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静岡・藤枝市ではひな祭りに“おひなさま”や“お内裏さま”ではなく、大きな男の子のためのひな人形を飾る風習があります。人形の名前は「志太天神(しだてんじん)」。その歴史と魅力に迫りました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ何階建て? 大型の「静岡御殿」
3月3日のひな祭り、藤枝市では「ちょっと大きな人形を飾る風習がある」という情報が寄せられました。一体どんな人形なのでしょうか?
まず向かったのは、旧東海道からすぐの場所に立つ、藤枝の由緒あるお寺「長楽寺」です。

本堂の中には、ひな人形が飾られていました。
しかしそこにあったのは、想像とは少し異なる姿。まるでお城のようにそびえ立つ、豪華絢爛(けんらん)な「静岡御殿」と呼ばれる大型のひな飾りでした。

お内裏さまにおひなさまが座っているのはもちろん、その上に御殿も建っていて、御殿の中にもまたお内裏さまおひなさま、三人官女などが座っています。
しかし、藤枝の風習として飾られる大きなひな人形はこれではないと言います。
志太天神ひな街道 実行委員会・増田あきらさん:
実はこれも大きいのですが、「志太天神(しだてんじん)」という男の子のひな人形でとても大きいものがあります

大きなヒゲの人形の正体は菅原道真公
次に旧東海道の藤枝宿にある「上伝馬ギャラリー」に案内してもらいました。
そこで目にしたのは、着物をまとい、堂々とした風格を持つ大きな人形。これが「志太天神」です。

テレビ静岡・室伏真璃アナウンサー:
大きいですね! 私が思っていたお内裏様とはちょっと違いますね
志太天神ひな街道 実行委員会・増田さん:
実は学問の神様の「菅原道真公」です
志太天神は、平安時代の学者・政治家として名をはせた菅原道真公をモデルにした、男の子のひな人形です。学問の神さまにあやかり、学問成就と健やかな成長を願って飾られてきました。

ひな人形らしい柔らかな雰囲気とは一線を画す、毅然(きぜん)とした顔立ちが印象的です。
菅原道真であることの証拠として、着物の胸元には「梅の家紋」がついています。太宰府天満宮でもおなじみの梅が、道真公との結びつきをはっきりと示しているのです。

この部屋には、ずらっとたくさんの志太天神が飾られています。
テレビ静岡・室伏アナウンサー:
菅原道真公にこんなに見つめられると、勉強を頑張らなきゃという気持ちになりますね
金色の衣をまとい、ヒゲをたくわえた威厳ある姿で鎮座する志太天神は、たくさん並んでいると圧倒されるような存在感があります。

江戸時代から続く志太天神の歴史
いつごろから飾るようになったのでしょうか。
志太天神の歴史はとても古く、もとをたどると江戸時代にまでさかのぼります。最初は土を練って作る「練り人形」でした。土練り人形からワラを使った人形になり、さらに着物をまとうようになったそうです。

現在の志太天神は着物を着て、ヒゲをたくわえた堂々たる姿になっています。
志太天神ひな街道 実行委員会・増田さん:
このヒゲが道真公の人形としては結構珍しいようで、志太天神の特徴です

人形が大きくなったのは、高度経済成長期。経済の発展が人形を立派に変えました。
志太天神ひな街道実行委員会・増田さん:
高度経済成長期と一緒に、右肩上がりで茶業も良くなりまして、それに合わせてどんどんどんどん道真公も大きくなってきました
志太天神は男の子が生まれると、お祝いに贈られました。飾る時期は、女の子のひな祭りと同じ3月3日(または4月3日)です。そして、飾り方にも独自のルールがあります。
志太天神ひな街道 実行委員会・増田さん:
志太天神をおひなさまお内裏さまよりも上に置くそうです

ひな壇のポジションはお内裏さまよりも上の段に、志太天神を飾るのがこの地域の飾り方です。
2026年4月5日まで、藤枝市では商店街や市役所でも志太天神をはじめとしたひな人形を展示する「志太天神ひな街道」を実施しています。
■イベント名 志太天神ひな街道
■場所 旧東海道藤枝宿エリア
■会期 2026年3月1日~2026年4月5日
■問合せ 054-643-5250
白ふじの里で志太天神の歴史を感じる
続いて向かったのは、岡部地区にある手作り体験工房「白ふじの里」。この時期、志太天神をたくさん飾ると聞いてやってきました。

中では野菜やフルーツ、手作り雑貨などが販売されています。その一室に、志太天神の展示コーナーが設けられていました。
白ふじの里 実行委員会・海野一博さん:
もう10年くらいは飾ってるんじゃないかな。自分の息子たちがもらった天神さんを納めないといけなくなって、みんなで持ってこようと言って飾り始めました。市内でも募集したら、集まること集まること!

現在、志太天神の寄贈はもう受け付けていませんが、最初の頃は100何体も集まったそうです。
正面だけで4段、さらに両脇にもずらっと志太天神を飾るという規模の大きな展示です。

本来、志太天神が乗る台は3段で構成されているそうです。
しかし、3段は飾りきれないため1番上の台だけを使用しているとのこと。それでも飾りきれないほどの数が集まったといいます。

年代によって変わる顔立ち
ずらりと並んだ志太天神をよく見ると、それぞれ顔立ちが異なっています。海野さんによると、その顔を見れば年代が分かるといいます。
白ふじの里実行委員会・海野さん:
昔の天神さんは、目が細くて。新しくなると顔が優しくなる

さらに、まだ展示していなかった特別な人形を見せてもらいました。それは約100年前のものです。
白ふじの里実行委員会・海野さん:
90歳くらいのおじいさんが、私がもらったものだと大切に持ってきてくれたんです
この人形が持つ歴史の重みが伝わってきますね。

白ふじの里実行委員会・海野さん:
私がここをやってる限りは天神さんを飾っていきたいと思っています。少しでもお客さんが来て、「すごいね」と言ってくれるとうれしいです
白ふじの里での志太天神飾り展は2026年4月3日まで開催。この季節は施設の裏手にアーモンドの花も咲くので、あわせて楽しむことができます。
藤枝に根付く「男の子のひな祭り」の文化。地域の人々が大切に守り続けてきた志太天神の展示は、この時期ならではの風景です。ぜひ足を運んで、その堂々たる姿を間近で感じてみてください。
■展示名 志太天神飾り展
■会場 静岡県藤枝市北方481-1 白ふじの里
■会期 2026年3月1日~2026年4月3日 9:00~17:00
■定休 火
■問合せ 054-638-4155
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