鰯ケ島のフリップ
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【謎地名】「鰯ケ島」カツオの焼津なのにイワシの地名? 歴史を探ると「繁華なる土地なり」

静岡・焼津市の「鰯ケ島(いわしがしま)」という町名があります。カツオの水揚げで全国的に有名な焼津にありながら、なぜイワシの名前がついているのか。地名の由来を調査します。

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海辺に立つ大森アナ
テレビ静岡・大森万梨乃アナウンサー

鰯ケ島には何がある?

焼津漁港のそばにある「親水公園ふぃしゅーな」。目の前には海が広がり、広場や釣りも楽しめる、お出かけには最適なスポットです。

近くには静岡県水産・海洋技術研究所や深層水ミュージアムといった、海に関する施設も集中しています。

ふぃしゅーなで釣りをする人たち
市民の憩いの場所 親水公園ふぃしゅーな

焼津と言えばカツオのイメージですが、なぜかこの周辺の地名は「鰯ケ島(いわしがしま)」。なぜこの地名になったのでしょうか。

まず釣りをしている人たちに聞き込みです。

質問に答える釣りをしていた夫婦
鰯ケ島の由来を知る人はいない

多くの人は、この辺りが鰯ケ島であることは知っているものの、由来については首を横に振るばかり。

しかし、ある釣り人から昔の様子を聞くことができました。

釣り人:
(今も)イワシは釣れるよ。昔はもっと浜があって、漁船が入ってカツオとかの魚を水揚げしていた

釣りをする男性
昔は今とは様子が違っていたらしい

どうやらイワシは釣れるようですが、地名との関係はわかりませんでした。

調査を続けていると、「焼津漁港で見かける魚」という看板を発見。

クロダイ、メジナ、スズキ、アジなどが紹介されていますが、なぜかイワシが入っていません。あれ?

焼津漁港で見かける魚の種類をのせた看板
あれ? イワシがのっていない

シュールなカツオベル

さらにふぃしゅーなを歩いていると突然、鐘がつり下がった白いモニュメントが目に飛び込んできました。

遠くに見えるモニュメント「焼津ウェーブ&カツオベル」
あれは何だ?

近づいてみると、鐘は魚の頭をかたどっていて、なんだかシュールです。

プレートを見ると「恋人の聖地 記念モニュメント 焼津ウェーブ&カツオベル」と記されていました。

鐘がカツオの頭
なんだかシュールな鐘

鰯ケ島にある公園なのにモニュメントはカツオなのです。 ますます混乱してきます。

■スポット名 親水公園ふぃしゅーな
■住所 静岡県焼津市鰯ケ島136-24
■問合せ 054-628-3126(静岡県焼津漁港管理事務所)

イワシはここにもいない?

謎を解明するため、静岡の海に生息する魚を紹介する展示施設「うみしる(静岡県水産・海洋技術研究所展示室)」を訪ねました。

うみしるがあるのも、もちろん鰯ケ島です。

館内の大きな水槽にはタイがゆうゆうと泳ぎまわっていますが、イワシの姿は見当たりません。

うみしるの大水槽
タイが泳ぐ大水槽 しかしイワシはいない

県水産・海洋技術研究所の岡田裕史さんに、イワシはと尋ねると「こちらにはいないですね」と即答。

でも、うみしるがあるこの場所も鰯ケ島ですよね。イワシは展示しないんですか?

県水産・海洋技術研究所・岡田裕史さん:
イワシは非常に弱い魚です。常に動き回っているので、すぐにウロコが取れてどんどん弱ってしまい、ここで飼うのは難しいですね

県水産・海洋技術研究所・岡田裕史さん

確かにイワシは魚へんに「弱い」と書きますね。

県水産・海洋技術研究所・岡田裕史さん:
あらゆる魚のエサになるような魚ですから

イワシと漢字の鰯
「あらゆる魚のエサになる」不憫なイワシ

大きな水槽の中にイワシを入れたら、いろいろな魚に食べられたり突かれたりして、どんどん弱ってしまうそう。イワシ、不憫です。

でも、イワシは焼津漁港でとれるのです。

県水産・海洋技術研究所・岡田裕史さん:
イワシはよくこの岸壁の中にも回ってきていますので、いることはいますね

岡田さん、好きな魚は何ですか?

どこかイワシに対して淡々としている岡田さんですが、好きな魚を聞くと「イワシですね」と答えてくれました。言わせたみたいですみません!

■スポット名 静岡県水産・海洋技術研究所展示室「うみしる」
■住所 静岡県焼津市鰯ケ島136-24
■営業時間 9:00~16:30
■定休 年中無休 ※年末年始は休み 臨時休業あり
■問合せ 054-627-1815
■入場 無料 

歴史をひもとけば見えてくる真相

鰯ケ島の地名の謎を解くため、最後に向かったのは焼津市歴史民俗資料館。

ここで学芸員の栗田潤美さんから貴重な話を聞くことができました。

焼津市歴史民俗資料館 学芸員・栗田潤美さん

焼津市歴史民俗資料館・栗田潤美さん:
鰯ケ島という地名ですが、江戸時代初めの書物に名前が出てきます。3代将軍家光の頃ですね

鰯ケ島が「漁家商家 相交りて 繁華なる土地なり(漁師の家も商家もたくさんあり、とてもにぎわった土地である)」、と紹介されているそうです。

鰯ケ島がある浜通りは、焼津の水産業発祥の地と言われ、古くから漁業が盛んな地域でした。

漁家商家 相交りて 繁華なる土地なり

イワシは多く生息していて、この辺りの人々によく食べられていたようです。

さらに栗田さんは、江戸時代終わりに書かれた書物の中にある、鰯ケ島の地名に関する記述を紹介してくれました。

焼津市歴史民俗資料館・栗田潤美さん:
漁師が多い土地なので、イワシは干して田んぼの肥やしとしたのではないか。だからこの地を、イワシを干した場所=鰯ケ島と言ったのではないかという推測が書かれています

この辺りの人々は、江戸時代、半農半漁の生活をしていました。おそらく豊富なイワシは、食用としてだけでなく、田畑の肥料としても重要な役割を果たしていたのでしょう。

地名の由来が完全に解明されたわけではありません。

しかし身近な魚・イワシが、漁業と農業を結び、焼津を豊かにしていた当時の姿が、歴史の中から浮かび上がってきました。

■スポット名 焼津市歴史民俗資料館
■住所 静岡県焼津市三ケ名1550
■営業時間 9:00~17:00
■定休 月(祝日の場合は翌日)
■問合せ 054-629-6847
■入場 無料 

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