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【幻の夏を乗り越え#3】磐田東サッカー部 指揮官の言葉と綴る全国総体辞退から1年の軌跡

2023年の全国総体が、7月22日に北海道で開幕する。雪辱を胸に予選となる静岡県総体に挑んだ磐田東サッカー部は県ベスト8で敗退。全国大会への挑戦権を手にしながらピッチにすら立てなかったあの時から間もなく1年。指揮官の言葉とともに、磐田東のこの1年の軌跡に迫る。高校生活を終えても、それぞれのステージで続くサッカーの道。友へ、恩師へ、家族へ…支えてくれた人たちへの感謝とともに、3年生もついに巣立ちの時を迎えた。

◆サッカーに勝ちコロナに負けた

磐田東サッカー部のホームページ

「全国総体の出場辞退」。2022年7月24日、磐田東サッカー部が大会本部に申し出た。

前橋育英(群馬)との初戦を翌日に控えたチームで、1人の選手の新型コロナ陽性が判明し、大会規定に則り出場辞退となったのだ。

磐田東サッカー部・山田智章監督

「サッカーに勝ちコロナに負けました」行き場のない悔しさをこう表現したのは、山田智章(としあき)監督(58)だ。

◆大会運営に一石を投じたい

2023年1月3日。新型コロナで開催を見合わせてきた磐田東サッカー部・恒例の“初蹴り”が3年ぶりに開かれた。2005年に初めて県を制した世代などOBも集まり、2022年の躍進を祝福した。それでも、白い歯をみせながらサッカーをするのはこの日まで。山田監督は新チームとなった選手たちに釘をさすとともに、心構えを説いた。

初蹴りでのミーティング

山田監督:
静岡県でチャンピオンを取った事実は間違いないので、代が変わろうが何年経とうがそういう目で見られる。これはA(チーム)もBもCもDも関係ない。インターハイに出た磐田東高校のサッカー部だという目で見られている。(今年の選手は)プライドを持ってほしい。去年を超えること、それが一つ大きな目標になってくると思う。じゃあ、今のお前らで超えることが出来るの?希望はあるよ、夢はあるよ、それだけじゃ話にならない、やらなければ。どれだけ自分がサッカーに取り組むか、毎日毎日真剣勝負できるかどうかっていうのが積み重ねなんだよ、それが一番大事だよ。どうやって取り組むか、どうやって努力するかによって全然変わる、世界が変わる。自分たちが変わらなければ変わらない。去年以下だよ、間違いない

磐田東サッカー部の監督として、2022年の夏に味わった日本一悔しい経験を次の教え子たちへの指導に生かすこと。そして、高校サッカーに携わる1人の大人として、選手たちの人生でたった3年間しかない高校生活の目標にしてきた舞台が、もう二度と失われることが無いようにしていくことが、2023年、山田監督の新たな願いであり、信念だ。

山田監督:
もう今はウィズコロナの時代ですので、プレーヤーズファーストで考えれば、コロナ禍で彼らが思い切ってサッカーをできる環境やルールを大人が作ってあげなければいけない。基本的には(試合や大会を)やらせてあげる方向で最善の方法を考えてもらいたいし、今回の(全国総体辞退の)件が、今後に一石を投じるような一件であってほしいという願いはある

◆新チームの初陣は無観客も躍進

2023年1月14日。大雨の中迎えた新チームの初陣、新人戦静岡県大会。

新型コロナ第8波の真っただ中で開幕し、全ての会場で「無観客試合」の措置が取られた。それでも「保護者のみ観戦可能」だった2022年の静岡県総体に負けじと、磐田東はこの大会でも格上の強豪を次々と撃破し、13年ぶりのベスト4進出を果たす快進撃を演じてみせた。

準々決勝・藤枝明誠戦(提供:磐田東サッカー部)

3回戦の浜松開誠館戦では、虎の子の1点を守り切り、準々決勝の藤枝明誠戦では、2度のリードを許すも最後は3-2で逆転勝利。

格上・プリンスリーグ所属の相手にも引けを取らない堂々とした戦いぶりは、惜しくも延長の末敗れた準決勝のプレミアリーグ所属・静岡学園戦でも披露され、雪辱を誓う夏のインターハイへ、大きな期待を抱かせるものだった。

◆コロナがあっても特別な1年

後輩たちの躍進から約1カ月。2023年3月1日。磐田東高校3年生の卒業式が行われた。出席者は3年生と保護者、教職員のみに制限された。マスクの着用については生徒のみ個人の判断に任せるという形で行われたが、大半の生徒がマスクを着けて式に臨んでいたようだ。

卒業生たちが磐田東高校に入学したのは2020年4月。マスク着用が徹底された入学式を終えると、直後に2カ月間の休校、夏休みが短縮された。さらに2年生の2021年には修学旅行も中止になり、彼らの代の新チーム初陣、2022年1月の新人戦静岡県大会はベスト16で中止になった。そして2022年7月の全国総体辞退。学校生活も部活動も、3年間、新型コロナに翻弄された学年だった。

卒業式でのサッカー部の集合写真

苦楽を共にした仲間だからこそ見せる最高の笑顔で、サッカー部全体の集合写真を撮り終わると、一緒に個別写真を撮りたい3年生が、山田監督のもとに殺到した。

少し恥ずかしそうに笑みを浮かべながら、1人1人と写真に収まる183cmの大柄な指揮官。一見、強面だが、常に生徒のことを第一に考える教育者としての優しさに溢れているのが、選手たちにも伝わっているのだろう。

「お疲れさん」多くは語らない。最後に肩を叩きながら贈るこの言葉に、新たなステージに挑む教え子たちへのエールが込められていた。

谷野選手と山田監督

山田監督:
教師や部活動の顧問をやらせてもらってすごく幸せなことが、好きなサッカーにずっと携わっていられる、で、3年で全員入れ替わる。そういうサイクルが新鮮であり楽しみであって、毎日がすごく充実している。そう捉えれば、2022年の1年間はその中でもすごく幸せな1年だった。コロナのことがあったとしても特別な1年であったことは間違いない。まさか自分たちがコロナ(の当事者)になっちゃうとかは考えていなかったと思うけど、それも乗り越えたと言えると思うので、卒業していった子たちは本当に今後の人生にその経験が生かされるといいなと思う。何年かしてOBで集まってお酒を酌み交わした時に、(全国総体辞退の)話が出て、こんなことあったなくらいで済めばいいなと思う

<山田智章(やまだ・としあき)監督>
1964年12月17日生 旧清水市(現静岡市清水区)出身
選手歴:清水三中→清水商高→本田技研→PJMフューチャーズ ポジション:GK

磐田東で教員生活31年目(地歴公民科)・監督生活23年目(2023年現在)
2005年・2022年に監督として県総体優勝、全国総体出場(2022年は辞退)

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