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子供の頃の親との思い出で楽しかったことは何ですか。それは意外と何気ないことかもしれません。実は子供はすぐに満足することができ、たった10秒のふれ合いでも心に残る思い出を作ることができると専門家は指摘します。
テレビ静岡で3月12日に放送された「テレビ寺子屋」では、元保育士で現在は「こどもコンサルタント」として子育てについて講演活動をする原坂一郎さんが、子供とのふれ合い方について話しました。
子供が覚えているのは「笑顔になれる」小さなエピソード
こどもコンサルタント・原坂一郎さん:
みなさんは、子供の頃の親との思い出で楽しかったことは何ですか?ある講演会の事前アンケートで調べました。すると「夕焼けの中、お母さんと手をつないで歩いたこと」「お父さんが肩車をしてくれたこと」など、印象に残っているのはどれも何気ないエピソードばかりでした。
子供は親がお金をかけてくれたり、時間をかけてくれたりしたものを案外忘れてしまっています。その反面、小さな出来事を覚えているのです。それは自分が笑顔になれた記憶です。
10秒の愛された証
最近の子育て世代は、忙しくて子供とふれあう時間が少なくなったと言われます。でも大丈夫です。10秒レベルで構いません。子供が笑顔になるようなふれあいをたくさんしてあげてください。難しいことではないと思います。
例えばキッチンで、使い終わったラップの芯を望遠鏡に見立てて「ごっご遊び」をします。すると大きくなってからもラップの芯を見るたびにお母さんと遊んだことを思い出すでしょう。お父さんは子供が寝る前に抱っこしたり、おんぶしたりスキンシップを図ってみてください。例えそれが短い時間だったとしても、子供の心にしっかり残ります。
子供は飽きっぽいと思われがちですが、実は「満足する」のが早いのです。例えば動物園に行ったとき、ライオンを見たらすぐに次のエリアに移動してしまいませんか?展望台に登っても景色を見るのは10秒程度、その後はお土産売り場に夢中ですよね。子供にとって「時間」は、1分でも10秒でもそれほど変わりません。ただし10秒と0秒では大違いです。
子供はよく「見て見て」と言います。どんなに忙しい時でも「あとでね」と言わずにチラッと見て「本当だ、よくできたね」と声をかけてください。たった数秒のコミュニケーションでも、とても大切なことです。子供たちが些細なエピソードを忘れずに覚えているのは、愛情がたっぷり感じられたから。その10秒は自分が愛された証だからなのです。
今も昔も変わらない子供の心に残る思い出は
童謡「かあさんの歌」。戦時中に疎開していた作者が、母の優しさや故郷への思いを歌にしたものです。歌に出てくるお母さんは夜遅くまでかかって手袋を編んでくれます。現代のお母さんは手袋を編まないかもしれませんが、運動会の前日には夜遅くまでかかってもゼッケンを縫い付けてくれるでしょう。
「ふるさとの便り」は手紙から宅配便に変わり囲炉裏の匂いはしませんが、子供への愛情は今も昔も変わりません。子供の心に残る思い出は、愛情があふれた何気ない小さなかかわりの中にあるのです。
原坂一郎:こどもコンサルタント。神戸生まれ。23年間の保育士勤務を経て、2004年こどもコンサルタントとして独立。笑いと笑顔をキーワードに、子育てに関する講演を全国各地で展開。日本笑い学会理事。
※この記事はテレビ静岡で2023年3月12日に放送された「テレビ寺子屋」をもとに作成しています。