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難読地名を探れば歴史が見える。今回は静岡市葵区の慈悲尾(しいのお)です。地名の由来は、飛鳥時代から1000年以上存在するお寺と、ある木が関わっていることがわかりました。
地元住民に聞き込み調査
今回訪れたのは安倍川沿い、山に囲まれた自然豊かなエリアの静岡市葵区慈悲尾(しいのお)です。
知らないと読むのが難しいこの地名の由来について、まずは地元の住民に聞いてみました。
地元住民:
ちょっと分かんない。字から考えると、ちょっと悲しいことがあったとか?
別の住民:
この地域の歴史のあるお寺といえば増善寺。そこに行けば由来が分かるかも
ということで、慈悲尾地区の奥にあるという増善寺(ぞうぜんじ)へ向かいます。
山奥のお寺なのでこぢんまりしているかと思えば、かなり立派な建物で歴史が感じられます。
お寺の山号はなんと慈悲山(じひざん)。 由来がわかりそうな予感です。
本堂へと向かい、住職の黒澤慈典さんに話を聞きました。
地名の由来とは
本堂の中も厳かな雰囲気が漂っています。増善寺の歴史は1000年以上、飛鳥時代から存在するお寺だそうです。
住職に、慈悲尾という地名の由来について聞いてみました。
慈悲山増善寺・黒澤慈典住職:
明確な答えはないんですが、ここがお寺がある場所なので「慈悲(じひ)」、ふもとが「尾」。「慈悲と尾」で慈悲尾になったのかなと
慈悲山増善寺というお寺の名前から、慈悲尾という地名に変わったのではないかと話す住職。
住職によると、約1300年前からこの地に慈悲寺(じひじ)という寺があり、それが今から500年前に今川氏親が同じ地に「慈悲山 増善寺」を開基。
古くから親しまれたこの「慈悲」という文字が、読み方を変えて、慈悲尾の地名につながっていったのではないかいうことでした。
さらに「増善寺への誘い」という本に、慈悲尾の由来が書いてあるそうです。
なんと由来には2つの説が!
住職から聞いた説を立証するべく、静岡市立中央図書館へ向かいました。
「慈悲尾 増善寺への誘い」は 2010年、増善寺500年の節目に発行された記念誌です。
本にはなんと、難読地名・慈悲尾の由来について2つの説が!
1つは、住職から聞いた話と同様、飛鳥時代からあったという慈悲寺(じひじ)に由来するものです。
そしてもう1つは、この地に椎(シイ)の木がたくさん生い茂っていたからだというものです。
文献を紐解いていくと、どうやら最初は「椎尾」とシイの木の漢字が使われていて、1700年代を境に現在の慈悲(じひ)の字があてられるようになったことが分かりました。
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難読地名に歴史あり。「慈悲尾」は歴史あるお寺、そして木と深く関わる地名でした。
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