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「本当にひどい」衰弱したネコ17匹をケースに入れ住宅前に投棄 “多頭飼育崩壊”を防ぐために

2023年6月、静岡県沼津市の住宅の玄関前に子ネコを含むネコ17匹が捨てられた。保護されたネコは栄養失調や皮膚に炎症を起こしていて、十分な飼育環境が整わない“多頭飼育崩壊”が起きていた可能性がある。こうした状況を繰り返さなさいためにどうしたらいいのか、動物愛護団体などに聞いた。

◆「早く出さないと圧死」愛護団体も驚愕

ネコが入れられたキャリーケース

狭いキャリーケースに押し込まれ、ぐったりと衰弱しているネコ。

2023年6月7日夜、沼津市の住宅の玄関前にネコ17匹が、イヌ用のキャリーケースに入れられ捨てられていた。栄養失調でやせていたり、皮膚がただれたりしていた。

ネコを保護した動物愛護団体「キャットファースト三島」の代表は「信じられなかった。ネコが重なって、早く出してあげなければ圧死してしまうと思った」と振り返る。

「キャットファースト三島」代表

「キャットファースト三島」代表:
本当にひどい。みんな痩せていてノミがすごかった。(スタッフが)お母さんネコに差し出したごはんに乳飲み子が吸い付いていた。普段はあり得ないです。多頭飼育崩壊が起きているとそこでわかりました

ネコの健康状態などから劣悪な飼育環境だったと感じた代表は、目に涙を浮かべながら「切なかった」と振り返える。

◆“多頭飼育崩壊” 飼い主の特徴は?

ネコは衰弱した状態

飼育ができなくなるほど多くの動物を飼い、適切に管理できない状態に陥ることを「多頭飼育崩壊」と言う。

愛護団体によると、多頭飼育崩壊は、社会的弱者、収入が少ない人や精神を患っている人、母子家庭で生活保護を受けている人などに比較的多いそうだ。代表は「本当に切ないとしか言いようがない」という。

17匹のうち4匹が死亡

ネコ17匹のうち15匹は生まれて2週間から2カ月ほどの子ネコで、治療が行われたがこれまでに子ネコ4匹が死んだ。

沼津警察署は動物愛護法違反の疑いがあるとして捜査を進めていて、関係者によると市内に住む女性がネコを投棄したことを認めているという。

◆“多頭飼育崩壊”を防ぐために

阿部技監「多頭飼育崩壊は動物が不利益に」

多頭飼育崩壊が起きると、飼い主がきちんと管理できなくなり、動物が不利益を被る。

静岡県衛生課・阿部冬樹 技監:
飼い主が十分なえさをあげられない、水を与えられないことによって、衰弱あるいは感染症が蔓延してしまう。ケガをしたり病気になっても病院に連れて行ってもらえないために、満足な医療が受けられない

静岡県作成のチェック表

県衛生課は2021年度から多頭飼育にかかわる苦情の件数について統計をとり始めていて、2022年度は114件で前年度110件を上回っている。

多頭飼育崩壊を早い段階で発見し対策を考えようと、2022年チェック表を作成した。
周囲の人がこのチェック表に従って、異変に気づいたらすぐに最寄りの保健所に相談するよう協力を求めている。

保護されたネコ

親戚や大家、それに生活支援を受けている人の場合はサポートしている人など、「身近な人が兆候を察して保健所などに連絡してほしい」と呼びかける。

また、沼津市環境政策課は福祉を担当する部署と連携し、自宅訪問などでペットの状況を把握できるように準備を進めている。

◆新たな飼い主も 「命として大切に扱って」

ネコを保護するNPO法人「くすのき」(熱海市)

沼津市内で捨てられた17匹のネコのうち死亡の4匹を除いた13匹は、県東部地域の3団体に保護され、治療などが続けられている。

新たな飼い主が見つかったネコも

3団体のひとつ、無償で活動する熱海市のNPO法人「くすのき」はネコ6匹を受け入れた。

このうち1匹は新しい飼い主が見つかった。

那須代表「命に対する尊厳をふまえ法整備を」

NPO法人「くすのき」・那須みか代表:
(保護されたネコは保護から)1カ月以上になるが元気。きちんと飼ってくれる飼い主、家族が見つかることが一番。家族が決まるのはいつもうれしい

那須代表は「同じ悲劇を繰り返さないためには、動物愛護法にかわる法整備が欠かせない」と主張し「動物愛護法は動物をモノ扱いしているためすぐに撤廃して、命に対する尊厳をふまえた法整備が急務」と話す。

キャットファースト三島「保健所に相談を」

ネコを保護したキャットファースト三島の代表も、「命として大切に扱ってほしい」と強く訴える。

キャットファースト三島の代表:
保健所などにも相談して「こういう状態だ」と言ってくれれば、保健所も適正に指導してくれる、手助けをするボランティアを紹介してくれる。ぜひ頼ってほしい。これ以上無駄になくす命を増やさないでほしい

保護されたネコ

身勝手な理由で命を落とす動物を1匹でも無くすために。

私たちは責任をもって「命」と向き合っていく必要がある。

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