2023年も残りわずかとなる中、静岡県内の主なニュースをシリーズで振り返る。#1は川勝平太 知事の言動をめぐる県議会・最大会派との対立だ。繰り返される知事の不適切発言、そして県議会との溝を県民はどのように見ていたのか取材した。
静岡県議会・自民改革会議
増田享大 代表:
度重なる知事の不適切発言を踏まえ、知事の発言について一切信ずるに当たらないと判断し、ここに川勝平太 知事に対する不信任決議案を提出するに至りました
2023年7月。県議会では川勝知事の資質が問われた。きっかけは2021年10月に行われた選挙応援での“あの”発言だ。
川勝知事(2021年10月):
あちら(御殿場市)はコシヒカリしかない!だから飯だけ食ってそれで農業だと思っている
発言は御殿場市を揶揄するような発言だとして、県内外から批判を浴びた。この発言により県議会から辞職勧告を受けた川勝知事は、自らに科すペナルティとして給与とボーナスの返上を約束。
しかし、2023年7月に返上されていないことが発覚した。さらに、その理由について議会側に責任を“なすり付ける”かのような発言をしたため、最大会派・自民改革会議は県政史上実に50年ぶりとなる知事に対する不信任決議案を提出。本会議は翌未明まで続く異例の事態となり、決議案は否決こそされたものの、川勝知事にとっては可決ラインまであと1票というところまで迫られた。
川勝知事(2023年7月):
今回大変多くの方たちが不信任の決議に賛成されたということは辞職勧告決議に勝るとも劣らない大きな意見として受け止めている
その後、議員とのコミュニケーションを「十分に図っていく」と表明し、9月定例会に臨んだ川勝知事だったが、その矢先、今度は経済界との懇談の席で、東アジア文化都市事業に関連し「三島に継承センターを置きたい」「詰めの段階」などと発言したことが問題視された。
これはまだ議会に諮っていない案件だった上、さらに県議会総務委員会が調査した結果、実際には“詰めの段階”でもなかったことも判明。
総務委員会では中沢公彦 委員が「議会軽視も甚だしい発言であり、何も決まっていないことを軽々に発言したこと自体にも問題がある」と非難した。
果たして川勝知事の言う“議会とのコミュニケーション”とは何だったのか?
結局、知事肝いりの構想は立ち消えとなった。
川勝知事(2023年12月):
今回の三島市内における東アジア文化都市の継承拠点の件は一旦立ち止まることにし、白紙と致します
川勝知事の発言に伴って更に深まる議会との溝。この状況について、政治学を専門とする静岡大学の井柳美紀 教授に見解を聞いた。
静岡大学・井柳美紀 教授:
一言でいうならば川勝知事の影響力の低下。これが1年で際立ったのではないか
これは、静岡県が抱えるリニア中央新幹線に関する問題への姿勢も大きな原因だと指摘する。川勝知事は「建設促進」の立場を示しているものの、一貫性があるとは言えない発言が続いているからだ。
静岡大学・井柳美紀 教授:
大井川流域の自治体など(リニア問題に)一番関心が高い自治体との連携が十分でない中で、本来なら代弁者としての役割が期待されているところが、そこの立ち位置もちょっと揺らいでいるというところが2023年は非常に見られた。知事の発言の揺らぎが見られる中で、批判というものが以前よりしやすい環境の中で対立が激化してきているのではないか
知事の失言や政治姿勢に有権者である県民の反応はどうだろうか?
県民:
なんか最近暴走している。失言も多いし、リニアもどこまで芯の通った考え方をしてるのかわからない
県民:
いい意味でニュースになるなら誇れるが、出るたびにあまりいい噂を聞かないから、ちょっと「うーん」という感じ
県民:
川勝知事の方向性は支持しているが、ちょっとぶれすぎ。「何が言いたいの?」「本心はどこにあるの?」と
一方で、自民改革会議に対する苦言も聞かれた。
県民:
非常に低次元。もめる話ではない。県民のことを考えて質問してない。自分たちの党のことだけ考えて質問しているような感じがする
知事と県議会の関係性については井柳教授も問題視する。
静岡大学・井柳美紀 教授:
議会と知事との対立が、例えば政治と金の問題のような違法な行為であるとか、何か大きな政策課題に関わることというより、知事の政治姿勢・発言ということに終始しているため有権者にはわかりやすいとは言えなかった
今後、知事と議会にはどのようなことが求められているのか聞いた。
静岡大学・井柳美紀 教授:
物価高騰などいろいろ問題がある中で、県民生活を支える県政、そのための活発な議論というのを県議会、そして知事の両者に期待したい
川勝知事の任期は残り1年7カ月。県民の声を代弁できているのか、今後の言動に更に注目が寄せられている。
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