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浜松市中央区「茄子町」という珍しい地名を調査しました。夏の旬野菜「ナス」の名を冠したこの町に、ナスとの深い関わりを期待して訪れましたが、住宅や工場が立ち並ぶエリアでナス畑はありません。なぜ「茄子町」という名前になったのか調査しました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ茄子町は野菜のナスの名所か?
まずは読み方ですが、茄子町は「なすまち」でも「なすちょう」でもなく、「なすびちょう」です。

浜松駅から北に車で約12分。茄子町は船越公園の北側にある町です。町の真ん中を馬込川が流れています。
まずは川を挟んだ東側から調査を開始。ちなみに馬込川にかかる橋の名前は「茄子橋」でした。

にむらあつとリポーター:
パッと見は住宅街という感じです
出会った住民になぜ茄子町という地名なのか聞いてみました。
住民:
ちらっと聞いた話ですが、昔ナスがよくとれたらしいです
やはり! ナスの名産地だったのか。

ちなみに住民はナスをよく食べるのでしょうか。聞いてみると「あんまり好きじゃない」というお返事が。茄子町に住んでいるのに、ナスが好きではないとは意外な展開です。
また工場前で出会った人は、読み方が珍しいと話します。
茄子町の工場で働く人:
お客さんはほとんど読めないですよ。大体「なすまち」と読まれちゃいます

確かに茄子町を一発で「なすびちょう」と読み当てるのは、難しいかもしれません。ちなみにこの方も「なすは嫌いじゃないぐらいの感じ」と、ナスをよく食べるわけではないようです。
ナスを探して町をさまよう
地名の由来がナスの栽培と関係があるらしいとわかったところで、町内を散策することに。
ナスの畑は見つかるのか? 探してみましたが住宅や工場ばかりで、ナス畑は見当たりません。

さらに東側の船越バイパス方面に歩いていくと、「Landmark’s Coffee&Baker(ランドマークス コーヒー アンド ベイカー)」というハンバーガーショップがありました。
お店のスタッフに話を聞くと、野菜のバーガーにナスが使われているとのこと。

ハンバーガーからはみ出るほどのナスは存在感たっぷり。とてもおいしいバーガーではありますが、茄子町のナスではなく、京都のナスを使っていると言うではないですか。
残念ながら、ここでもナスは見つかりませんでした。

ただ話の中でヒントをもらいました。
ランドマークス コーヒー アンド ベイカー・久保田莉月さん:
浜松まつりの時期に茄子町の方たちが来てくださって、みなさん法被を着ていて、背中に大きく「茄」と書いてありました
法被の色もナス色だったそう。自治会の方を紹介してもらい、茄子町公民館へ向かいました。
茄子町のドンから聞く歴史
茄子町自治会の足立定弘会長が来てくれました。

茄子色の布地に大きな「茄」の文字とナスのイラストが描かれた法被を見せてくれました。
この法被かわいいですね。
茄子町自治会・足立定弘会長:
かわいいですね。この法被で初年度、浜松まつりに参加する時に笑いをとりましたね。「やられた!」っていうようなね

地名の由来については、やはり足立会長も「ナスがとれたから」と聞いていると話します。さらにもう一つ理由を教えてくれました。
茄子町自治会・足立定弘会長:
町の地形も似ているじゃないか、という話があります

茄子町のエリアを地図で見せてもらうと、ナスの形に似ているような、似ていないような。
西側がヘタで、東側がナスの下の方でしょうか。
足立会長も「ちょっと微妙ですよね。誰か横からかじったのかな」と苦笑い。
江戸時代から続く「茄子一色」
ということで、茄子町は今ではナス名産地というわけではありませんが、古くはナスの栽培が盛んでした。江戸時代にはすでに「茄子一色(なすびいっしき)」と呼ばれていたそうです。

茄子町自治会・足立定弘会長:
資料からは、とてもおいしいナスだったと言われています
また、開拓した人がナス好きだったなど諸説あるようです。
今では住宅地となりナス畑はありませんが、地名と自治会の方々の誇りとして、茄子町のナスは生き続けているのです。

ちなみに足立会長はナスが好きで、「煮びたしでもいいし、ぬか漬けでもいいし、ナスとトマトのチーズ焼きとか、いろいろありますよね」と話してくれました。ナスが好きな住民がいてくれて、良かった!
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