静岡県・川勝平太 前知事
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川勝前知事は稀代の“ペテン師”だったのか? リニア反対派に寄せた書簡で露呈した「大推進論者」という虚構 持論のルート変更が実現せず「万死に値する」と猛批判 政争の具と化した“命の水”

静岡県の鈴木康友 知事は7月7日、県自然環境保全条例に基づく協定をJR東海と同月18日に締結すると明らかにした。この協定はリニア中央新幹線静岡工区着工の前提となるものだ。これにより、約9年にわたる膠着状態に終止符が打たれた。ただ、川勝平太 前知事はと言うと…。

突然の“ちゃぶ台返し”発言

「水問題に関して具体的な対応なく、静岡県民に誠意を示す姿勢が無いことに対して心から憤っている」

2017年10月10日。すべての始まりは川勝平太 知事(当時)による、この一言だった。

県内でリニア中央新幹線のトンネル工事を始めるにあたって必要なJR東海との協定締結が間近と見られていた中、会見で突如として怒りを爆発。

川勝知事が問題視したのはトンネル工事に伴う大井川の水資源への影響と南アルプスに生息する動植物への影響だ。

中でも大井川の水資源については“命の水”と称して流域住民の感情を煽り、2021年の県知事選では圧倒的な得票差で4選を決めた。

各地で進む工事 着工に至らぬ静岡工区

“夢の超高速鉄道”とも称されるリニア中央新幹線。

その歴史は古く東海道新幹線の開業を2年後に控えた1962年、東京・大阪間を1時間で結ぶことを目指し “次世代”の超高速鉄道としてリニアモーター推進浮上式鉄道の研究が始まった。今から60年以上前の話だ。10年後の1972年には初めて浮上走行に成功している。

現在は開業の第一段階となる東京・名古屋間の各工区で建設工事が進められているが、静岡工区だけが着工に至っていない。

このため、JR東海は当初目標としていた2027年の開業を断念せざるを得なくなった。

県とJRの議論膠着 国が関与も…

川勝知事の“ちゃぶ台返し”発言をきっかけに、JR東海はその後、トンネル掘削によって湧き出た水を全量戻すと表明。

これにより、静岡県は対話の場として地質構造・水資源部会専門部会と生物多様性部会専門部会の2つを2018年11月に立ち上げたが、JR東海との議論は思うように進まなかった。

このため、ついには国交省が“仲介”に乗り出し、専門的な見地からJR東海に指導や助言を行う有識者会議を設置。そして、水資源に関わる部分について2021年12月に、生物に関わる部分については2023年12月に報告書がまとめられた。

しかし、川勝知事は「これまで地質・水資源と生物多様性と2つの有識者会議があったが、そこで出された見解は県として尊重する。それを持ち帰って専門部会で、もう一度、JR東海とすり合わせをするという立て付けになっている」と主張。結果、その後も県とJR東海との対話は2026年3月まで継続された。

ただ、川勝知事は自身について常々“リニアの大推進論者”と称してきただけに、多くの人は川勝知事がリニア中央新幹線建設の意義を理解しつつ、流域住民の生活環境や自然を守るために奮闘していたと信じていたはずだ。

現に川勝知事は自身の不適切発言を機に辞職を表明した後の会見(2024年4月)でも「(リニア中央新幹線は)1970年代からやってきて、日本の技術の最先端というかエキスが入っている。それに懸けて人生を終えた、後輩に引き継いでいった人たちがいる。私はその思いも知っているし、推進派から外れたことはない」と強調していた。

書簡でJR東海を痛烈に非難

それだけに、鈴木康友 知事が静岡工区の着工容認を表明したあと、川勝前知事がリニア中央新幹線静岡工区のトンネル工事に反対する市民団体に寄せた書簡の内容には驚いた人も多いだろう。

「南アルプスを傷つける行為は、我が日本国民が伝統的に大切にしてきた『八百万の神々』『草木国土悉皆成仏』という、人だけではなく、自然も同じように重んじる古来の思想にも真っ向から反するものです」

「リニアが日本の公益に資するよう、まだまだ知恵を絞り、考え直すべきことがあります。工事は遅れに遅れ、総工費は、年を追うごとに、膨れ上がっています。『急がば廻れ』といいます。一度、立ちどまって、全体計画を見直すべきときです」

「トンネル工事は、南アルプスには、『百害あって一利』なしです」

「元々、無関係であった静岡県をリニア・ルートに強引に組み入れた民間企業JR東海の意思決定者は、南アルプスのことをよく知らず、とんでもない誤りを犯しました。一民間企業の己の事業優先の経営者の無知が生んだ莫大なツケを、現在、工事関係者も静岡県民も払わされています。そして、天下の至宝=南アルプスに測り知れない危害を及ぼそうとしています。それは万死に値するほど誤った決定でした」

「JR東海は、『さすがサムライ・ジャパン!』と世間から評されたければ、静岡県をルート上に入れた過ちをいさぎよく認める勇気を発揮されたい!『過ちは改むるに如かず』です」

書簡にはこのような文言が長々と綴られていた。

文中で、川勝前知事は「私はリニアに反対したことは一度もありません」と改めて“宣言”しているが、果たして本当に議論を無用に引き延ばす意思がなかったのかといえば疑問が残る。

一方、振り返ると川勝前知事は在任中、リニア中央新幹線について何度も「一旦立ち止まるべき」「計画を見直してはどうか」と言及していたし、時にルート変更の必要性についても唱えていた。 その意味では、今も昔もリニア中央新幹線の停車駅が設けられないにもかかわらず、ルートに静岡県が含まれたことに、ただただ不満を抱いていただけなのかもしれない。

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