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東京にある体験型の「おもちゃ美術館」では、10代から80代までの「おもちゃ学芸員」が来館者を迎え、世代を超えた交流が生まれています。子供と高齢者は実は相性がいいと話すのは元館長の多田千尋さんです。おもちゃを通して大きな家族の輪が広がっています。

テレビ静岡で3月8日に放送されたテレビ寺子屋では、東京おもちゃ美術館の元館長・多田千尋さんが、多世代交流による子育ての重要性について語りました。
木のおもちゃで遊べる体験型ミュージアム
東京おもちゃ美術館 元館長・多田千尋さん:
おもちゃの美術館、そう聞くとガラスケース越しにブリキのおもちゃを鑑賞する施設のように思われがちですが、「おもちゃ美術館」は木のおもちゃを自由に触って遊べる、そして作れる、体験型のミュージアムです。

日本中の木のおもちゃが集まる館内は、木のいい香りであふれていて、赤ちゃんでもお年寄りでものんびりと楽しむことができます。
1980年代、家庭用ゲーム機が瞬く間に世界中に広まり、子供たちはひとりで遊ぶことが増えました。そして時を同じくして「高齢化社会」という言葉が聞かれ始めます。

当時、私は大学で「保育」と「高齢者福祉」の授業をしていましたが、恩師から「いつまでふたつの問題を別々に考えているんだ、これからは子供と高齢者をどう交流させるかが重要だ」と言われたことで、子供の問題と高齢者の問題をどうくっつけて解消するかという視点を持って「多世代交流」に取り組むようになりました。
子供と高齢者がつながると世界は平和に
子供と高齢者には面白い共通点があります。子供は「繰り返しを楽しむ天才」です。毎日同じことをしてワクワクドキドキできるからです。

一方で高齢者はというと、一度話したことを、あたかもホットな話題かのように翌日も話してくれる。要するに「繰り返してしまう天才」なんです。そんな高齢者に近づける人は誰かと言えば「繰り返しを楽しむ天才」ではないでしょうか。
ところが、この両者と密接に付き合っているのは現役世代のパパやママたちです。パパやママたちにとって、この「繰り返し」はときに頭を悩ませるものかもしれません。
だからこそ、高齢者と子供が直接つながることで世の中は平和になると私は思いました。そこで多世代交流の場として注目してほしいのが「おもちゃ美術館」なんです。

おもちゃ美術館には10代から80代までの「おもちゃ学芸員」がいて、平均年齢は62~64歳です。特に、地域のために役に立ちたいという意欲的なアクティブシニア、つまり「近所のお年寄り」がおもちゃの知識を勉強して働いています。
けん玉やコマなどの古き良き遊びだけではなく、人気のカードゲームやボードゲームまで、おもちゃ学芸員から教えてもらいながら交流を深めることができます。
多世代で育てる「家族づくり」の場

私は「多世代交流」はある種の「家族づくり」だと思っています。子供はパパとママだけではなくて、祖父母や地域の高齢者も含めた多世代で育てていくことが大切。
家庭の中だけで子供を育てようと思わず、おもちゃ美術館に行って近所の高齢者の方たちとの輪を広げて、大家族にしていく。おもちゃは、子供と大人、そして高齢者を近づける接着剤の役目をしてくれます。
「いろんなおもちゃで遊びたい」という意識で出かけるのはもちろんですが、「今日はどんな人と出会えるんだろうか」ということも楽しみに、多世代交流の場として、また家族づくりの場として、おもちゃ美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

多田千尋:東京都生まれ。NPO法人 芸術と遊び創造協会 理事長。2008年に東京おもちゃ美術館を開設し、長年館長を務めた。木のおもちゃを子育てに取り入れる「木育」を推進。全国の姉妹おもちゃ美術館の総合監修を務める。
※この記事は3月8日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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