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「母親になって後悔してる」共感する女性たちが感じる生きづらさ【テレビ寺子屋】

「母親になって後悔している」というタイトルの本が出版され、賛否両論が起こりました。育児ストレスなどを研究する恵泉女学園大学学長の大日向雅美さんが、母親となった女性が感じている「後悔」の正体を語りました。

テレビ静岡で12月24日に放送されたテレビ寺子屋

12月24日に放送されたテレビ寺子屋では、恵泉女学園大学の学長・大日向雅美さんが、これまで多くの女性から寄せられた母親としての生きづらさについて語りました。

「母親になって後悔してる」共感する女性たち

恵泉女学園大学学長・大日向雅美さん:
「母親になって後悔してる」という言葉を聞いたら、みなさんはどう受け止めるでしょうか。

これは、社会学者オルナ・ドーナトが2016年に書いた本のタイトルで、ヨーロッパを中心に大きな反響を巻き起こし、世界中で翻訳されました。日本でも2022年の春に翻訳されると、「子供に失礼だ」「そんなことを言うなら産まなければよかったではないか」「母親失格」など、瞬く間に大きな反応がありました。

一方で、「子育て真っ最中でわかる、共感する」という声もあったのです。本に登場する女性たちも、「共感できる」という女性たちも、決して子育てを否定しているわけではありません。

「子供はかわいい、愛しています」「子育てが大切だということは十分わかっています」というように、一生懸命子育てをしている女性たちが大半です。

それでも、「自分の人生も大切にしたい」「子育てで私の全てを諦めたくない」。そういう思いを込めた「後悔」なのです。

「自分が消えていく」

出産前は「優しいママになろう」と夢を描いていたはずなのに、いざ子育てがスタートすると「こんなはずじゃなかった」と感じる。何が違うのでしょうか?

赤ちゃんが何をしても泣き止まない。成長面の心配もある。それなのに夫の協力はなかなか得られない。ママ友の良さもあるけれど、ストレスもある。子育ての悩みはつきません。

でも、一番つらいのはこれです。「自分が消えていくみたい」。

「どこに行っても『○○ちゃんのママ』と呼ばれ、自分の名前を忘れてしまいそう」「夫は、子供が生まれる前と同じような生活をしているように見えるのに、自分はどんどん社会から取り残されていくみたい」「子育てが大事だと分かっているけれど、私は何をしたかった人なのだろう」。

いま、日本社会は政府も企業も「女性活躍」をうたっています。女性もいろいろ学ぶ機会があり、高学歴化もして、社会参加の意欲も高まっています。

しかし母となった女性たちの声を聞くと「子育ても、そして仕事もと頑張りたいけれど、それはあたかも罰ゲームを受けているみたい」。生きづらいということです。そして、これが「後悔」という言葉を生み出させている現実なのです。

後悔をバネに社会を変える

これまで半世紀近く、女性たちの声を聞いてきました。1970年代に、育児不安、育児ノイローゼという現象を社会に訴えたのも私が最初の一人でした。この頃はまだ「ワンオペ育児」などという言葉はなく、女性たちは悩みながらも後悔ということは口にしませんでした。

いま、「後悔」という言葉を言えるようになったということは、それだけ女性たちが自分の生き方をしっかりと見つめ、これからどう生きようかを考える力がついたのだと思います。母として人として社会人として豊かな生き方をするために、この後悔を「社会を変える」バネにしてほしいと思っています。

大日向雅美:1950年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。2016年、恵泉女学院大学学長に。専門は発達心理学。母親の育児ストレスや育児不安を研究。子育てひろばの施設長も務める。

※この記事は12月24日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。

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