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「和製英語」について米国出身の北九州市立大学准教授アン・クレシーニさんは最初「変な英語」だと思っていました。しかし、日本人の想像力を表す魅力的な日本語だと気づいたのです。

テレビ静岡で2025年7月20日に放送されたテレビ寺子屋では、北九州市立大学准教授のアン・クレシーニさんが、「和製英語の世界を楽しもう」というテーマで講演しました。
「ガイジンです」しか言えなかった頃
1997年の来日当初、私は全く日本語が話せず毎日が孤独でした。でも、ホームステイ先からマンションへの引っ越しが決まった時のことです。一応台所洗剤を買って、「つまらないものですが」というセリフを練習して他の部屋の住人に挨拶に行きました。

ところが、玄関の奥から「誰ですか?」と聞かれて意味が分からず、考えたあげく「ガイジンです」と返しました。これしか知らなかったのです。笑い話のようですが、これが人生のターニングポイントになりました。
「この国に住むなら、日本語が話せなきゃいけない」と、次の日から一生懸命、勉強し始めました。日本語が話せるようになるにつれ、日々が楽しくなりました。言葉は人と人をつなぎ、さらにその国の文化ともつながっていると気付きました。今では日本と日本語が好きで好きでたまりません。

そして、12年前に「和製英語」に出会いました。「変な英語」で、正しい英語の学習を妨げるという良くないイメージを持っていたのですが、ある論文を読んで衝撃を受けました。
「和製英語は日本語だ」と書いてあったのです。
「和製英語」は日本語として尊重し、日本語として勉強するものなんだ! その日から「和製英語」は、日本人の想像力を表す、魅力あふれる日本語だと思うようになりました。
外来語と和製英語の違いとは?
日本には多くの「外来語」があります。
「外来語」は、中国以外の外国から入ってきた言語のことで、もとの言語と日本語の意味が同じで、日本人が発音しやすいように工夫されています。
例えば「アイスクリーム」は、アメリカへ行って「アイスクリーム、プリーズ」と言うと、ちゃんとアイスクリームが出てきます。

でも、「和製英語」は英語圏では通じないし、使われていません。
例えば「シャーペン」は和製英語で、アメリカで「シャーペン、プリーズ」と言っても、シャーペンはもらえません。

和製英語の魅力的な世界
一方で「和製英語」には、日本人が発音しやすい、聞き取りやすい、想像しやすい、という特徴があります。
例えば和製英語のひとつ「ランニング・マシーン」は、英語だと「treadmill(トレッドミル)」と言い、英語の分からない人には聞きとりにくく、発音も難しく、言葉から意味を想像することもできません。
けれど、「ランニング・マシーン」は聞き取りやすく、「走る」「機械」だと想像がつきます。「和製英語」は、「日本人が作った英語っぽい日本語」と考えるとわかりやすいです。

ある言葉が「外来語」か「和製英語」かの区別はむずかしく感じますが、好奇心を持って調べてみることで、どんどん語彙力も増えて、知識も広がります。言語だけに限らず、人間は好奇心があれば成長が止まらないと思います。
日本人は「英語を話せない」と言う人が多いですが、英語の土台ができているからこそ「和製英語」は存在しているんですよ。ぜひ好奇心を持って「和製英語」の世界を楽しんでください。

アン・クレシーニ:1974年米国生まれ。1997年来日、2003年から大学の教壇に立つ。専門は和製英語と外来語。日本文化と日本語をこよなく愛する。2023年、日本国籍を取得。三姉妹の母。
※この記事は2025年7月20日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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