目次
アフリカで野球を広める活動を行ってきた友成晋也さん。現地の人々の声から、野球には民主主義を広めるチカラや、規律の精神を伝えるチカラがあることに気付いたそうです。
12月3日にテレビ静岡で放送されたテレビ寺子屋では、野球指導者の友成晋也さんが、アフリカで気付いた野球のチカラについて語りました。
アフリカへ野球道具を持参
野球指導者・友成晋也さん:
私はJICAの職員として、ガーナ、タンザニア、南スーダンとアフリカ3カ国に通算8年半勤務し、その時に必ず野球道具を持って行きました。大学までずっと野球をやっていて、「キャッチボールくらい教えたいな」という思いがあったからです。
それからずっと「野球」を通じてアフリカと関わってきて、いろんな気づきがありました。野球には「チカラ」があるのです。
1996年、最初の任地ガーナに赴きました。縁あって仕事の傍らナショナルチームの監督を務めることになり、代表を率いてシドニーオリンピックを目指しました。チームは強くなったのですが、アフリカ予選をベスト4で終えました。
野球はチャンスが平等
それから間もなくのことです、私の人生を変える出来事がありました。ガーナ初の少年野球大会の始球式に招待されたのです。グラウンドには多くの子供たちの姿があり、野球が広まったことを感慨深く思いました。
目に留まった少年に、「楽しそうにやってるね」と声をかけると、「野球が大好き。僕、バッターボックスが好きなんだ」と答えるので、「君はバッティングが好きなんだね」と言うと、「バッティングは下手で、なかなか当たらないんだ。だけどバッターボックスに立つと味方は自分だけを応援してくれるし、敵のみんなも注目してくれる。ヒーローになれるチャンスがあるんだ」と返ってきました。
「バッターボックスはみんなに平等に回ってくる。野球は民主的だから好きなんだ」と、12歳くらいの少年が言ったのです。
ずっと野球をやってきましたが、当たり前すぎてそんな風に考えたこともありませんでした。アフリカ、特にこの時のガーナは貧困がまん延していて、みんなに平等にチャンスが回ってこない環境でした。
けれど野球は、金持ちだろうが貧乏だろうが平等にチャンスが回ってくる。ガーナの子供たちに新鮮な驚きと喜びを提供したのです。野球は「民主主義を広めるチカラ」がある! それが、私の最初の気づきでした。
野球をやると成績が上がる
「一人でも多くの子供たちをバッターボックスに立たせてあげたい。平等にチャンスが与えられる経験をさせてあげたい」と、「アフリカ野球友の会」という団体を作り、アフリカで野球を広める活動を続けていくことにしました。
指導者を育てて学校に派遣、野球道具は日本で集めて寄贈しました。本格的な野球場を建設し、全国大会を開催しようとさらなる野球の普及活動を始めました。
ある日、活動の成果を確認するためにガーナの学校を訪れました。そこで校長先生から、「野球をやっている子は、みんな成績が上がる」と言われたのです。
「規律正しくなって、時間も守って、何事にも一生懸命取り組んでいる」。アフリカでは決して当たり前ではないマナーや精神が、野球を通じて伝わっていることに非常に感銘を受けました。
野球を通じて心を育む
その後、私はタンザニアに赴任しました。全く野球がない国でどうやって広めていったらいいのか、悩んだ私は校長先生の言葉を思い出したのです。
タンザニアの学校へ出向き「成績を上げるスポーツがあるんです」とガーナの事例を伝えました。すると、「ぜひ野球部を作ってほしい」と言われ、タンザニア初の野球チームができました。
「『規律、尊重、正義』の心を育む野球」を意識しながら伝えていくと、見事に野球に取り組む子供たちの成績が上がっていったのです。先生たちは口々に、「彼らはクラスでリーダーシップを取ってくれる。規律正しくなった」と言ってくれました。
野球には、「人を育てるチカラ」があるのだという学びにつながりました。この経験から、目的は「野球を普及すること」から、「野球で人を育てること」に変わっていったのです。
友成晋也:慶応義塾大学卒業後、民間企業勤務を経て1992年JICAに入職。8年半アフリカで勤務。野球経験を生かし、各国の野球代表監督を歴任。2019年、アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事に。
※この記事は12月3日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
【もっと見る! テレビ寺子屋の記事】