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通学路などがある市街地にイノシシが毎日のように出没し、猟師が捕獲を試みたがなかなか捕まらなかった。そこでネコの餌を入れて箱ワナをしかけたところ、60kgを超える大物がかかった。「飼い主のいないネコのためにまいた餌の味を覚え、連日 山から下りて来ていた」と猟師はみている。
大型イノシシが市街地に出没
2023年11月、静岡県下田市の市街地に大きなイノシシが現れ、猟師と警察が捕獲を試みた。車で追いかけるが、すばしっこく動き回り逃げられてしまった。
イノシシは4カ月ほど前の7月頃から市街地に毎晩のように現れ、住民は不安を感じている。
出没するのは、日中に大勢の市民や観光客が行き来する場所だ。
近くにはスーパーや小学校があって、人に被害が及ぶおそれもある。犬の散歩をしている人がイノシシに脅かされることもあり、猟師に依頼して捕獲作業が進められた。
住民は「何度も見ている」と不安を口にする
下田市民:
(イノシシを)よく見かけます。私は家の前でぶつかっているから。毎日のように家に来ていた
飼い主のいないネコにあげる餌が…
このところ山に餌がなくて人里に降りてくるクマやイノシシのニュースをよく聞くが、下田市の場合 市街地に出没する理由は、それだけではない。
駆除を依頼された猟師で普段は飲食店を経営する男性は「街中に置かれているネコの餌に誘引されて山から下りてくる」と推測する。
飼い主のいないネコのために路上などにまかれた餌。餌を探しに市街地に下りて来たイノシシがネコの餌の味を覚え、連日出没するようになったのだろうか。
下田市では地域ネコを保護する団体が餌やりをしているが、この団体はネコが餌を食べ終わるのを見届けて、残りは片付けている。
問題となっているのは深夜などにまかれ、そのまま放置されている餌だ。市内の十数カ所で数人がまいているとみられる。
捕獲作業を続ける男性が、イノシシがよく出没する、餌がまかれた場所を案内してくれた。下田市の図書館の前にまかれたり、住宅の敷地に無断でまかれたりするという。
静岡県には地域ネコの餌やりに関する条例などはなく、県の担当者は「地域でルールを作り、ルールに従ってほしい」と話す。
静岡県賀茂保健所・山本隆宏 主査:
無責任な餌やりは周辺の方も迷惑する場合がありますので、地域でのルール作りが必要になってくると思います
静岡県のホームページでも、飼い主のいないネコに餌をやる場合には「地域の近所づきあいを心がける」「餌をやっているネコに不妊去勢手術を施す」「餌や糞の掃除を行う」とアドバイスしている。
特に3点目については「近所の方と話し合い、餌やりの場所や時間を決め、残った餌は責任をもって掃除を行いましょう」と呼びかけている。
ネコ餌が入った箱ワナで大物捕獲
11月5日、イノシシが出没したという情報を受け猟師と警察官が出動した。目撃情報があった地区をパトロールする。
住宅地では猟銃が使えないため、使用するのは刺すと電流が流れる「電気モリ」だ。
ただ、イノシシを追い詰めるものの、なかなか捕まえることができない。
約2週間後の11月20日の深夜にも市街地に現れた。無線で連絡をとりあって出没場所に移動しイノシシを見つけた。
車で追いかけるがイノシシは街中を縦横無尽に走り回る。警察官も参加して狭い場所に追い込んだが、フェンスの隙間から逃げられた。
しかし、深夜に限って仕掛けていた箱ワナにイノシシがかかっていた。
箱ワナはイノシシが警戒して、これまではなかなか入らなかったそうだ。昆虫のサナギや果物を入れていたが興味を示さなかったため、試しにネコの餌を置いたところイノシシが入っていた。
体重60kg以上とみられる。
普段なかなか入らない箱ワナの一番奥まで入り、餌を全部食べてあったことに猟師たちは驚く。
イノシシは“餌やりの犠牲”
4カ月もの間、追い続けた猟師たちは「イノシシは地域ネコの餌やりの犠牲になった」という。
猟師・大村賢一郎さん(飲食店経営):
ネコの餌がなければ、この子もここへ出てこなかったかな。山で自然に育っていたのかな。この子は本当にネコ餌の犠牲になったんだな
猟師・志田昇さん(飲食店経営):
野生動物がこういう(ネコの餌の)味を知ってしまうと、元へ戻れなくなってしまう。そういうところがある
下田市では別のイノシシも出没しているとみられ、住民の不安は続く。
飼い主のいないネコへの餌やりは、地域でルールを作りルールを守って行うことが求められる。
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