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【カクニ茶藤】「有機抹茶を世界に」 茶業界の常識を覆し描いた“世界戦略”で海外の有名店とも取引

お茶どころ静岡はいま、物価高騰や後継者不足など試練の時を迎えています。そんな中、茶業界の異端児とも言われた男性は、早くから“日本茶の海外輸出”に重きを置き、世界戦略を打ち立てていました。静岡市葵区のカクニ茶藤・加藤重樹会長。その挑戦の軌跡をたどってみましょう。

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「海外に日本茶を」輸出の売上が約8割

カクニ茶藤の外観
創業1977年「カクニ茶藤」本社(静岡市葵区)

静岡市葵区のカクニ茶藤は、日本茶の製造、加工、販売などを行っています。

創業は1977年、老舗がひしめく静岡県の茶業界においては、比較的新しい会社です。

事業の中心は、日本茶の輸出。中でも“有機抹茶”を中心とした日本茶を輸出しています。

海外に輸出する有機抹茶

カクニ茶藤の会長である加藤重樹さんは、早くから有機抹茶に目を付けた数少ない人物でした。

カクニ茶藤・加藤重樹会長:
現在、全体の売り上げのうち輸出が80%ぐらいを占めています。3年前(2022年)と比べると、売り上げも倍ぐらいになっています。特にここ数年は、世界規模で空前の「抹茶ブーム」が起きています

カクニ茶藤 加藤重樹会長

カクニ茶藤も輸出する商品の約8割が抹茶で、残りの約2割が煎茶やほうじ茶、玄米茶など、急須で入れるリーフ茶です。

きっかけは東日本大震災

カクニ茶藤は、加藤会長の父である加藤栄二さんが創業しました。

秋田県のお茶の小売店の次男として生まれた栄二さんは、東京の証券会社に就職するも、お茶が忘れられなかったのか単身静岡へ。茶問屋に転職し、その後独立しました。

しかし栄二さんには“つて”や人脈がなく、決して品質のよくないお茶を頭を下げて買っていたそうです。そんな父の苦労を加藤会長は見て育ちました。

2007年、会社は加藤会長に引き継がれますが、事業の中心はいわゆる「同業者間取引」。主に、静岡県内の製茶業者同士で荒茶(お茶の加工の途中段階)を売買する取引をしていました。

抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ) 海外へ輸出するため徹底した品質管理を行う

2011年、東日本大震災で国内の流通が滞り、消費も落ち込みました。

このまま国内マーケットにこだわっていても経営が行き詰まってしまう。マーケットを無限大に開拓できる世界へ。

加藤会長が行ったのが、「輸出中心」の経営への転換でした。

付き合いは深く狭く 直接取引で輸出拡大

東日本大震災の後、15年ほど前から本格的に始めた輸出事業。これまでの取引実績は、19カ国にも及びます。

加藤さんは「直接深い付き合いを続けてきた結果」と言います。

カクニ茶藤 加藤重樹会長「共に時間をかけ成長してきた結果」

カクニ茶藤・加藤会長:
人間関係を構築して、共に時間をかけて成長してきた結果です。既存客はそんなに増えてはいないんです。でもおかげさまで抹茶ブームなどのトレンドも手伝って、既存のお客様が売り上げを伸ばしてくれ、カクニ茶藤の業績も上がってきました

実際、主な取引先は、アメリカとドイツで95%ほど。

このうちアメリカにおいては、大手コーヒーチェーン店を含め、主な取引先が3社あります。

誰もが名前を知っている国際的、もしくはアメリカ国内で大規模展開をしている企業で、取引も20年以上に及ぶといいます。

アメリカの顧客と直接交渉する加藤会長 (画像提供:カクニ茶藤)

カクニ茶藤・加藤会長:
2011年に輸出に転換する前から、ちょこちょこと取引はあったお客様です。商社の仲介は入れず、直接僕が出向いて取引を重ね、深く狭く、長いお付き合いになりました

「有機抹茶」で海外から愛される日本茶に

輸出事業を進めていくと同時に、力を入れ始めたのが「有機抹茶」の入手です。

現在も続く海外での「抹茶ブーム」に応えるためです。

カクニ茶藤・加藤会長:
10年ほど前にアメリカ発祥の大手アイスクリームブランドが、お茶のアイスクリームを開発しました。そして、同じくアメリカの大手コーヒーチェーン店が、抹茶を使ったラテやカプチーノを発売したことが、抹茶ブームに大きく影響しました

海外へ輸出される抹茶 高い品質が求められる

一方で、輸出商品は安全性や農薬基準などの規制が厳しく、高い品質が求められます。

さらに海外の人たちの健康に対する意識の高さや、茶文化や茶産地への関心の深さから「有機栽培」であることの必要性を加藤さんは強く感じました。

そこで、静岡県にとどまらず全国に視野を広げ、「有機」への情熱を持った生産者との取引を始めます。

カクニ茶藤の茶師・鈴木義央さん 輸出用抹茶の香り・色・うま味を細かく確認

有機栽培に取り組む生産者が多い九州にも足しげく通い、質の高い有機抹茶の確保に努めています。

無農薬という言葉すらなかった時代から、有機栽培に取り組んできた、長崎県の茶農家・寶持雅祥さんも、仕入れ元の一つです。

周囲からは「農薬を使わないでおいしいお茶ができるものか」と言われ続けてきました。

寶持さんは加藤さんとの出会いを振り返り、「いつかはこの栽培法に光が当たると、信念を曲げずにやってきた」と話します。

有機栽培で茶を栽培する 寶持雅祥さん(長崎県)
 【動画】ABe Pictures inc.のYouTubeページより

生産者と一蓮托生(いちれんたくしょう)

さらに加藤さんは、通常の慣行栽培を行っている生産者には「有機栽培への転換」を提案しました。

有機栽培に転換するためには、土づくりから変えていく必要があります。

かかる期間は3年。

生産者にとっては勇気のいる挑戦となりますが、その間もカクニ茶藤が茶葉を高値で買い取り、生産者の生活を支えました。

世界で認められる抹茶作りのために

カクニ茶藤・加藤会長:
お茶の木も生き物ですから、有機転換の当初は、茶葉は出ない・品質は悪い・数量は少ない、というトリプルパンチに見舞われます。それを僕らは高値で買って、生産者と一緒に頑張ります。“お互い様”です。3年目ぐらいになると木も健康な状態になって、つやのある良いお茶っ葉ができます

茶葉を確認する(左)加藤重樹会長

加藤会長の声かけで、有機転換を行っている静岡市の牧野力男さん。

「自分も年をとって、環境に負荷をかけるようなことを続けるのもどうなのか、という思いがずっとあった」と話します。

そんな時に、加藤会長から声をかけられ有機転換を決意しました。

それからは、いつお茶作りをやめようかと思っていた後ろ向きな気持ちが、前向きになったそうです。

有機転換を行った牧野力男さん(静岡市) 
【動画】カクニ茶藤のYouTubeページ

自社農園で有機栽培に挑戦

さらにカクニ茶藤では、2024年から自ら有機のお茶の栽培に挑戦しています。

2025年、初めて碾茶(てんちゃ:抹茶の原料)ができましたが、初めての年としてはいい出来だったということです。

自社で始めた有機栽培 

カクニ茶藤・加藤会長:
これから自社で栽培しない限り、お客様の要望に応えられないというのが一番大きい理由です。自分たちで汗水流して畑を耕し、土づくりから最終顧客に届くまでを一貫して行うことが、理想とするビジネスモデルです。まだまだ、道半ばですが

国籍・性別・経歴問わず 幅広い人材が活躍

現在、カクニ茶藤の従業員は70人ほど。3~4年前と比べると倍ほどに増えています。

他業種からの中途入社も多いそうです。

外国籍の社員の姿も

そのうち外国籍の従業員は2人。2025年の秋にはインドネシアから6人、インドから2人が加わります。採用にあたっても、加藤さんが直接インドやインドネシアまで出向き、面接をしました。

また、カクニ茶藤の管理職には「女性が多い」という特徴があります。

カクニ茶藤・加藤会長:
女性の管理職が多くなったのは“結果的に”そうなっただけで、男も女も、年齢も国籍も、宗教も肌の色も全く関係ありません。仕事ができる人に対しては、しっかり評価したいと思うし、限りなく自由に働いてほしいです

国籍、性別、経歴問わず採用している

「不易流行」が全て

30年以上にわたって茶業界に身を置き、世界に高品質の日本茶を届けている加藤さん。だからこそ、強い危機感も感じているそうです。

カクニ茶藤・加藤会長:
ここ最近、劇的に市場が変わり、お茶の仕入れ値が2~4倍高くなりました。このコストを最終的に払うのは消費者です。また、海外で抹茶が人気であることは喜ばしいのですが、相場が過熱気味になっています。やはり長く続けられる相場レベルでないと、消費者が置いてけぼりになってしまいますし、ますます茶離れが進んでしまうと思います

抹茶の伸びを確認する より伸びる方がきめが細かい

最後に加藤会長は、よりどころとしている言葉を教えてくれました。

それは「不易流行」。

リーフ茶が売れた時代から、ペットボトルの誕生、急須離れに、抹茶のトレンド。

お茶を取り巻く環境が変化する中、カクニ茶藤が大切にしているのが「不易流行」の精神です。

加藤会長が大切にしている「不易流行の精神」とは

不易流行とは、いつまでも変わらないもの「不易」と、新しいものを取り入れる「流行」、この2つを大切にする精神です。

カクニ茶藤・加藤重樹さん:
僕の中で「不易」は顧客と従業員の満足度に尽きます。「流行」というのは、その名の通りトレンド。今の抹茶ブームも何十年後には過去のことになるかもしれませんが、不易に関しては絶対に軸をずらさず、流行に関してはそれに従います

※カクニ茶藤YouTubeページより

畑づくりから開発、販売、輸出まで。分業が当たり前の茶業界にあって、カクニ茶藤は全ての工程に関わり、日本茶の魅力を世界に届けようとしています。

この先、環境や流行がどれだけ変わっても、そこに関わる人への誠意、茶業の発展への強い思いが、カクニ茶藤を未来へと後押ししていくことでしょう。

■社名 カクニ茶藤
■住所 静岡市葵区牧ケ谷2083(本社)
■問合せ 054-278-5551

【詳しく見る】カクニ茶藤 公式ホームページ

sponsored by カクニ茶藤

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