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高齢になってから芸術を開花させ、創作に没頭する人たちを「超老芸術家」と呼ぶそうです。超老芸術のレジェンドたちを集めた展覧会が静岡市で初開催されました。あふれ出す情熱、怖いほどの吸引力。「超老芸術」の世界とは。
セーラー服か水着の「セーラちゃん」 実は社長
静岡市駿河区のグランシップで3月12日に開かれた「超老芸術」展覧会。アーツカウンシルしずおかの「おもしろい人に会いたい!!2023」のイベントの一つです。
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まずは「存在自体がアート」と言われる、セーラちゃんをご存じでしょうか。
実は出版会社の社長だというセーラちゃん。静岡・伊東市にある「まぼろし博覧会」や「怪しい少年少女博物館」の館長として、閉鎖した秘宝館やテーマパークから、どこか懐かしいのに“精神が崩壊しそうになる”怪しい展示物を集めています。
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カメラを向けると、次々にポーズを繰り出すセーラちゃん。年齢は非公開ですが、当然シニア世代です。
セーラちゃん:
スーツなんか着たらダメ。かっこいいより“かわいい”。セーラー服やビキニを着ていることで、お客さんの心のバリアがなくなるんです
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いわゆる女装愛好家ではなく、エンターテイメントだと話すセーラちゃん。
特注のセーラー服やビキニなど、その衣装は300着を超えるそうです。この独特の衣装で週末、博物館に来たお客さんを案内しています。セーラちゃん目当てに来る人も後を絶ちません。
レジェンドが大集合
セーラちゃんのほかにも、会場には静岡を代表するレジェンド超老芸術家の作品が集まっていました。
まちを侵略するのは巨大なタラバガニ。1949年生まれ、退職してから制作を本格的に始めたという富士市の稲田泰樹さんの作品です。
稲田さんは「クライシスシリーズ」と題して巨大生物が街を襲う絵を何枚も描いています。
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お次は石。笑う石、じろりと見てくる石。1954年生まれ、静岡市の小八重政弘さんの石の彫刻には不気味な引力があります。
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そしてテレビで取り上げられることも多い、焼津市の岩﨑祐司さんのダジャレ彫刻。1本の木から彫り出した、親しみやすいダジャレの数々に、作品のまわりには人が絶えませんでした。
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「超老芸術」を研究している人が静岡にいた
こうした作品を「超老芸術」と名付け、世に広めようとしている人が静岡にいました。
高齢になってから天啓を受けたかのように突如花開いたアートの力。高齢になっても消えるどころか、むしろより増してくる情熱。これを「超老芸術」と名付け、調査研究している珍しい人です。
「アーツカウンシルしずおか」のチーフプログラム・ディレクター櫛野展正さん(46)。
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アーツカウンシルしずおか・櫛野さん:
超老芸術の人たちに共通しているのは、独学で技を身につけているということです。そして他人の評価を気にせず、自分の価値観を持っていることです
櫛野さんはなぜこの分野に注目したのでしょうか。
もともと大学の教育学部で学び、特別支援学校の先生になろうかと考えていた櫛野さん。福祉施設で16年働き、芸術の才能がある障がい者の方々とも関わってきました。
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しかし、プロではないけれど高齢になってからもユニークな活動を続ける人たちが、ごく身近にたくさんいることに気づいていました。
「障がい者の作品は海外で展示会が開かれるほど注目されるのに、町のおじさんおばさんが評価されないのはおかしい」。
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なぜ高齢になって芸術が開花するのか
2021年、櫛野さんは「アーツカウンシルしずおか」が立ち上がったのを契機に、広島県から静岡市に家族で移り住み、本格的に超老芸術の調査研究を始めます。情報を集めては実際に会いに行き、全国各地を取材。まだ光があたっていない超老芸術家を発掘しています。
アーツカウンシルしずおか・櫛野さん:
中には全く絵を描いたことがなかったのに、高齢になってから突然を描き始めた人もいます。人は、なぜ突然才能が目覚めるのかを研究しているのですが、逃れられない宿命、差別などに出会ったときに自分を取り戻そうと筆をとる。閉じこもったりせず、作品を作ることが「回復」につながっているのではないかと思います
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激しすぎる情熱ゆえに、これまで周囲に理解されなかったり、変だと思われたりすることもあったかもしれない人々。その芸術の背景には、深い人間ストーリーがあることを見つけ出し、櫛野さんは光を当てようとしています。
テレしずWasabeeでは今後、櫛野さんが発掘した静岡県内の超老芸術をシリーズで紹介していきます。
【もっとよく見る】アーツカウンシルしずおかの超老芸術リスト(外部サイト)