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伊豆半島に早春の訪れを告げる河津桜まつりが2月1日に開幕した。2023年の来場者数は51万人で、コロナ禍以前は約80~90万人が訪れた町にとっての一大イベントだ。しかし、その裏でいま、“ある問題”に揺れている。
小さな町を支える一大イベント
伊豆半島の東側に位置する静岡県河津町。
人口6500人あまり(2023年12月1日時点)のこの小さな町にとって、県内外から多くの人が訪れる河津桜まつりは町内の観光産業を支える一大イベントだ。
期間中は夜桜のライトアップが行われるほか、約90の露店が立ち並び、2023年の来場者数は51万人。コロナ禍以前は毎年約80~90万人が訪れ、最盛期の2000年には125万人を記録した。
主催は河津町や観光協会、商工会などで組織する河津桜まつり実行委員会で、町が2019年に算出した町内への経済波及効果は27億2300万円、伊豆半島全体への経済波及効果は212億1200万円となっている。
“協力金”は課税対象?対象外?
この河津桜まつり実行委員会をめぐって、いま浮上しているのが消費税の“未納”疑惑だ。
河津町によれば、実行委員会ではこれまで露店の出店料や来場者の駐車料金を“協力金”という形で集め、2023年までの5年間における協力金収入は1億4490万円。2021年以外はいずれも1000万円を超えているものの、実行委員会は消費税を納めていない。
一方、国税庁のホームページを見てみると、消費税の課税対象は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」「特定仕入れ」「外国貨物の引き取り(輸入取引)」の3つで、「資産の譲渡等」とは事業として有償で行われる商品や製品などの販売、資産の貸し付け及びサービスの提供と記されている。
また、基準期間(個人事業者は前々年・法人は前々事業年度)における課税売上高が1000万円を超える事業者は「消費税の納税義務者(課税事業者)となる」ともある。
2023年夏頃には、内部監査の際に関係者から協力金収入について「課税対象になるのではないか?」との指摘があったというが、税務署への確認は行われなかった。
こうした中、岸重宏 町長は1月29日の定例記者会見で「実行委員会は公益的な運営で、収益目的ではない“協力金”として集めていたことから、消費税の課税対象となるものではないと認識していた」と釈明。一方で、指摘を受けながらも問題を棚上げした理由については「事務局対応で終わった。実行委員会の中で協議の場がなかったという認識」と言いよどんだ。
税務署の見解は?現時点で判断示されず
翌30日。実行委員会が税務署を訪れたものの、その場では今回の“協力金”が課税対象になるのか否か明確な判断は示されなかった。
これを受け、記者会見を開いた実行委員会の山田和子 会長は「(課税対象かどうかの)結論は出ていない」「継続して相談していく」と強調し、内部監査の際に指摘があったことに対しては「重く受け止めていなかった」と弁明。
その上で、「今までも課税対象という話が出てきていなかったので、そういう認識はなかった。実行委員会は収益性のものではなく公益性のもの。河津桜まつり自体は決して儲けるためにやっているわけではない。金儲けをした収益で税金逃れをしているという意味ではなく、我々は完全に収益ではなく公益性でやっている」と主張した。
一般論では駐車場収入は課税対象と説明
ただ、税務署からは“一般論”として「駐車場運営の売上には消費税が発生する」と説明されたという。
このため、“協力金”が課税対象と判断された際の対応について質問が及んだものの、山田会長は「支払う場合のことはまったく考えていない」と述べ、納税が必要になった場合の財源についても「まったく考えていない」と言い切った。
2月1日に開幕した河津桜まつりのパンフレットを見てみると、2023年までは表記されていた“駐車料”という文字が、“公益性”を強調するためか“運営協力費”という表現に修正されている。
河津町や実行委員会によれば、“協力金”は仮設トイレの設置やごみの処理費に充てられるなど使途は適切だったとされるが、だからといって仮に課税対象と判断された場合に支払いを免れられるわけではない。
山田会長はまつりが閉幕した3月に再度、税務署と協議したいとしている。
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