードを、ぜひ一度ご賞味ください。
【もっと見る! 焼津市にある和スイーツが楽しめるお店】
[/hidefeed]
