目次
今回は静岡・菊川市に遠征し、火剣山にチャレンジしました。足を延ばして火剣山の北側にある「夜泣き石」伝説ゆかりの地も訪問。充実した低山登山になりました。
火剣山ってどんな山?
火剣山(ひつるぎさん)は菊川市と島田市、掛川市の境にある、標高282.6mの山です。北のふもとには「夜泣き石」の伝説に関連した史跡や茶屋があり、登山とともにこれらのスポットをまわるコースが人気です。
【詳しくみる】YAMAPとは?(外部サイト)
登山コースはいくつかありますが、今回は山の南側中腹にある火剣山キャンプ場からスタート。火剣山を登って小夜の中山まで足を延ばしたら、Uターンして火剣山キャンプ場に戻る往復コースを選びました。
●今回の低山登山DATA
登った山:火剣山
標高:282.6m
タイム:約2時間50分
距離:約5.8km
動物に遭遇! 山頂には火除けの神様
火剣山キャンプ場からスタートです! キャンプ場の名物、全長70mのローラースライダーを左手に見ながら坂道を進みます。
と、木の間を動く影が! やや遠目だったので確信はありませんが、シルエット的にニホンカモシカでしょうか。
思わぬ出会いに感激しながら先に進みます。
キャンプ場から15分ほど進んだところで、舗装道路が終わりました。奥には「火剣坊参道」の看板が。
ここから登山道となるようです。さっそく登る前に、看板のマップでおおよその位置関係を確認します。
登って左に行くと展望台、右に行くと火剣坊大権現、まっすぐ進むと小夜の中山方面に出るようですね。まずは火剣坊大権現を目指します。
整備された参道を進みます。1段あたりの高低差が少なく、低山登山初心者にはうってつけです。
登山道入り口から約15分、鳥居がありました。鳥居をくぐった先には東屋がありました。見晴らしもよく、気持ちがいい空間です。
東屋でひと息つき、お目当ての火剣坊大権現へ。鳥居の脇にある階段を上ると火剣坊大権現の御堂がありました。
火剣坊大権現は、1200年以上前に行基が彫刻・開眼供養した像で、火除け・疫病退散のご利益があるといわれています。
火除け・疫病退散と、低山登山の安全を祈願しました。
ちなみに、火剣山の山頂は火剣坊大権現があるあたりになるようです。つまり、往路の上りはこれでほぼ終わり。スタートから35分ほどで傾斜もあまりきつくはなかったので、運動不足の筆者もまだまだ余裕があります。
来た道を下山してもよいのですが、せっかくなので、今回はこのまま北へ進んで掛川市側に下ります。
登山道を下りきると車道に出ました。茶畑に囲まれた車道を進むと山肌に「茶」の文字を発見!
掛川市と島田市にまたがる粟ヶ岳です。こちらもいつか、低山登山でご紹介できればと思っています。
小夜の中山「夜泣き石」伝説にちなんだ子育て飴
火剣山の山頂付近から約25分、火剣山の北側に出ました。火剣山北側は掛川市になり、一帯は「小夜の中山(さよのなかやま)」と呼ばれています。
小夜の中山は旧東海道の日坂宿と金谷宿の間にある峠です。平安時代から街道の難所として知られ、夜泣き石伝説で有名な場所でもあります。
《夜泣き石伝説 あらすじ》
その昔、1人の妊婦が小夜の中山を歩いていました。妊婦は、安産祈願のために久延寺(きゅうえんじ)に向かうところでした。しかし、途中で山賊に襲われてしまいます。
妊婦は命を落としますが、その魂は、お腹の切り口から生まれた赤ん坊の命を助けるためそばにあった石にのり移り、夜ごとに泣きました。この石はやがて「夜泣き石」と呼ばれるようになります。
赤ん坊はその後、久延寺のお坊さんに拾われ、お乳代わりに水飴を与えられて大切に育てられました。その後、立派に成長して母親の仇を討ったといわれています。
※夜泣き石伝説は諸説あります。
伝説に登場する久延寺を参拝しました。「夜泣き石」は現在、小夜の中山トンネル近くにまつられていますが、これとよく似た形の石が境内にあります。
久延寺の並びの扇屋にも立ち寄りました。こちらでは、夜泣き石伝説にちなんだ「子育て飴」を購入できます。
せっかくなので、その場で味わえる子育て飴を注文してみました。かめに入った飴を、お店の方が割り箸にとって渡してくれます。
昔ながらの製法でつくられた子育て飴は素朴な甘さ。疲れた体に染み渡ります。
その昔、このあたりはたくさんの飴屋があったそうです。峠越えの旅人たちも、この日の筆者と同じように、子育飴のやさしい甘さにいやされたに違いありません。
■店名 扇屋
■住所 静岡県掛川市佐夜鹿299
■営業時間 土・日・祝日のみ営業10:00~16:00
ローラースライダーにはしゃぐ
子育て飴でパワーチャージし、再び火剣山に登り返します。山頂付近にある、火剣坊大権現と展望台の分岐に到着しました。
行きに寄らなかった展望台に向かってみます。
ちなみに、こちらの展望台は「墓の峠展望台」というそうです。なぜこの名がついたのか気になりますね。
茶畑と遠州灘が一望でき、静岡らしい風景です。
雲がかかっていますが、富士山もなんとか見えています。
のどかな景色をたっぷり堪能できたところで下山です。低山登山をしていると茶畑のすぐそばを通る機会が多く、静岡が茶どころだということに改めて気づきます。
下ること約20分、行きに見たローラースライダーまで戻ってきました。もちろん童心に返ってすべりましたよ!
キャンプ場内はローラースライダー以外は有料エリアなので、利用者でなければ立ち入らないようにしましょう。
アラフィフの筆者はぜい肉がローラーの間に挟まるのではないかとヒヤヒヤしましたが、なんとか大丈夫でした。とても爽快なので、大人の方も臆せず遊ぶこともおすすめします。 子供優先で!
火剣山キャンプ場はキャンプサイトやバンガロー、フリーサイトは通年利用できます。火剣山キャンプ場までの道は地元車両優先でお願いします。
眺望も史跡も名物も 初心者にやさしい山
菊川市最高峰の火剣山は、低山登山初心者にやさしいほどよい傾斜で、眺望もよし。掛川市側には、夜泣き石伝説とゆかりが深い史跡や名物があります。
体力不足の筆者は断念しましたが、健脚自慢の方は久延寺からさらに40分ほど歩いたところにある、夜泣き石まで足を延ばしてもいいでしょう。
登山の前後に、火剣山キャンプ場に宿泊したり、バーベキューをしたりするのも楽しそうです。これからは絶好のお出かけシーズン。いろいろな遊び方ができる火剣山に出かけてみてはいかがでしょうか。
!CAUTION!
◎各所に案内看板がありますが、道迷いの可能性がまったくないわけではありません。特に分岐では、地図や登山アプリなどでルートを確認するのを忘れないようにしてください。
◎低山とはいえ、山は山です。適切な服装と装備で楽しんでください。
◎時期や天候によってコースの状況が変わっている可能性があります。インターネットなどでできるだけ最新の状況を確認するようにしてください。
◎静岡県全域でクマの目撃情報が相次いでいます。低山でも油断せず、クマ鈴、クマ撃退スプレーを携帯しましょう。
取材/小川結子
【もっと見る! 低山登山の記事】